ロビン・スティーヴンス『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』

4月11日(火)雨

 ロビン・スティーヴンス『英国少女探偵の事件簿① お嬢さま学校にはふさわしくない死体』(コージーブックス)を読み終える。1月に読み終えたジュリー・ベリー『聖エセルドレだ女学院の殺人』(創元推理文庫)と読み比べると余計に面白くなりそうな本である。

 1934年のイングランド。ディープディーン女子寄宿学校という学校が舞台。この学校に前年、香港から2年生として編入してきたヘイゼル・ウォンが物語の語り手である。英国かぶれの中国人家庭に育った彼女は、英国の学校に転校してきて、寒さと、生徒たちが意地悪なのに驚く。しかし、その中で貴族の令嬢であるデイジー・ウェルズと仲良くなり、いくつかクラブを作っては失敗した後、3年生になって2人で<ウェルズ&ウォン探偵俱楽部>を秘密裏に結成する。頭がよく、推理小説を何冊も読んでいるデイジーがホームズ=会長であり、相棒のヘイぜルはワトソン=記録係ということである。

 学校にはいくつか幽霊の話が伝わっていて、ヘイゼルが転校してくる前に室内運動場のバルコニーから飛び降り地厚をしたヴェリティ・エイブラハムという生徒の話がとくに有名である。新しい学年を迎え、これまでの校長代理が引退したので、次の校長代理にだれがなるかが話題になる。また引退した先生の代わりに新しくやってきた男性教師が生徒たちどころか、教師たちの人気を集める。そんな時に、ヘイゼルは室内運動場で科学のベル先生の血まみれの死体を見つける。ところが、デイジーや上級生を呼びに行ってから運動場に戻ると、死体はない。上級生からはうそつき呼ばわりされ、夕食抜きという罰を受けることになる。しかし、デイジーはヘイゼルを信じ、探偵倶楽部の名にかけて真相を明らかにしようと、捜査に乗り出す。死体が見つからなければ警察も動かないだろう、それまでは自分たちで何とかしようというのである。
 彼女たちが探り出したところでは、ベル先生の辞職願が校長の机の上に置いてあったという。もし先生が殺されているのであれば、誰かが彼女の筆跡をまねて辞職願を書いたということになる。さらに校長室に忍び込んで机に辞職願をおけるのだから、犯人は先生たちの中のだれかである…。デイジーはヘイゼルに事件簿を作らせ、それぞれの先生に考えられる殺人の動機と事件の時間におけるアリバイを洗い出すことになる。2人が捜査を続けていくうちに、英語のテニソン先生が不審な死を遂げる…。

 もともと十代向けに書かれた小説なので、学校生活の描写などかなり詳しく描かれているし、事件と推理の過程がヘイゼルの事件簿をたどりながら、丁寧に示されている。そういう意味で若い年代の読者に対する推理小説入門としてはよくできている。これにくらべると『聖エセルドレダ女学院』の方が話としては荒唐無稽である(その分、面白いことは面白い)。なお、『エセルドレダ』がヴィクトリア時代の終わり(シャーロック・ホームズの時代)に年代を設定しているのに対し、こちらは1930年代に物語の年代が設定されていることも注目してよい。作品中にデイジーが『失楽園』のページの間に、ドロシー・セイヤーズの『誰の死体?』を隠して読んでいる場面とか、終りの方で警部が2人組の活躍をたたえて「ミス・マープル」という場面とか、クリスティ、セイヤーズ、アリンガム、マーシュの女流推理作家<カルテット>が活躍した時代の雰囲気を醸し出そうとしているのが面白い。
 なお、英国の推理小説で学校が舞台になったものとしては、このブログでも取り上げたヒルトンの『学校の殺人』(1931)が古く、グラディス・ミッチェルの『オペラにおける死(Death at the Opera)』(1934)がこれに続く作品だという。クリスティの『鳩の中のネコ』は1959年の作品だから、この物語の作者は当然読んでいるだろうが、時代的な隔たりがある。

 『エセルドレダ女学院』がフィニッシング・スクール(日本に当てはめて考えれば各種学校の花嫁学校)であるのに対し、こちらのディープディーンは正規の独立学校(日本に当てはめれば学校教育法上の学校である私立学校)らしい。そのことが生徒間の関係や学校生活の描写とも関係しているように思われる。この『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』では、学校の建物や行事、授業など学校内のことが詳しく書かれている代わりに、学校がイングランドのどのあたりにあるのかがわからないというのが、『エセルドレダ』が学校の地理的な位置をかなりはっきり書いているのに、学校の中の様子については少しぼんやりとさせているのとは対照的である。どっちかというと、オカルト色の強い『エセルドレダ』の方がコージー・ブックス向きで、『お嬢さま学校』の方が本格的な感じがして創元推理文庫向きだと思うのだが、これは私の偏見かもしれない。いずれにしても、このシリーズがどのように続いていくかというのも興味のあるところで、続刊を待ちたい。

 学校の「幽霊」は事件の解決に結びつくので気を付けてほしい。英国には幽霊の出るという噂の古い建物がたくさんあって、そういう話を集めた本が何冊も出ているほどである。私もデヴォン州のエクセターで泊まったホテルでこのホテルのこのあたりには幽霊が出ることがありますというガイドを読んだことがある。そんなことも頭に入れて読むと興味が増すかもしれない。
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