倉知淳『ほうかご探偵団』

7月4日(火)曇り

 倉知淳『ほうかご探偵団』(創元推理文庫)を読み終える。2004年、”大人にとびっきりの興奮を、子どもに未来の夢を〟といううたい文句のもとに一線級のミステリの書き手を集めて、講談社刊行されたシリーズ<ミステリーランド>の1冊の文庫化。

 僕(=藤原高時)は富士山の裾野にある小都市の、ごく普通の小学校の5年生。おっとりした気風の土地柄に加えて、のんびりした性格の生徒が多く、学校で”いじめ”の話は聞かない。特に彼の所属するクラスはわりに結束が固い。担任の山崎先生がおおっざっぱで、おまけに学級委員の神宮寺のリーダーシップがしょっちゅう空回りするから、その分、学究の構成員ひとりひとりがしっかりしなくちゃと思っているからかもしれない。

 ある日、その僕が登校すると、その神宮寺から話しかけられる。彼の机の上にもう使わなくなったたて笛が置かれている。その真ん中の細長い部分がどこかに行ってしまった状態にされている。神宮寺をはじめ、学級のみんなが騒ぎ立てるのは、この学級に立て続けに不思議な事件が起きているからである。先週の月曜日、みんなが描かされた富士山の絵を教室の後ろに貼り出してあったのが、その真ん中に貼られていた棟方君の図画がどこかに行ってしまっていた。そして水曜日、5年生が飼育当番になっているニワトリが姿を消した。「厳密に言えば、これは教室の中の事件とは言えないけど、クラスの女子が飼育係であり発見者でもあるので、クラスに関係していると考えても構わないだろう。」(23ページ) 飼育係は女子の成見沢めぐみと男子の三浦(ヤス)の2人なのだが、三浦がサッカーの練習に熱心で、仕事は成見沢一人が引き受けているのである。金曜日には神宮寺が「外国の戦争被災者の人たちに、毛布や医薬品を送ってあげたい」と募金用に作ったハリボテ招き猫が姿を消した。明けて月曜日には高時のリコーダーが部品を抜き取られていた。

 昼休み、どう考えても役に立ちそうもないものばかり、姿を消した(→盗まれた?)謎を考えていた高時に、同じクラスの龍之助がやって来る。彼には事件をめぐっての独自の推理があったのだが、それが当たっていないことを知ると、2人でこの事件を調べてみようと持ち掛けてくる。このおしゃべりで少し変わっている龍之介は、高時の一番の親友で、二人とも探偵小説が大好きだったことから仲良くなったのである。

 捜索を開始した2人は昼休みに、まず棟方(彼は絵の天才だということになっている)、次に神宮寺から話を聞く。さらに放課後に成見沢から話を聞こうとすると、彼女と仲のいい女子の学級委員である吉野明里がやってきて、話に加わる。さらに三浦(ヤス)が通りかかって、ニワトリの目撃情報を残してサッカーの練習に出かけていく。吉野は自分と成見沢の二人も仲間に入れてくれと頼んでくる。龍之助は承知して、仲間は4人になった。吉野にひそかに心を寄せる高時は胸をときめかせる。

 4人は、成見沢が第一発見者だという山崎先生のところに事情を聴きに出かける。先生の証言に嘘はなさそうで、事件の謎は深まる。教室に戻った4人は事件について話し合う。次々に、短期間のうちにものがなくなっている――ということは、同じ犯人の犯行と考える方が自然だという龍之介の推理に一同は同意する。さらに、4つの物を消して見せる理由、その動機をもつ人間が犯人であると、龍之介は推理する。あるいは、犯人が本当の目的は1つで、他の3つはカムフラージュかもしれない。4つの物の共通の特徴は何か。なかなか結論は出ない。

 捜索は4日にわたり、アッと驚く結末に至る。その結末を語る「解決編」が作品全体の3分の1近くの量をしめているのが異色である。事件はささやかなもの(途中で、町で起きた宝石泥棒事件が絡む??→シャーロック・ホームズの「青いガーネット」のような展開か??)であるが、4人ががやがやと話し合う中身は推理小説入門的な面白さをもつ。たとえば、この一連の事件が何かの暗号ではないかと考えて、その意味をさぐってみたりするが、解読できない…。

 静岡県出身だという作者自身の小学校時代の想いでが重なっているような学校生活の描き方に加え、登場人物の思考や行動が変に大人びているように思われ、現実感が今ひとつ感じられないのであるが、それぞれに個性的な登場人物の言動が魅力的である。その中で、語り手の高時が影の薄い存在に設定されているのも面白い。
 学校の裏で文具と駄菓子の店を出している吉田屋のおばば、保健室の先生だが、保健室にはいないでそこらを歩き回ってばかりいる仁美先生、同級生で1年生の妹の面倒をいろいろとみている豪史など多彩な人物がそれぞれ自分の見聞きしたことを話す。一見関係がないようでいて、それぞれに意味があったりする。結末は伏せておくが、果たして4つの事件が同一犯人の仕業かということは疑ってかかった方がいい。むしろ、その推理が強調され、すんなり受け入れられる方に謎が潜んでいる。
 終りの方で龍之介がいう「僕たちが連続消失事件を調べようとしたんだから、他にも同じようなことを考えるヤツがクラスにいても、おかしくはないだろう」(237ページ)というセリフ、また「探偵ごっこが出来て、楽しかったじゃないか」(245ページ)というセリフにこの作品の子どもたちに発信したメッセージが込められているように思われる。もちろん、大人にとっても読み応えのある読み物となっている。
 
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