日記抄(1月22日~28日)

1月28日(土)晴れ

 1月22日から本日までの間に経験したこと、考えたことなど:
1月22日
 久しぶりに理髪店に出かけ、髪を短く切ってもらう。白髪が少なくなった一方で、頭の禿げもあらわになった。店の人と、東日本では蕎麦、西日本ではうどんというのは必ずしも当たらず、西日本でもそば、西日本でもうどんが名産になっている地方があるというような話をしていた。

 翌日の新聞で読んだのだが、この日、安倍首相がTOHOシネマズ六本木で、映画『沈黙――サイレンス』を見たとのことである。自宅のある渋谷区ではなく、六本木の映画館で映画を見たのは、首相が六本木が好きだからであろう。そういえば、年末年始も六本木のホテルで過ごしたことが報じられていた。
 首相が映画を見たり、展覧会に出かけたりすると、「首相動静」の一端として報じられるのだが、どんな本を読んでいるかとか、どんなテレビ番組を見ているかは、ほとんど報じられない。さらに言えば、『沈黙――サイレンス』を見て、どんな感想をもったのかも聞いてみたい気がする。この映画はまだ見ていないのだが、何とか機会を見つけて見ようと思っている。そのあたりのことは、スギノイチさんのブログ『狂い咲きシネマロード』の『沈黙』評へのコメントに書いておいたので、そちらの方をご覧ください。

1月23日
 東京の病院に出かけ、診察が終わった後で渋谷の紀伊国屋の本店を覗いてみる。

 横浜市の教育長が、市内の学校で起きた福島の原発事故の被災者に対するいじめをいじめと認めがたいという発言をしたことについて、発言を取り消すように申し入れがあったというニュースを見た。いじめとはどういうことを言うのかについての教育長ご本人のはっきりした認識を示させることの方が先決ではないかと思う。そこで表明された考えが、あまりにも教育界の常識とかけ離れたものであれば、辞任していただくよりほかない。

1月24日
 俳優の松方弘樹さんが亡くなった。1969年ごろだったか、大阪でコマーシャル・フィルムの制作の仕事の手伝いをしていて、撮影されたフィルムの入った缶を抱えて京都の現像所に出かけたことが何度もあった。それで、よくタクシーに乗ったのだが、ある時、運転手さんが、昔近衛重四郎さんをよく乗せたものだという思い出話をしてくれたことがあった。子息である松方さんがまだ子どもで、一緒についていたというような話であった。松方さんと結婚していた仁科亜希子(明子)さんについては、もう少し面白い思い出があるのだが、それはまたの機会にしておこう。

1月25日
 『朝日』の朝刊に川端康成の邸宅から、川端と交流があったり、彼が収集したりした文学者たちの書画が大量に発見されたという記事が出ていた。記事を読んでいて、山口瞳の一家が鎌倉に住んでいた時期に、山口の母親が川端康成と仲良くしていたという話をなぜか思い出した。

 NHKラジオ「実践ビジネス英語」の”Quote...Unquote"のコーナーで紹介された言葉:
All generalizations are dangerous, even this one.
             ――Alexandre Dumas (French writer, 1802-70)
(どんな一般化も危険である。このように一般化することも。)
手元にあるThe Penguin Dictionary of Quotationsではこの言葉は『三銃士』『モンテ・クリスト伯』(巌窟王)の作者である父親ではなくて、『椿姫』の作者であるAlexandre Dumas fils (1824-95)のものであると記されている。
 ジュール・ヴェルヌの長編小説『アドリア海の復讐』はデュマの『モンテ・クリスト伯』の翻案なのだが、この小説を送られた息子の方のデュマのお礼の手紙が、この種の手紙の書き方の例として、一読に値する。

1月26日
 『朝日』の「天声人語」に安倍首相が「云々」を「でんでん」と読んだという話が出ていた。麻生さんが「未曾有」を「ミゾウユウ」と読んだことに騒いだマスコミが、この件については口を閉ざしているように見えるのはどういうことだろうか。

