風の武士

5月15日(水)晴れ、暑し

 昨日(5月14日)、シネマヴェーラ渋谷で「復活!! 久保菜穂子」特集上映の中から、『絶海の裸女』、『風の武士』の2本立てを見た。久保菜穂子さんは1952年に新東宝に1期スター候補として入社し、その後新東宝の経営難から東映に入社、1963年にはフリーとなり、大映、松竹などの多くの作品に出演した。その中には中川信夫、石井輝男、深作欣二、加藤泰、鈴木清順、池広一夫らの監督の注目すべき作品が含まれている。また、そうでなくても日本映画史上いろいろな意味で記憶しておく必要がある存在だと思われるので、この企画に拍手を送っておきたい。

 『絶海の裸女』は1958年の新東宝作品。監督は野村浩将。川内康範が脚本に名を連ねている。題名で観客を呼ぼうということらしい。この作品の製作者でもある大蔵貢は映画の題名に「と」をつけて、観客が二本立てだと思うように錯覚させたという話があるが、『シネマヴェーラ渋谷通信』119号に述べられているように「久保は“裸女”どころか水着姿すら披露しない」。孤島に漂流して、野性むき出しの生活を送る場面で、そのスタイルの良さが強調されているだけに脱ぎっぷりが今ひとつなのが残念ではある。物語は孤島で仲間に裏切られた男の復讐譚として展開するが、どうも安易な作りである。

 さて、加藤泰監督の『風の武士』。1964年の東映作品。司馬遼太郎の原作を野上龍雄が脚色。御家人の次男坊、名張信蔵はその怠惰な生活を兄嫁の律にとがめられながら、一膳飯屋の女将であるお勢以と通っている道場の娘であるちのの二股をかけるもて男ぶりを楽しんでいる。しかし、ある日その目の前で流血の事件に出逢い、道場主からは秘密を見た以上自分たちの味方となれと言われ、それが不調に終わると、師範代の高力伝次郎と対決する羽目に陥る。その場を助けた謎の男、猫。

 老中水野和泉守から呼び出しを受けた信蔵は熊野の山奥に<やすらぎ>の里という秘境があり、外の世界から独立した生活をしてきたところ、紀州藩がその併合を図っているので、その野望を阻止してほしいという幕府への要請があったと聞かされる。信蔵は猫と協力してその要請にこたえることを命じられる。どうやら道場主、高力、それにちのは<やすらぎ>の人間らしい。道場主は殺され(誰が殺したかは、観客にはわかるが、ちのと信蔵には分からないことになっている)、ちのと高力は東海道を西へと向かい、その行方を信蔵も追う。途中、猫の命令を受けたというお弓という女が信蔵に付きまとう。

 原作は伝奇的な要素が強いというが、映画化では信蔵(大川橋蔵)と女たちのさまざまなやり取り、特に後半になってちの(桜町弘子)とのロマンスが強調されている。ちの、お勢以(久保)、お弓(中原早苗)、それに兄嫁の律(野際陽子)と登場する女性たちの個性が、四季の風物とともに美しく描き出されているところに加藤泰らしい映画作りの特色がみられる。

 久保さんの再評価というのは、賞賛すべき試みであると思うが、他にも再評価を試みるべき女優さんは少なくないはずである。例えば、桜町弘子さんの出演作については、昨年ラピュタ阿佐ヶ谷で特集上映をしていたことを思い出す。桜町さんというと東映の時代劇での出演作を見ておらず、その後の山下耕作の『博奕打ち・総長賭博』の鶴田浩二の妻の役だけがいやに印象に残ってしまい、かなり固定したイメージを抱いていたのだが、この作品を見て改めて時代劇にも視野を広げて女優としての個性を探るべきであると思った。
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