ジェイン・オースティン『エマ』(7)

4月4日(火)晴れ

これまでのあらすじ
 18世紀の終わりか、19世紀の初めごろのイングランド東南部サリー州のハイベリーという村に住む地主の娘で21歳のエマ・ウッドハウスがこの物語の主人公である。美人で頭がよく、村の女王的な存在の彼女は、たいていのことは自分の思い通りに推し進めてしまい、自分を過大評価しがちであるという欠点も持っていた。隣村の地主であり、彼女の姉イザベラの夫ジョンの兄であるジョセフ・ナイトリーはそういう彼女に面と向かって忠告できる唯一の人物であった。
 長くエマの家庭教師をしていたミス・テイラーが村の有力者のウェストンと結婚できたのは、自分の縁結びが功を奏したのだと信じ込んだエマは、ナイトリーが止めるのも聞かずに、村の牧師であるエルトンの配偶者を見つけようと思いはじめる。そして、村にある寄宿学校の特別寄宿生であるハリエットと結びつけようとするが、失敗する。
 ウェストンには自分の先妻との間に儲けたフランクという息子がいて、先妻の実家であるヨークシャーの名門チャーチル家で育てられている。ハイベリーを訪問したフランクをエマは気に入るが、夫ではなく友人として付き合うべきだと考える。村の元牧師の未亡人であるベイツ夫人には、ジェインという孫がいて、なき父親の友人に育てられていたのだが、事情があって里帰りしている。ジェインはエマと同じ年齢で、才芸に秀でた美人であるが、エマは彼女の物静かで落ち着いた態度が気に入らず、内心でライバル視している。野心家のエルトンはハリエットではなく、エマと結婚したいと思っていたのだが、ふられたので、保養地であるバースで出会った成り上がりの商人の娘オーガスタと婚約し、村に帰ってくる。

 エルトンが結婚式を挙げ、エルトン夫人が村に住むことになる。エマはハリエットを連れて、結婚祝いの訪問をする。短い訪問で、気まずさと早く辞去したいという気持ちがあって、エマはエルトン夫人をゆっくり観察できなかったが、上品さに欠ける女性だと思い、あまり好きになれなかった。しかし、ハリエットはエルトン夫人が素敵な女性だと思うと感想を述べた。
 エルトン夫妻が返礼のあいさつに来た時に、夫人と2人だけで話す機会があり、エマはエルトン夫人について「ひどい見栄っ張りで、ひどい自己満足型で、自分をご大層な人間だと勘違いしている。人前に出るといつも目立とうとして、さかんに自分の偉さを示そうとするが、三流の学校の教育しか受けていないので、でしゃばりで、なれなれしい。物の考え方と生活のスタイルは、身近な人たちのそれをそっくりまねしたものだ。馬鹿ではないとしても無教養で、要するに、彼女と一緒にいてもエルトン氏は何も得るところはない。」(中野訳、45-6ページ) なお、「三流の学校」の原文はbad schoolであるが、この時代、英国の学校、とくに女子を対象とする学校の水準は極めて低かった。文学作品に登場する中では『虚栄の市』でベッキーとアミーリアが学んだチジック・モールのアカデミーがもっともましな学校であったと言えよう。
 エルトン夫人はエマの住むハートフィールド屋敷の称賛にことよせて、自分の義兄のメイプル・グローヴ邸を自慢し、エマと親しくなろうとするが、エマは受け付けない。自分の夫をE様(Mr.E)と呼び、ナイトリーを呼び捨てにするなど(Mr. Knightlyというべき)、リラックスしすぎている態度はエマにとって許しがたいものであった。(第32章)

 エマはエルトン夫人に対する自分の悪い評価が間違っていないことを確信する。「エルトン夫人はうぬぼれが強くて、でしゃばりで、なれなれしくて、無教養で、育ちが悪い。多少は美人で、女性としての教養も少しは身につけているが、もともと頭が悪いので、自分は世の中を知っていると錯覚し、ハイベリー村の人々を活気づけて向上させるためにやってきたのだと勘違いしている。自分は独身時代も社交界で輝かしい存在だったが、エルトン牧師夫人となって、いっそう箔がついたと思っているのだ。」(中野訳、59ページ)
 エマが自分と仲良くしようとしないので、エルトン夫人はジェイン・フェアファクスに近づく。「エマが驚いたのは、ジェインがエルトン夫人の親切を黙って受け入れ、そのお節介に耐えているらしいということだった。」(中野訳、65ページ) エマを交えた会話の中で、ナイトリーはジェインの美点を褒めるが、彼女には率直さと明るい性格がないと指摘する(いろいろな点で、エマよりも勝っているジェインであるが、エマの持つ率直さと明るさがないという指摘は、この後の展開の伏線になる)。(第33章)

 エルトン夫妻は村の有力者たちからディナーへの招待を受けており、エマの父親もエルトン夫妻を招待することになる。ディナーに出席したジョン・ナイトリーと話していたジェインは自分が日課として散歩をすること、郵便局に必ず寄ることにしていると語る。エルトン夫人はジェインに雨の中の郵便局行きをやめさせようとするが、ジェインは耳を貸さない。エマはジェインの文通相手についてあらぬ妄想をして内心で楽しんでいる。(第34章)

 強引なエルトン夫人はディナーの後の女性だけの会話の際にジェインを独占し、彼女に家庭教師(ガヴァネス)の就職口を世話しようと申し出る。もともとジェインは家庭教師になるための教育を受けてきたのだが、就職の話は夏まで待ってほしいという。(彼女がそういうには理由があるはずだが、何事にも強引なエルトン夫人はそこまで気を回さない。) ディナーの席にウェストンが遅れてやってきて、フランクが間もなくハイベリーにやってくると知らせる。(第35章)

 ウェストンがエルトン夫人に語ったところでは、フランクの養母であるチャーチル夫人の体調が悪く、ロンドンで静養することになり、フランクはハイベリーにやってくることが出来そうだということである。ジョン・ナイトリーはミス・テイラーがウェストン氏と結婚したために、社交好きな夫の影響を受け、そのあおりでエマの身辺でも社交的な催しが多くなったという(ジョンは自分の家庭を最優先する心情の持ち主で、社交的なことが嫌いな人物として描かれている)。 (第36章)

 フランクがやってくるという知らせを聞いて、エマはなぜか心の動揺を感じた。ロンドンに到着したフランクはすぐにハイベリー村を訪問するが、エマとはわずかな時間話しただけで他の知り合いのところに行ってしまう。チャーチル夫人はロンドンの騒音に我慢が出来ず、郊外のリッチモンドに移ることになる。リッチモンドの方がハイベリー村に近いので、フランクは内心で喜んでいる。以前、フランクの帰省で取りやめになったウェストン夫妻主催の舞踏会がどうやら実現しそうな運びとなる。(第37章)
 
 何事にも強引で自己顕示欲の強いエルトン夫人が登場して、物語はいよいよ進行を速める。身分的な意識が強い(偏見といってもよいかもしれない)エマは、成り上がりのエルトン夫人を嫌うが、その代わりにジェインがエルトン夫人の近くにいつもいるようになる。しかし、エルトン夫人の強引さには辟易し始めている様子である。これまでと同様、ジェインの行動には謎めいたものがあり、何か秘密をもっているようである。そしてその秘密は、エマが想像するようなものではないことも推測できる。終盤、エルトン夫人の<活躍>が目立ち始める一方で、エマは相変わらず勘違いが多いけれども、何となくしおらしい感じにも見えてくるのが、結末への布石になっているようである。  
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