「俳句」その他

5月26日(日)曇り

 昨日、講談の「秋色桜」について書いたが、「俳句」をめぐる雑知識は落語や講談、その他大衆芸能を通じて得たものが少なくないことを書き忘れていた。宝井其角と大高源吾の話などはその最たるものである。「俳句」と書いたのは、俳句という言葉は正岡子規以後の文芸であって、それまでは俳諧が一般的であったと思うからである。連歌から俳諧を経て俳句に至る歴史は高校でざっと習ったと記憶するが、どうも学習が欠落している部分がある。自分で勉強すればよいのだと言えばそれまでであるが、連歌→俳諧→俳句が日本の文学、文化の重要なものであることを思うと、どうもしっくりこない。不可欠の知識というわけではないが、生涯にわたる教養の形成ということから考えると無視してよいものではない。学校での教育は、教養への覚醒を促すという点での意味を追求すべきであろう。

 現在の学校のカリキュラムで短歌や俳句がどのように位置づけられているのかよくは知らないが、教えるの方の素養が重要である。小学校のときに校長先生の担当される時間があって、そのときに「歌書よりも軍書に悲し吉野山」という句を習った。吉野山は多くの歌に歌われてきたが、その(特に南北朝時代の)悲しい歴史を最もよく語っているのは軍記物語である『太平記』であるという意味である。先生は作者の名をおっしゃらなかった(小学生にそんなことをいっても無駄だと思われたのであろう)が、ずいぶん後になって各務支考の句だと知った。それからこれは『平家物語』を子ども向けに書きなおした本を読んでいて、「平家なり太平記には月も見ず」という句に出逢った。『平家物語』には月見や花見の話が出てきて風流なところがあるが、『太平記』の方は殺伐としている(だから『平家物語』の方が文学として勝っている)ということである。これも後になって宝井其角の句であると知った。『平家物語』と『太平記』、特に『太平記』について芭蕉の門弟2人が対照的な評価をしているところが興味深い。どちらも大した句だとは思わないが、俳諧文学の性格を考えれば、支考の奇想の方に軍配を上げたいと思うがいかがであろうか。其角の周辺に秋色がいたのに対し、支考の流れには加賀の千代がいる。そのあたりも視野に入れると余計にこの対比は面白い。

 中学、高校を通じての国語の先生の1人が俳句をたしなむ方で、芭蕉の『野ざらし紀行』や『奥の細道』を読まされた。先日、TVで出演者が『奥の細道』は芭蕉の「俳句集」だなどとぼけたことを言っていたのを聞いて憤慨したのはこの先生の教育の結果である。また先生が実作者としての立場から、毎日新聞の俳句欄で飯田蛇笏が選ぶ句に見るべきものがあると言われたことを覚えている。その先生の授業で雑俳について発表したことがあって、あとでよかったと褒められた。内容のほとんどは岩波小事典と広辞苑で調べたはずだが、「雑俳」を初めとする落語に親しんでいたことが内容の理解を助けたと記憶する。そのとき1度だけのことになってしまったが、もう少し雑俳や川柳について勉強しておけばよかったという気もする。

 大学時代にドイツ語の読本の授業を担当していただいたのが歌人としても知られるドイツ文学者の高安国世先生であった。先生は授業中、留学中の想い出話をされたりしたが、短歌については一言もおっしゃられなかった。一言でも何かおっしゃっていただければいい思い出になったかもしれない。とはいうものの、私の周辺で高安先生の短歌の結社に参加している人がいたから、それなりの影響力はあったのである。

 大学の教養部では文学という授業があったが、理論的なもので創作の指導ではなかった。現在の大学ではだいぶ事情は違っていると思う。先生の個性や能力もあるが、学生の文学への興味、創作への意欲を伸ばすような授業があってもよい。プロを育てることも大事だが、他に仕事をもちながら自分なりに創作活動を楽しむような人間を育てると言うつもりでやっていくべきである。

 大学時代に詩を書いていたのだが、当時の京都ではシナリオライターの依田義賢の主宰する『骨』という同人雑誌が発行されていた。その頃は依田がどんなに凄い人であるかをしっかり認識できなかったので、作品を送ってみようなどと一度も考えなかった。後の後悔先立たずである。
 
 現在の私であるが、創作への意欲は依然としてあって、当ブログに時々詩を載せているのはそのためである。普段手帳を持ち歩いていろいろと書きこんでいるので、俳句の先生ですかと言われたことがある。間違われる職業としてはなぜか医師が多いが、画家というのも時々あった。俳句の先生というのは一度きりである。私は一応モダニストを自認しているので伝統的な詩形は遊びと心得ている。それに俳句とか短歌とかは趣味で嗜むのがよく、本業にするとなかなか厳しいものがあるのではないかと思う。
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