ブルーノのしあわせガイド

5月13日(月)曇り後晴れ
 銀座シネスイッチ2でイタリア映画『ブルーノのしあわせガイド』(Scialla!)を見る。脚本家として活躍してきたフランチェスコ・ブルーニが初めて監督した作品である。NHKラジオ「まいにちイタリア語」応用編Cinecaffe "Pensieri e Parole"2の4月放送分で取り上げられていた。

 現代のローマ。15歳のルカは母親のマリーナと暮らしている。気はいいのだがどうも生活不規則、学校や勉強とは何とは相性が悪い。勉強についていけないので、元教師で今は家庭教師兼ゴーストライターであるブルーノに指導を受けている。ブルーノは元ポルノスターで、現在はアダルト映画のプロデューサ-であるティーナの自伝の代筆のために彼女の話を聞いたり、なじみのバールで新聞を読んだり無駄話をしたりしている。そんな2人の生活に変化が生まれる。

 向上心に富んだマリーナは資格を取ってアフリカのマリで仕事をすることになり、(秘密にしてきたのだが実はルカの父親である)ブルーノにルカを預けることになる。こうしてブルーノとルカの共同生活が始まる。ルカの学業成績と態度について学校のデ・ビア―ジョ先生は厳しい評価を下し、そもそも高校ではなく職業訓練校に行くべきであったという。それに承服できないブルーノはルカの生活を改めさせ、彼に特訓を行って進級試験に合格させようとする。一方、何か大きなことをしたいと考えているルカは麻薬のカリスマ的な密売人であるポエタ(詩人)と関係をもつ。

 4月号のテキストのコラム「◆ボロボロの学校◆」で触れられているところによると、「イタリアでは、まともな人間は学校や勉強についてごくオーソドックスな考え方をもっていて、それは日本人の一般的な感覚とはずいぶん違うようだ。例えば教養とはそもそも人生をより深く理解し、より豊かに生きるためのアイデアの総体であって、学校がそれを教え、学ぶ場だとすれば、その結果としての成績が実社会で役に立つかどうかはまた別の話になる」(110ページ)。ブルーノがルカに教えるのはラテン語の文法であったり、『イーリアス』や『アエネイス』の内容であったりする。それがルカのこれからの人生にどのような意味をもつかについては日本人の観客から見ると、かなり疑問に思えるところである。ところが、ブルーノもデ・ビア―ジョ先生も、それどころかティーナやポエタでさえもこのような教養とそれが教育の主要な内容であるべきことを疑っていないのである。ルカがこれからどんな職業を選んで、どのように生きて行くかと全く関係のない教育の成績が彼の人生と大きな関係をもってくるかもしれないのである。

 映画の題名Sciala!はromanescoと呼ばれるローマ方言の中の、若者特有の言葉で(標準語ならばStai sereno)「まあいいから」「大丈夫」というような意味だという。ローマの若者ことばが連発されるこの作品は、イタリア国内で字幕なしで上映されたときよりも、海外で字幕付きで上映されたときの方が反応がよかったという。そういう言葉の問題も手伝って、現代のイタリアの社会と教育(制度)が若者にとって不適切極まりないものになっている状況がコミカルに描かれている。(実際のところは悲劇かもしれないが、あまりにも深刻すぎて、笑って時間を稼ぐよりもよい対処の仕方が見いだせないようなのである。)

 簡単には解決が見いだせない状態にまで追いこまれたイタリア社会の問題が明らかにされる(ポピュリスト政治家の政策によって解決できると信じている人がまだ少なくないというイタリアの大衆社会状況も問題ではある)。幕切れに近づくにつれて物語の展開が速くなり、演出が冴えて来るように思われるので、最後の最後まで画面から目を離さないことをお勧めする。ブルーノのヴェネト方言と、彼を取り巻く人々のローマ方言の対比などということがわかるほど、こちらがイタリア語に通じていないのが残念であった。Chi va piano, va sano e va lontano. (ゆっくり行くものは安全に遠くまで行く。)というイタリア語のことわざもある。そういえば、Pianoという言葉が、ルカとブルーノが2人でバイクに乗っている場面で使われていた。
 
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