吉本隆明『吉本隆明の下町の愉しみ』

5月16日(木)晴れ後曇り後雨

 5月14日の朝、早く目が覚めたのでその日のブログに書く文章を書いた。外出して帰宅が遅くなることを見越してそうしたのだが、帰宅したときにそれをころっと忘れていて手元のノートをひっくり返してさらに14日分(のつもり)の詩を掲載した。

 本日は、カルチャーラジオの「落語・講談に見る親孝行」を聴いて考えたことを書こうと思っていたのだが、番組を聴き逃した(あす再放送を聴くつもりである)。どうも注意力が落ちている。ロバート・ファン・ヒューリックの『北雪の釘』を昨日読み終えたので、この書物についての文章を書いてもよいのだが、まだ考えがまとまらない。それで、昨年9月に読んだ吉本さんの本について取り上げることにする。

 『吉本隆明の下町の愉しみ』は、2003年に青春出版社から『日々を味わう贅沢』として刊行された書物の題名を改め、同社から新たに新書版として出版したものである。1990年代から2000年代の初めにかけて執筆された16編のエッセーと3編の掌編小説を集めている。著者の周辺の事物に対する観察眼と抒情的な文章が詩人としての吉本さんの側面をうかがわせ、70代に入ってまだその感性が衰えていないことが見て取れる。

 例えば、「四季の愉しみ」という文章では「季節は魔法のように移る」(16ページ)という締めくくりの文が強い印象を残し「上野のかたつむり」という文章では、大原富枝の遺著『牧野富太郎』を読んで、谷中にある牧野の墓を訪れ、その近くにたくさんいたカタツムリが、最近姿を消してしまったのはなぜか―と考えたりする。「銭湯の百話」では先頭についての想い出をたどりながら、「孤独」について考えている。ここでは「容易く世界は一つなどと言ってもらいたくないし、容易く民族の伝統などと言ってもらいたくない」(97ページ)という言葉が胸に突き刺さる。吉本さんが敬愛してやまなかった宮沢賢治について触れた「イーハトーヴの冬景色」という文章では、賢治の童話のもつ懐かしさや温もりと、どこか冷たい孤独感について指摘しているのが印象に残る。

 一方で下町育ちの生活への郷愁とこだわりを持ちながら、それらの思い出をつづる中で孤独を感じているのは育った環境からいつの間にか離れてしまっている吉本さんの偽りのない気持ちであろう。猫(ねこじゃらしで猫と遊ぶというエピソードに驚かされる)をはじめ、いろいろな小動物への愛情や、ホームレスに対してそっとしてあげたいという気持など、吉本さんが周辺の人物や事柄に抱くさまざまなつながりや距離感の表明のすべてに共感できるというわけではないが、愛着のもてるエッセー集である。
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