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フローベール『感情教育』(5‐6)

2月17日(土)晴れたり曇ったり

これまでのあらすじ(1~4)
 1840年の秋、帰省のためセーヌ川をさかのぼる船に乗った18歳の青年、フレデリック・モローはアルヌーという画商と知り合い、その美しい夫人に恋心を抱く。フレデリックには、シャルル・デローリエという高校時代の友人がいて、地方の公証人事務所の書記をしているが、パリで一緒に生活しようと約束している。没落しかけた旧家の跡取りであるフレデリックと退役した軍人の子であるでローリエは、育ち方も性格も違うが、親友同士なのである。
 パリに出たフレデリックは地元の有力者であるダンブルーズや、知り合ったばかりのアルヌーを尋ねるが軽くあしらわれるだけである。もともと夢想家で芸術に関心があるので、法律の勉強に身が入らないが、出世主義者のマルチノンや、おとなしい貴族のシジーなどの友人ができる。
 1841年にパリで暴動が起きた際に、警官に拘束された青年デュサルディエを助けようとしたことから、フレデリックは同じ法学部の学生であるユソネと知り合う。演劇に関心のあるユソネとフレデリックは意気投合しただけでなく、ユソネの手引きで彼はアルヌーの経営する新聞社に出入りするようになる。そしてアルヌーの家で開かれた晩餐会に招かれたフレデリックはアルヌー夫人と再会し、恋心をさらに募らせる。実は彼が初めて晩さん会に招かれた日に、父親が管理していた財産を手に入れたデローリエがパリに出てきたのであった。
(5)
 フレデリックのアルヌー夫人への思いを心配したデローリエは、彼の気を紛らわせるべく友人たちを集める、マルチノン、シジーのほか、アルヌーのもとに出入りしている画家のペルラン、デローリエの友人で社会主義者のセネカル、さらにユソネがデュサルディエを連れてくる。
 なかなか勉強に集中できないフレデリックは、デローリエの応援にもかかわらず2度目の試験に落第する。一方、マルチノンは合格して輝かしい未来を約束されるようである。
 試験を再受験するという名目でパリにとどまったフレデリックは、アルヌー夫人を思って悶々としている。何とか気持ちを変えさせようとデローリエが社交的な踊り場に彼を連れ出す。シジー、ユソネ、デュサルディエが一緒である。ユソネが二次会の段取りをつけたが、フレデリックはアルヌーが来ている気配を察して彼を探しに出かける。愛人のヴァトナと一緒だったアルヌーはフレデリック一同を愛想よく迎える。ヴァトナとデュサルディエが知り合いだったことがわかる。シジーやユソネが相手を見つけて去って行った後、フレデリックとデローリエは相手の女性が見つけられないまま取り残される。

 「二人の友は歩いてかえった。東風が吹いていた。おたがいに口をきかなかった。デローリエは新聞社長の前で《はえなかった》ことを残念に思っているし、フレデリックは憂鬱に沈みきっていた。やっと口をひらいて、あんな踊り場は馬鹿馬鹿しいといった。
 「誰のせいだい? もしきみがあのアルヌーのそばへゆくのでおれたちと離れなかったら!」(123ページ)
 確かに、ユソネが《ダマエギ侯爵夫人》と話をまとめかけたときに、フレデリックがアルヌーのところに出かけてしまったために、話がご破算になってしまったのは事実である。しかし、恋愛に幻想を抱かないデローリエと、恋愛への幻想に浸りきっているフレデリックとのこの点での距離は、極めて大きいし、客観的に見ればデローリエが自分の価値観に基づいてフレデリックの世話をしようとするのは見当はずれのおせっかいも甚だしいのである。

 二人は、議論にならない議論を続けた後、突然、デローリエが言う。「今度、通りがかりに出会った女をぼくが《ものに》するかどうか、百フラン賭けるかい?」(124ページ)
 デローリエは、背の高い娘に話しかけ、とうとう、娘は彼の腕にすがることを承知する。デローリエと娘は歩道を行きつ戻りつして、デローリエとフレデリックの住まいに向かう。「デローリエはそばにいられては邪魔だ、きみも同じようにしたらよかろう、という意味を明らかにみせた。」(同上) 追い出される格好になったフレデリックは《こちらには、あんなのより百倍も貴重な、もっと気高く強い恋があるのだのに》何か怒りに似た気持ちに駆り立てられて、アルヌー夫人の家の前まで来てしまった。」(125ページ)
 家の前までやってきたところで、何事も起きるわけがなく、そのままフレデリックは夜のパリの街を当てもなくさまよい続ける。

 夜が明けて、家に帰ってみると、デローリエは女を返してしまっていた。午後になってシジーがやってきて、昨夜の首尾の仕上げをしたいという。デローリエは、フレデリックに自分の薬が効いたと思い込んで上機嫌になる。
 フレデリックはデローリエがクレマンスという娘と仲良く外出したりするのを見ると、侘しい気分になったりするが、その一方で自分がアルヌー邸に出かける前にいそいそとしているのをデローリエがやっかんでいるのに気付いていなかったのである。

 ある夕方、ユソネがフレデリックに連絡してきて、次の土曜日がアルヌー夫人の誕生日なので、祝宴に出席してほしいという。ところがフレデリックが自分の住まいに戻ると、ダンブルーズ夫妻から同じ日に晩餐に招待したいという招待状が届く。こういう正体は受けなければいけないと、それを見たデローリエが承諾の返事を書いてしまう。現実主義者の彼は、それが自分の成功に結び付くかどうかという観点でのみ社交的な付き合いを評価するのである。
 それでも、アルヌー夫人には誕生日のお祝いを送らなければならないと考えたフレデリックはちょうどいい贈り物として175フランする象牙彫りの小さな柄のついた、玉虫色の絹の日傘を見つける。手元不如意のフレデリックは、デローリエから借金をしてその日傘を買う。

 運のいい偶然が起きて、ダンブルーズ家で身内の不幸があり、招待が延期になる。そこでフレデリックはアルヌーの新聞社に出かけるが、アルヌーは彼を待つことなく、郊外の別荘に出かけていた。フレデリックが店のものと話していると、ヴァトナ嬢がやってきて、アルヌーと会えないのを残念がり、その結果、彼女が書いた手紙をフレデリックが彼のところに届けることになる。
 別荘についたフレデリックは、アルヌーに手紙を渡す。アルヌーはできるだけ早くパリに戻らなければならなくなりそうだという。アルヌー夫人の誕生日に招かれた客たちが集まってくる。それぞれが何か贈り物を用意してきたが、ユソネは何も持ってこないで済ました。フレデリックも自分の贈り物を渡した。祝宴は楽しく進んだが、アルヌーは9時半ごろに馬車でパリに戻ると言い出す。一同は、別荘の周囲を散歩しながら、議論に興じる。

 こうして人々が戸外に出て、それぞれ相手を見つけて話をするようになったということは、フレデリックにとってもアルヌー夫人と話をする、思いを打ち明ける好機となるわけである。さて、フレデリックはどのように自分の想いを伝えるのであろうか。
 
 
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