日記抄(2月12日~18日)

2月18日(土)晴れ

 自分つくりのための読書とでもいおうか、月曜日・火曜日にはレーヴィットの『ヘーゲルからニーチェへ』、水曜日~金曜日には木庭一郎『ハイネとオルテガ』(自分の研究のための参考になる内容が記されている)、土曜日・日曜日には大野晋・丸谷才一『日本語で一番大事なもの』を読んでノートを作ることにしている。計画通りに進捗しているとはいいがたいのが問題である。この、読書が前回、書き洩らしたことと関連する:
 2月11日
 NHKラジオの「朗読の時間」で「芥川龍之介随筆集」を取り上げているのは既に書いたが、本日の放送分で「本所 深川」が終わって「澄江堂雑記」に入る。芥川の子ども時代の思い出の地の再訪録である「本所 深川」に比べて、いろいろなことを書き散らしている「澄江堂雑記」の方が面白くないのは、致し方のないことである。その「本所 深川」の最後のところで、昔住んでいたところを再訪した感想を芥川が家族のものに語る箇所があり、そこで、『方丈記』の一節が引用されている。家族のだれ一人として、『方丈記』を知らないというのが、教育史的な事実として興味深い。
 
 大野・丸谷『日本語で一番大事なもの』の中で、大野が次のような発言をしている:
「…昨年インドに行きましたとき、私の通訳として助けてくれたインドの若い女の人に、川の流れを見て、われわれは「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし」というと、言ったんですね。また中国では「ゆくものはかくのごときか昼夜をおかず」と孔子が言ったという話をしたんです。そうしたら彼女曰く、「水は流れてゆくけれども、その本質において何の変りもない」と。これには私も驚きました。インドの人には、やはりサンスクリット的世界のとらえ方があって、時間によって物事が流動していくことを詠嘆しない、事の本質はなにかというようにだけ見るわけなんですね」(119ページ)。
 鴨長明が見ている水の流れは、小川だったかもしれないという説があり、孔子の感慨とは異質のものがあるのかもしれない。インドの若い女性の意見は、彼女だけのものであって、ほかのインド人が同じように考えているかどうかはわからない。また、「サンスクリット的」というレッテルの張り方が正しいとは思われない。とは言うものの、この話は考えさせられるねえ。

2月12日
 この日の当ブログで大隅和雄『中世の声』について取り上げたが、大隅さんは『平家物語』についてかなりの紙幅を割いて語っているけれども、その書き出しと『方丈記』の書き出しに通底するものがあるのではないかとは論じていない。実は、『太平記』と『徒然草』には、書き手の側では何とか話をまとめようとしているのだけれども、現実の方がまとまってくれないという共通点があり、それに比べると『平家』と『方丈記』はまだ現実の展開が著者にとってとらえやすいものであったのではないかと思っているのである。あるいは『太平記』+『徒然草』+『増鏡』と、『平家』+『方丈記』+『今鏡』という2対のトライアングルの比較をした方がいいのかもしれない。

 大隅さんの著書の中で、ヨーロッパの宗教改革と鎌倉新仏教についての対比の可能性について触れている箇所があるが、ヨーロッパの側から、あるいは日本とヨーロッパ以外の宗教史研究の中から、この問題について論じた例があるのであろうか。ヨーロッパの国々の中でも、宗教改革に類する動きがあった国もあるし、起きなかった国もある。中国や韓国で鎌倉の新仏教に類似した宗教的な動きはなかったのであろうか・・・という風に考えるべき問題はきわめて多い。

2月13日
 NHK「ラジオ英会話」の続き物語”The Secret Admirer"はいよいよ”Valentine's Day Dance"の日を迎える。クレアもヴェロニカもこの日を迎えて大いに興奮している。ヴェロニカが、クレアに言う:
Maybe your Prince Charming will be there. (あなたの夢の王子様がそこに来るかもしれないわ。)
 「プリンス・チャーミング」というのは、『白雪姫』の登場人物としてディズニーが創造した存在かと思っていたが、もっと古くからある言い回しのようである。

2月14日
 「ラジオ英会話」の”The Secret Admirer"の続き。Valentine's Day Danceに着ていくものがないがないというクレアに、ヴェロニカは手ごろな店を紹介する。その店で、クレアは彼女当てのValentine Messageが記されていたのと同じ便箋を見つける。店員によると、最近、若くてtall, dark and handsome (長身で色浅黒くハンサムで)という伝統的な美男3点セットの男性がこの便箋を買っていったという。うーん、私はこの3点セットのどれにも当てはまらないなぁ。

2月15日
 「ラジオ英会話」の”The Secret Admirer"の続き。クレアとヴェロニカはダンスの会場に到着、クレアはアダムに声をかけられ、
May I have this dance? (この曲、踊っていただけますか?)
と申し込まれる。と、すぐにクレアの本命であるジョンが現われて、
You look absolutely stunning tonight. (今夜はハッとするほど素晴らしいね!)と彼女を褒めて、
Save the next one for me. (次の曲、僕にとっておいて。)と頼む。
 ジョンの役を遠山先生が演じているのがなんとなく、可笑しい。

2月16日
 『朝日』朝刊に「繰り返し学習 やっぱり有効」という記事が出ていた。問題は、いつ、どのように繰り返すかということのようである。

 「ラジオ英会話」の”The Secret Admirer"の続き。アダムと踊っていたクレアは、アダムがヴェロニカに恋い焦がれていているが告白できないのだといわれる。
I just can't get up the courage to ask her to dance. (勇気を出してダンスを申し込むことがどうしてもできないのです。)
Veronica would dance with you in a heartbeat. (あなたとなら、ヴェロニカはすぐさま踊るわ!)
クレアとジョンの方は、どうなるのであろうか?

