愛、アムール

5月21日(火)晴れ

 あまり個人的なことはこのブログに書かないことにしているのだが、しばらく投稿が不規則になるかもしれないような事件が起きたので、最低限のことを書いておく。本日の未明、二階で生活している老母が1階のトイレに行こうとして階段から落ちて救急車で搬送され、入院した。階段を下りる途中で気を失ったようであり、またあちこち内臓が弱っているとの医師の話である。それで自宅と病院を行ったり来たりの生活が続きそうである。

 そこで、オーストリアの映画監督ミヒャエル・ハネケがフランスで製作した『愛、アムール』が急に身近に思われ始めたこともあり、この映画を見て感じたことをとりあえず書いておこうと思った。特に不自由はなく2人暮らしを続けてきた音楽家の老夫婦の妻が音楽会から帰って病気で倒れる。体が不自由になったが、自宅での生活を希望し、夫が献身的に世話をし続けるが、妻の病状は悪化し、夫も次第に疲れてくる。それだけならば、話は分かりやすいが、老夫婦には娘がいて、これも初老の域に達している。娘は両親を引き取ってもよい口ぶりなのだが、親の方はあまりそれを好まない様子である。病気や療養生活の過ごし方をめぐり、親子の間で温度差がある。どちらが正しいというわけではない。特に言い争いがあるわけではないが、溝は埋まらない。

 夫=ジョルジュをジャン=ルイ・トランティニャン。妻=アンヌをエマニュエル・リヴァが演じている。『二十四時間の情事』(広島、わが愛)や『栄光への5000キロ』など日本映画への出演があるエマニュエル・リヴァは『華麗なるアリバイ』でも老患者を演じていた。どこまでが演技でどこまでが素顔なのか分からないようなところがある。年をとってからの体の衰えは、自分の意志ではどうにも食い止められないところがある。病気やけがをすればなおさらのことである。そのあたりの表現が真に迫っている。この好配役に加えて娘=エヴァをイザベル・ユペールが演じているのはわざわざ波風を立てるような配役だな、と思ったりした。単純に夫婦愛とか、介護の苦労とかを描くのではなくて、高齢者といっても世代対立があったり、金で片付かない問題がある状況が描かれている―と理解する方がよさそうである。娘のいうことを聞いておけば母親はもっと長生きをしたかもしれず、父親はもっと楽に暮らせたかもしれない。しかし、それを2人が望まなかったことも否定できない。自分たちの生活と価値をできるだけ守り続けるために、他人の介入を認めたくない(子どもといえども他人である)という考えもあるし、他人を信頼してその介入を認める、あるいは他人の手に自分たちの生活を委ねることも必要な場合もある。正解が求めにくい問題だけに、老いてからの人生とはなんだ―と、考えてしまう。
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