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フローベール『感情教育』(4-3)

12月24日(日)曇りのち晴れ

これまでのあらすじ
〔1〕 1840年9月、大学入学を前に裕福な伯父のもとを訪問した帰り、パリからセーヌ川を遡上する汽船に乗ったフレデリック・モローは船の乗客の1人である共和主義者の画商アルヌーと知り合い、その美しい夫人に恋心を抱く。オーブ県の没落しかけている名家である彼の実家では、彼の前途に期待を託している母親が彼の帰りを待っている。帰宅した彼は、高校時代の親友であるシャルル・デローリエが会いたがっていると聞き、夜、遅くなっていたが、会いに出かける。
〔2〕 夢想家で芸術に関心のあるモローと、退役した軍人の息子で高校では半給費生であり、努力家で社会問題に関心が深いデローリエとは育った環境も性向もまったく違っていたが、二人は親友であった。デローリエはフレデリックよりも早く卒業してパリの法科大学に入学していたが、いったん学業を中断して、法科大学の学資を得るために県庁所在地の公証人役場の書記の仕事をしていた。久しぶりに再会したデローリエは、フレデリックに大学ではしっかり勉強して卒業するように忠告する。「とにかく、肩書は役に立つんだ。」(31ページ)
〔3〕 パリに出たフレデリックは地元の有力者であるダンブルーズ氏や、一度会っただけのアルヌーを訪問するが、上首尾にはいかない。大学の講義に出るようになったが、一向に興味がわかない。それでも、豪農の息子で美男子の勉強家マルチノン、あまり知性的ではない貴族のドゥ・シジーとの友達付き合いで時間を潰す。無為な生活を後悔して講義に出るようになっても、欠席が響いて内容が少しもわからず、それでも何とか試験に合格して2年生になる。
〔4〕 1841年12月、パリで暴動が起き、フレデリックは警官ともみ合って取り押さえられたデュサルディエという青年を助けようとして、同じ法科大学の学生であるユソネと知り合う。ユソネは演劇界で成功することを夢見ている青年で、フレデリックと意気投合する。しかも、アルヌーと知り合いだという。何度かすっぽかされたが、ユソネに連れられて、フレデリックはアルヌーの発行する「工芸美術」の事務所に出かける。そこでアルヌーとの交友を深めることができたが、夫人に逢うことはできない。フレデリックはさらに、アルヌーのところで知り合った画家のペルランからアルヌーの女性関係と、夫人が貞淑であることを聞く。

 次第にフレデリックはアルヌーの事務所に顔を出す常連になっていった。事務所にはルジャンバールという、何をしているのかよく分からない男が常連の一人として出入りしていた。フレデリックはアルヌーが金満家で、美術愛好家で実行家であるだけでなく、商売にかけてはかなり悪辣なこともしていることを知るようになる。
 ある日、アルヌー夫人とすれ違いになり、彼女が本宅にいて、事務所には時々顔を出すだけであるということを知る。久しぶりに出会ったペルランから、アルヌーの悪口を聞いたフレデリックは、思わず彼を弁護する。しかし、実際にアルヌーに逢ってみると、その人格の下劣さに愛想が尽きる思いである。

 その週、次の木曜日にパリに着くというデローリエの手紙が届く。「そこで、彼の心はより確実でより高貴な愛情の方にまた強く引き戻されていった。」(71ページ) デローリエとの友情は、パリで出会った友人たちとの友情に勝るものだと思ったフレデリックは、彼を迎えるための準備をすすめる。
 「そして、木曜日の朝、彼がデローリエを出迎えに行こうとしていると、入り口に呼び鈴が鳴って、アルヌーがぬっと入ってきた。」(同上) 夕食に招待しようというのである。そこで、彼は服屋と帽子屋と靴屋に連絡をとる。そうこうしているうちに、デローリエが到着して、門番が肩にトランクを担いで入ってくる。デローリエは、フレデリックが彼を迎えに来なかったことを不思議がっている。彼は法律についての知識を駆使して、父親が自分のものにしていた母親の遺産の7,000ポンドをとりもどし、パリに出てきたのである。

 フレデリックは久しぶりに再会した旧友を歓待する。「門番が炉のそばの卓上に仔牛肉、ギャランチーヌ、伊勢えび、菓子果物、それにボルドーぶどう酒を2本並べた。こうした歓待ぶりにデローリエは感動した。」(72ページ) 〔ギャランチーヌgalantineというのは鶏肉や仔牛肉にレバーなどを詰め、ゼリーで固めた冷製料理だそうである。あるいは私も食べたことがあるのかもしれないが、そういうことは気にかけない性分なので、食べたという記憶がなくなっている。〕
 そこへ、帽子、続いて服、さらに靴が届く。こうなると、フレデリックがどこかを訪問しに出かける約束があることがわかってしまう。フレデリックは事情を説明し、急なことで仕方がないのだと言い訳する。そして1人でアルヌーのところに出かける。〔このあたりで、フレデリックとデローリエの気持ちが微妙にすれ違っているのがわかる。〕

 「シナ風に装飾した控えの間には、天井に色提灯をつり、部屋の隅々には竹がおいてある。フレデリックは虎の皮につまずいた。燭台にまだ灯はついていないが、奥のブドアールに2つの灯火が輝いていた。」(74ページ) ブドアールboudoirというのは辞書によると女性の私室ということは、アルヌー夫人の部屋である。
 フレデリックは落ち着かない気分だったのが、迎えに出てきたアルヌーが地下室にぶどう酒をとりに出かけて、彼らの子どもと二人きりにし、その子どもの相手をしているうちにだんだん気持ちが落ち着いてくる。そしてアルヌーが戻ってきて、さらに別の方角からアルヌー夫人が現われる。
 「アルヌーはフレデリックを紹介した。
 「ええ、あたくしよく覚えておりましてよ」夫人はそうこたえた。」(76ページ)

 他の客たちがやって来る。それぞれ有名な画家、詩人、美術批評家、作曲家…である。ユソネも顔を出している。最後にペルランがやって来る。フレデリックは集まってきた客たちにも、提供されたご馳走にも満足する。さらに客たちがそこで交わす会話にも大いに関心を引かれた。気分よく過ごしていると、突然ペルランが思想のない芸術は意味がないなどと言い出したりする。その間、彼はアルヌー夫人を見ていた。「耳に入ってくる言葉が彼の心の中でるつぼに溶けている金属のように彼の情熱に溶けて、恋を作った。」(78ページ)

 アルヌー夫人に再会したフレデリックは、彼女に対する恋慕の気持ちを募らせる。アルヌー夫人の方でもフレデリックのことはよく覚えていたようである。二人の関係が今後どうなっていくのかも気になるところではあるが、この席にはユソネもいるし、フレデリックの部屋にはパリに出てきたばかりのデローリエが彼の帰りを待ち受けている。そして、青年たちを主な登場人物としながら、七月王政下のフランスとパリはさらに大きな変動の時代を迎えようとしている…。
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