イチかバチか

12月13日(木)
 シネマヴェーラ渋谷の「川島雄三『イキ筋』十八選」の上映の中から彼の最後の作品である『イチかバチか』と、『貸間あり』を見た。
 『イチかバチか』(1963)は城山三郎の同名小説の映画化。伴淳三郎扮する老実業家が自分の預金を引き出し、札束の山を眺める場面から始まる。鉄鋼不況の中、全財産を投じて自分の経営する鉄鋼会社の工場を集約した大工場を建設するというイチかバチかの大勝負をしようというのである。
 そのために彼は自分の戦死した息子の友人であった高島忠夫ふんする青年を他の会社から引き抜く。青年は彼によい印象を持っているとは言えないのだが、仕事の面白さと、社長の秘書をしている団令子の魅力にひかれて仕事を引き受ける。社長の家に出かけたところ、彼の妻が死んだばかりであることを知る。このことを彼は誰にも知らせていなかったのだが、東三市という地方都市の市長が聞きつけて花を送ってくる。この市長をハナ肇が演じている。この時期、脂が乗りかかっていた彼の演技がこの作品の見ものの1つである。
 青年は東三市に調査に出かけるが、微行のはずが市長に察知され、歓待を受ける。しかし市長の評判は必ずしもよいとはいえず、反対派の市会議員も多いようである。市長には水野久美扮する謎めいた秘書がいる。一方、会社の方も社長の独断専行のやり方に組合ばかりか管理職まで不満をもちはじめる。さて、どうなるか。秘書2人にそれぞれの謎があり、それも事態の進展にかかわってくる。
 川島はこの前年、箱根観光をめぐる2大企業グループの対立を取り上げた『箱根山』(1962)を撮っているが、『箱根山』では後半、加山雄三と星由里子のロマンスの方に比重が移ってしまっていた。こちらは、企業誘致をめぐる攻防が最後まで展開され、様々なアングルから撮影された画面が物語の緊迫感を盛り上げているとはいうものの、関心は社長と市長の個性のぶつかり合いに向けられているように思われる。社長の吝嗇ぶりの描写など喜劇的な場面に事欠かないが、そのような喜劇性がかえって物語のスケールを小さくしているようにも思われる。企業間の競争の非情さが浮き彫りにされた梶山季之の原作を増村保造が映画化した『黒の試走車』(1962)には劣る。しかしこれはこれで見ごたえのある作品である。
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