ジェイン・オースティン『エマ』(4)

3月13日(月)曇り

これまでの展開
 ロンドンに近いイングランド東南部のサリー州のハイベリーという村に住む地主の娘、エマ・ウッドハウスは若く、美しく、村の女王的な存在であった。彼女の家の家庭教師(ガヴァネス)であったミス・テイラーが、村の有力者の1人であるウェストンと結婚したのは、自分の働きのためであると信じ込んだ彼女は、自分には縁結びの才能があると思い、村にある寄宿学校の生徒であるハリエット・スミスを村の牧師であるエルトンと結びつけようと画策する。隣村の地主であり、エマの姉の夫の兄であるジョージ・ナイトリーはエマのそういう出すぎた行動をたしなめる。ハリエットはナイトリーの信認篤い農夫のロバート・マーティンから求婚されるが、ハリエットがもっと身分の高い人物と結婚すべきだと考えているエマはそれを断るように指示する。そのことで、エマとナイトリーの仲が気まずくなる。エルトンは、エマにハリエットの肖像を描くことを勧め、絵が完成すると、額縁を買いにロンドンに出かけたりして、ハリエットのことがまんざらでもない様子に思われた。クリスマスが近づいて、エマの姉のイザベラが夫のジョン・ナイトリーや子どもたちとともに、里帰りしてくる。この機会にエマとナイトリーは仲を修復する。

 社交好きのウェストン氏が里帰り中のジョン・ナイトリー夫人たちを含めたウッドハウス家の人々を12月24日にディナーに招待する。内輪の集まりなので、両家の人々のほかはエマの仲良しのハリエット、牧師のエルトン、ジョン・ナイトリーの兄の(ジョージ・)ナイトリーが招かれただけであったが、ハリエットが風邪をひいて出席できなくなる。心配したエマは見舞いに行くが、その帰りにエルトンに出会う。エルトンはハリエットの病気が伝染性のものではないかと疑い、エマの身を案じる。エルトンとハリエットとを結び付けたいと思っているエマは、エルトンの声がおかしいことを指摘して、大事をとってディナーには出席しないように忠告する。エルトンはその忠告を喜んだものの、その場に居合わせたジョン・ナイトリーが自分の馬車に乗れば寒さは問題がないというと、その申し出を喜んで受け入れ、ディナーに出席することに決める。
 ハリエットの見舞いに行くエルトンと別れた後、一緒に歩きながらジョン・ナイトリーはエマに、エルトンはエマに気があるらしいと言って、彼に対する態度に気を付けるように忠告する。エマは彼がずいぶん変なことをいうものだと当惑する。
 ウェストン家に向かう馬車に乗り込んだエルトンはパーティーを楽しもうとしている様子であり、家庭を第一に考えるジョン・ナイトリーとは話が合わない。エマは、エルトンがハリエットのことをそれほど気にかけている様子ではないことをいぶかる。(第13章)

 ウェストン家に着いたエマは、客間でエルトンの隣に座ることになり、彼のなれなれしいおしゃべりにイライラする。他のみんなはウェストンの息子(=フランク・チャーチル)の話をしているのに、聞き逃してしまう。エマは結婚するつもりはないと心に決めてはいたが、フランク・チャーチルの存在はなぜか気になっていたのである。〔フランクはウェストンが死んだ先妻との間に儲けた子どもで、ヨークシャーの名門である先妻の実家のチャーチル家で育てられているのである。〕
 その後、ディナーの席に着いたエマはウェストンから翌年の1月にフランクが訪ねてくる予定であるという。エマの元家庭教師であったウェストン夫人によると、フランクの育ての親であるチャーチル夫人は大変に気まぐれで横暴な人物であり、フランクの行動はその意向に左右されているので、実際に訪れて来るかどうかはわからないという。そしてエマに次のようにいう。
 ’My dearest Emma, do not pretend, with your sweet temper, to understand a bad one, or to lay down rules for it: you must let it go its own way.'
「あなたみたいに性格のいい人が、性格の悪い人のことをわかったつもりにならないほうがいいわ。決めつけたりしないほうがいいわ。こういうことは成りゆきに任せた方がいいの。」(中野訳、193ページ)
「ねえエマ、あなたは優しい気性の持ち主だけれど、性悪女の気持ちがわかったようなふりをしたり、そのためのルールを決めたりはしないほうがいいわ。ほうっておけばいいのよ。」(工藤訳、191ページ)(第14章)

 折から雪が降り始め、ディナーは打ち切りになる。帰りの馬車にエルトンと2人で乗ることになったエマは、彼から愛の告白を受ける。エルトンとハリエットの仲を取り持とうとしていたエマは、2人の間にあいが芽生えているというのが彼女の夢想であったことに気付く。(第15章)

 エルトンがハリエットではなく、自分に思いを寄せていたことを知ってエマはショックを受ける。そしてエルトンが、自分の社会的地位を高めて、財産を増やしたいと思っているだけの人物であると気づく。帰宅後、大雪のために外出ができないまま、数日が過ぎる。(第16章)

 天候が回復しジョン・ナイトリー一家はロンドンに戻る。その日の夜に、エルトンからバースに出かけ、2,3週間滞在するという手紙がウッドハウス氏あてに届く。エマはハリエットを訪問して、これまでのいきさつを説明する。ハリエットは涙を流すが、悲しみに耐える。その様子にエマは感動する。そして何とか彼女を幸せにしてあげようと考える。(第17章)

 フランク・チャーチルが実父のウェストン氏に会いにやってくるという話は取りやめにあった。この件をめぐってエマとナイトリーの意見は対立する。エマは、チャーチル夫人の横暴さがフランクの行動を邪魔していると言い、ナイトリーは、フランクに来る気があればその位のことはできるはずだと主張する。エマは、時々意見の違いから衝突することはあっても、ナイトリーが心の広い人間だと思っていたので、彼がフランクのことを自分とは違う性格の持ち主だというだけで嫌悪していることが理解できない。(第18章)

 私の手元にあるPenguine English Library版では、この物語は3部構成になっていて、今回の最後に紹介した第18章までが第1部である。物語の表舞台にまだ登場してこない人物がフランク・チャーチルをはじめまだ何人かいることに留意してほしい。さらに言えば、それらの登場人物が表面に出ない別の物語を展開させているかもしれないのである。
 エマは21歳で、まだ人生経験はそれほどのものではなく、ウッドハウス家では女主人として手腕を振るうことができるかもしれないが、外の世界には彼女の力に余ることがいくらでもある。エルトンの牧師という外見を信用しすぎて、彼が相手によって態度を使い分けていることに気付かず、また自分に対する関心とハリエットに対する関心を識別できず、ジョン・ナイトリーの指摘を見当外れだと思ったりしたのはその一例である。しかし、十分に世故に長けているとはいいがたい彼女がさまざまに行動するから物語の展開が面白くなるということも確かである。さて、物語はこの後どのように展開していくのであろうか。
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