 NHKラジオ「実践ビジネス英語」の”Quote...Unquote"のコーナーで紹介された言葉:
To invent, you need a good imagination and a pile of junk.
          ――Thomas A. Edison (U.S. inventor, 1847 -1931)
(発明するためには、優れた想像力とガラクタの山が必要だ。)
 失敗せずに、成功しようというのは虫が良すぎるという発言である。

 同じく「まいにちフランス語」応用編「ガストロノミー・フランセーズ 食を語り、愛を語る」は”Bistrot ou brasserie? (1)  La nouvelle cuisine française redéfinit les codes"(ビストロ、それともブラッスリー (1)規範を再定義する新しいフランス料理) という話題を取り上げた。ビストロは、飲み物を飲んだり、ちょっと気軽なものを食べたりするため、立ち寄る場所であり、ブラッスリーは手軽で家庭的な料理を出し、サービスもシンプルな店であるという。レストランは、特別な場所で、サービスは非の打ちどころのないもの、料理は手本となるほど立派なものでなくてはならないという。

2月17日
 「まいにちフランス語」は”Bistrot ou brasserie ? (2)"で、前回紹介した3種類の店の他に、1990年代以降、bistronomieと呼ばれる新しい種類の店が登場して、力関係を変えたという話になった。
Désormais, on peut goûter une cuisine savoureuse dans de petits établissements aux tarifs accessibles. (以来、小さな店で、手ごろな値段で、おいしい料理を食べることができる。) あなたもビストロノミーを試してみたら?と勧める内容であった。

2月18日
 パナホーム・ビューノプラザ大塚で開かれた「別府葉子シャンソンライブ2017」に出かける。ヴォーカル&ギターが別府さん、ピアノが鶴岡雅子さん、コントラバスが中村尚美さん、ヴァイオリンの会田桃子さんがゲストとして参加という顔ぶれは、昨年9月のコンサートと同じ。今回は会場がより小規模なので、観客との距離が近く、音楽とおしゃべりをより身近に楽しむことができた。「愛の讃歌」「百万本のバラ」などこれまでもコンサートで歌われてきたおなじみのシャンソンのほかに、中島みゆきさんの曲とか、別府さん自作の「バラ色のジュテーム」という新曲とか、私が学生時代に確か弘田三枝子さんが歌っていた「夢見るシャンソン人形」とかが歌われ、なかなか盛りだくさんな内容で、客席も大いに盛り上がった。
 最初に歌われた「白い恋人たち」を1970年代の歌と紹介していたが、正確には1968年のグルノーブル(冬季)オリンピックの記録映画の主題歌である(この頃は、夏と冬のオリンピックを同じ年に開催していた。冬がグルノーブルで夏がメキシコ・シティであった)。思い出を整理してみると、オリンピックの記録映画で私が見たことがあるのはこの作品だけである。市川崑監督による東京オリンピックの記録映画も、篠田正浩監督による札幌(冬季)オリンピックの記録映画も見ていない。
 別府さんも言っていたように、この映画の監督はクロード・ルルーシュで、『白い恋人たち』に取り組む一方で、ルルーシュは『ベトナムから遠く離れて』に参加したり、アメリカ資本で『パリのめぐり逢い』をとったりしていた(『パリのめぐり逢い』に出演していたキャンディス・バーゲンはトランプ大統領と同じころに、同じペンシルヴェニア大学に在学していたはずである)。そのあたりの事情を思い出してみると、結構面白い。映画を見た時のことを思い出し、セーヌ左岸派と『カイエ・デュ・シネマ』という戦後のフランス映画の2つの流れの中で、中立的であり、また観客が呼べる映画を作れる監督というとルルーシュとジャック・ドミーくらいしかいなかったのかななどと考えたりもした。(ジャック・ドミーがつくった記録映画『ロワール川の木靴づくり』はものすごく、いい映画であった。『ローラ』よりも、『シェルブールの雨傘』よりも、この作品の方が好きである。もし、ドミーがグルノーブル・オリンピックの記録映画を作っていたら、どんな作品になっただろうかなどと考えるのも楽しい。年をとった分、思い出すこと、考えることは多くなっているのである。) 
 今回、歌われた「バラ色の人生」はオードリー・ヘップバーンとゲーリー・クーパー(とモーリス・シュヴァリエ)が共演した『昼下がりの情事』を思い出させるし、そうした選曲に映画好きの別府さんの個性が反映しているのかなとも思った。
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