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フローベール『感情教育』(4-2)

12月3日(日)晴れ

これまでのあらすじ
 物語は1840年の9月に始まる。大学入学直前の18歳の青年フレデリック・モローは美しい人妻アルヌー夫人に出会い、恋心を抱く。モローにはデローリエという高校時代からの親友がいる。フレデリックよりも早く大学に入学したが、学費を稼ぐために今は郷里の公証人事務所で書記をしている。夢想家で芸術的な事柄に関心を寄せるフレデリックと現実主義者で社会的な関心の強いデローリエは育ってきた環境も性格も違うが、なぜか気が合う。
 パリで大学生活を始めたフレデリックは大学の講義にはなかなかなじめないが、何人かの新しい友人を得る。アルヌー夫人に会おうと思うが、なかなか近づくことができない。1841年の12月になり、パリでは反政府の暴動が起きる。フレデリックは警官隊と衝突して拘引された若い大男に同情し、彼と同じ法科大学の学生らしい若者と2人で、彼が警察に連行されていくあとをついていく。

4の続き
 逮捕された男はデュサルディエといい、店員であったが、フレデリックともう1人の学生(ユソネというのがその名前である)は彼が同じく法科大学の学生であるといい、その釈放を要求する。2人はデュサルディエを釈放させることはできなかったが、彼と気持ちを通わせることはできた(もっとも、デュサルディエの方はいくらか後ろめたい気持ちになっている)。

 デュサルディエと別れて、2人はリュクサンブール公園前のカフェ・タブーレに出かけて一緒に昼食をとる。ユソネが流行新聞の仕事をしていて、アルヌーの出している「工芸美術」の広告も作っているという。彼のしていることが、ひそかに恋い慕っているアルヌー夫人とつながるということを知って、「この連れの男がにわかに彼の生活で、途方もなく大きな地位に占めるようになった」(53ページ)ことをフレデリックは感じる。2人はお互いに気持ちがよく通じ合い、連絡を取り合うことを約束する。ユソネは公園のまんなかで合図をして、若い女と出会い、そしてフレデリックと別れて彼女と去っていく。

 その後、1週間たって、ある晩、フレデリックはユソネと遭ったので、ナポレオン河岸の自分の部屋で語り合った。ユソネは演劇に関心があり、ロマン派の文学の批判的であった。ロマン派の文学を愛するフレデリックにとってこの点は不満であったが、彼に頼んで何とかアルヌーの家に紹介してもらおうと思い、彼の約束を取り付ける。

 しかし、ユソネは約束を守らず、なかなか彼と会うことはできなかった。しかしある土曜日に、やっと姿を現し、あちこち立ち寄った後で、ようやくモンマルトル通りにあるアルヌーの店にたどり着いた。(フレデリックは、1840年の9月に船の中でアルヌーにあっており、その後、パリのアルヌーの店を何度か訪問しているが、彼と本格的に話をしてはいないのである。)
 アルヌーはフレデリックの名前を忘れていたが、ユソネの友人だということで歓迎する。「「工芸美術」はパリの中心地点にあるので、便利な集まり場所、敵同士が親しくひじをつき合わせられる一つの中立地帯だった。」(56ページ)ということで、美術界で名を知られた人々が集まり、ざっくばらんな態度で会話を交わしていた。
 そこにやってきたぺルランという画家に、アルヌーは自分の夫人が彼に用事があるといっていると告げ、それでフレデリックは忘れかけていたアルヌー夫人のことを思い出す。フレデリックはアルヌーの店をペルランと一緒に出て、時々彼の家を訪問してもいいという約束を取り付ける。

 ペルランは50歳になる画家で、美術理論の探究者であり、論争家であったが、なかなか自分の作品を完成させることができないままでいる。熱心な観劇家で、夜遅くまで芝居を見ているために朝が遅く、身の回りの世話する老女がいたが、独り者で、泰料理店で食事をしていた。「ごちゃごちゃに積み上げた雑学知識のおかげでその逆説めいた言葉も聞けば面白かった。平俗なもの、ブルジョアへの憎悪が無類の抒情味をおびた嘲罵となって口をついて出た。そして、巨匠たちには一途に抱いている宗教的な気持ちが彼自身もそういう人の際まで高揚させている感があった。」(62ページ)

 アルヌーのところで見かけたヴァトナという女性のことがフレデリックには気になっていた。彼女は最初地方の教員で、このごろは個人教授をしながら、小新聞に何か書いているとペルランは言う。ヴァトナはアルヌーの情人ではないかというフレデリックに対して、アルヌーには別の女がいる、それに対して、アルヌー夫人は貞淑な女性であるともペルランは言う。それを聞いて、フレデリックはアルヌー夫人への想いを募らせる。そして、アルヌーの主宰する新聞社に熱心に通うようになった。

 パリにおける暴動はまだ散発的なものであったようだが、七月王政への不満は次第に大きくなっている。そういう社会変動の中で、フレデリックは大学生活2年目を迎え、パリの水になじみはじめる。アルヌーの元に出入りするようになるが、まだアルヌー夫人との再会は果たしていない。4になって登場するユソネは今後の物語の展開で重要な役割を演じるようになる。また、モデルとも、女優とも、娼婦ともつかないような女性たちが出没しはじめるのも物語の展開が本格化したことの表れである。
 アルヌーのもとに集まっている芸術家たちの中で、カリカチュア画家のソンバズというのはドーミエがモデルだろうかとか、ペルランのモデルは誰だろうか…などと美術史のおさらいをしてみるのも一興かもしれない。
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