須田勉『国分寺の誕生 古代日本の国家プロジェクト』

2月15日(水)晴れ

 須田勉『国分寺の誕生 古代日本の国家プロジェクト』(吉川弘文館:歴史文化ライブラリー)を読み終える。

 国分寺は奈良時代に仏教を中心とした国家構想の一環として、天平13年(741)に発布された「国分寺建立の詔」に基づき、日本各地に建設された寺院で、中国の唐の官寺制度に倣ったものとされるが、各寺に七重塔が建てられていたこと、国分寺と国分尼寺の二寺制がとられていたことは、中国には見られない日本独自の特色である。また、中国・唐代に諸州に設けられた大雲寺が既存の寺院を転用したものであったのに対し、日本ではすべて新設されたことも大きな違いである。

 平城京における東大寺と廬舎那仏、各地における国分寺・国分尼寺の造営はこの時代の社会の不安とそれを仏教の振興によって克服しようとする政治的な動きの一環であった。この書物は、東大寺と国分寺の建立にいたる複雑な前史を、政治史と関連させて文献研究を中心にたどり、さらにその造営の具体相を考古学的な知見によって明らかにしようとする。国分寺の建立は地方によって時期が異なり、その規模も一様ではない。国分寺をめぐる中央政府の政策も政権の変化に連れて変化を見せる。この書物はそのような国分寺の多様性と変化を明らかにしようとしている。

 書物の具体的な内容は、目次を詳しく紹介することである程度分かるはずである:
国分寺を復元する――プロローグ
全国官寺制構想
 天然痘大流行
 『金光明最勝王経』と『法華経』の採用
 釈迦像造仏料の施入
 国分寺制度の確立
 紫香楽宮と廬舎那仏の造顕
国分寺の創建
 金字『金光明最勝王経』の書写と廬舎那仏の鋳造
 上総国分寺
 武蔵国分寺
 国分寺の造営促進
国分寺の造営
 陸奥国分寺の造営
 武蔵国分寺の造営
 上総国分寺の造営
 近江・山背国分寺の造営
 国分寺の付属施設
 国分寺と七重塔
称徳天皇と国分寺
 称徳天皇と道鏡
 上総国分尼寺
 武蔵国分寺・常陸国分寺
 相模国分寺
 但馬国分寺
 国分寺の墾田開発
 国分尼寺跡の解明を目指して――エピローグ
あとがき
全国国分寺創建期所在地リスト

 以上の目次から明らかなように書物のかなりの部分が国分寺遺跡の発掘調査から明らかになった寺院の伽藍配置や出土した瓦の分析に費やされている。そういう発掘成果をその時代の歴史資料と突き合わせると、寺院がどのように造営したか、どのような人物がかかわったかがかなり具体的にわかるということである。さらに、聖武天皇と光明皇后の意思が造営にどのようにかかわっているか(国分尼寺を設けることについては皇后の意思が大きく働いているという)、廬舎那仏の造営等の事業にかかわる中で藤原仲麻呂が権力を握っていったのではないか、さらに称徳天皇期における国分寺の造営における道鏡の影響など、ちゅおうの政治的な動きと国分寺の事業の関係が追求されている。

 それで、誰にとってもわかりやすく、面白い書物であるとは必ずしも言えないかもしれないが、自分に関係のある武蔵、相模の国分寺について触れた個所は身近であり、興味深かった。「もともと武蔵国は、多摩川流域と荒川流域の文化圏を包括して建国された国である。この2つの地域は、安閑天皇期における武蔵国造の反乱でも見られるように、もともと歴史的背景が異なる地域であった。そうした歴史的特質は、この地域においてその後も長く続いたのである。/国家的事業である国分寺の造営にあたり、各郡の郡名を押印して、各郡の規模に応じた数量を、均等に負担する方式を採用した。そうした方法をとった背景には、20郡全部が、まとまりにくい武蔵国の歴史性が存在したからであろう。すなわち、武蔵国の歴史的特質が、国家的事業を推進する際の組織の編成に反映したと考えられる。」(147ページ)という議論など、武蔵国造に関連する遺跡ではないかと思われる東急多摩川駅付近の古墳のことなども思い浮かべながら読んだ次第である。

 そういえば、小学校5年生の時の社会科でA先生は、東京の国分寺市に国分寺という寺が今もあるという話をされ、6年生の時の社会科でB先生は相模の国の国分寺の近くに人々が別の大きな寺を建てたという話をされた。このお二人の先生のおかげで、歴史を身近なものとして考えることができるようになったという気がする。いまは亡き、両先生の楽音に感謝したいと思う。
 各地で展開された発掘作業の結果、国分寺については多くのことが分かってきているが、国分尼寺についてはまだ不明の部分が多いようである。あるいは初めからつくられなかった国もあったのかもしれないなどと考えさせられる。この本を読んで、国分寺の研究に取り組む後続の人々が現われることを願う次第である。
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