 「実践ビジネス英語」の話題は”Food Market Trends" (食品市場の動向)で、アメリカの食品業界が自社製品の販売戦略を健康志向に、むやみに商品を売ろうとすることから、節度を持った消費を奨励する方向に変わろうとしていることを取り上げている。一方、「まいにちフランス語」応用編では”Des sushis à la menquez? (1) Les Français adorent la cuisine du monde"(メルゲーズのスシ? (1) 世界の料理を楽しむフランス人)ではフランス人が世界のさまざまな料理をフランス料理の中に吸収していることが論じられていて、アメリカとフランスの食文化の関心事の違いが表れているようにも思われる。

1月27日
 「まいにちフランス語」応用編は「メルゲーズのスシ?」の2回目で、マグレブ料理のクスクスや日本のすしがフランス料理に溶け込み、今やメルゲーズの巻きずしがあるほどになっているという。メルゲーズというのはスパイスのたっぷり入ったソーセージなのだそうだ。
 クスクスといえば、イタリアに留学していたことのある大学時代の同僚の先生が、北アフリカからの留学生と仲良くなってよく食べたという話をしていた。だから、イタリアでも食べられているのではないかと思う。
 マグレブLe Maghrebというのは北アフリカの西の方、チュニジア、アルジェリア、モロッコのあたりを指す(モーリタニアを含む場合もあるようだ)。イスラーム世界の西の果てで、「アラビアン・ナイト」ではしばしば魔法使いの住む地方として描かれている。ロンドンのユニヴァーシティ・カレッジの近くにマグレブ書店という本屋があって、その名の通り、マグレブ諸国に関する本を集めた専門書店なのだが、ここの主人と仲が良くなって、足しげく通ったことを思い出す。

 『朝日』の朝刊で池上彰さんがアメリカのトランプ新大統領の就任演説と、各紙によるその翻訳について論評しているのがなかなか面白かった。トランプ氏の「使う英語がアメリカの小学生レベルで、英語が苦手な人にも理解が容易」、「大統領の就任演説としては格調に著しく欠けますが、英語の教材にはなりそうです」などと辛らつなコメントを加えている。

 森銑三『思い出すことども』(中公文庫)を読み終える。1972年に完結した『森銑三著作集』の「月報」に連載した「思ひ出すことども」を改めて本にまとめて1975年に出版したものを、1990年に文庫本にしたものである。森銑三(1895-1985)は近世の学者・文人の伝記を多く執筆した人で、本の探し方、読み方など、参考になる記事が多い。なお、この書物の中に何度も出てくる井上通泰は医師で歌人でもあった人で、柳田国男の次兄である。(柳田のことも出てくるが、柳田の『故郷七十年』には森のことは出てこない。両者の興味関心の違いがこんなところにも出ている。)

1月28日
 斎藤兆史『英語襲来と日本人 今なお続く苦悶と狂乱』(中公文庫)を読み終える。この本については、機会を改めて取り上げるつもりである。

 NHKラジオ「攻略!英語リスニング」では”Primo Levi"を話題として取り上げた。
He was an Italian Jew, born in Turin, and graduated from the University of Turin in chemistry. (彼はイタリア系ユダヤ人で、トリノに生まれ、トリノ大学で化学を修めた。)
ムッソリーニのファシスト政権が反ユダヤ的な政策をとり、彼の家族が迫害されるようになって、1940年代初めに反ファシストグループに加わったが、逮捕され、結局はポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所に送られてしまう。1945年1月にソ連軍がアウシュビッツを解放して、自由の身になったのだが、彼とともに12両の貨車に詰め込まれて送られてきた650人のうち、生還したのはわずか3人であったという。
 その後、彼は自分の体験を書き記すようになる。but it really is his autobiographiccal work that stands the test of time -- a testament to the human spirit in the most horrific of situations (しかし、時の試練に打ち勝って後世に残っているのは彼の自伝的な作品である――きわめて恐ろしい状況に置かれた人間の精神の証として。) 
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