アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』

4月29日(月)晴れ

 『殺人は容易だ』(Murder Is Easy, 1939)については1月4日の当ブログ「二等車の運命」でこの小説の最初の方の場面について少しふれたことがある。ロンドンに向かう列車の一等車の中で主人公であり語り手のルーク・フィッツウィリアムは奇妙な老婦人と同席する。彼女の住んでいる村で、ひそかに連続殺人が行われている。彼女はその犯人を知っていて、これからスコットランド・ヤードに訴えに行くというのである。軽く聞き流していたルークは、翌朝の新聞を見て呆然とした。例の老婦人が車にひき殺されていたのだ。

 ルークはロンドンで彼がその住まいに身を寄せていた友人のジミー・ロリマーにこの話を告げ、さらに老婆が話の中で触れていた医師がやはり死去したという記事も発見する。老婆と医師が住んでいたウィッチウッド・アンダー・アッシュという町にはジミーのいとこのブリジェット・コンウェイが住んでいてタブロイド週刊誌の経営者であるホイットフィールド卿の秘書から婚約者になっているという。ジミーはブリジェットに連絡を取って民俗学の研究のためにウィッチウッドを訪問するという名目で事情を調べることを提案する。ルークはこの提案に従ってウィッチウッドに出かけ、ホイットフィールド卿の屋敷に受け入れられる。

 ブリジェットはルークの正体をすぐに知ってしまうが、それでも彼女の協力を受けながらルークは町の事情を調べはじめ、この町ではさまざまな事件が起きていたことを突き止める。靴屋の息子に生まれ、店の店員からたたき上げて成功して郷里の町に戻ってきたホイットフィールド卿の周辺にはさまざまな波風が立っているようである。

 1939年に発表されたこの作品は一般にそれほど高い評価を受けているわけではないが、私はわりに好きである。若い(と言ってもこの作品の場合はそれほどでもない)男女が怪事件を捜査するとともに、次第に2人の中が深まっていくというクリスティーの作品群の中によくある展開をもっているためかもしれない。事件の方も恋愛の方もそれぞれもつれながら、事件は終盤に急展開して、意外な結末を迎える。事件の解決にスコットランド・ヤードからバトル警視がやってくるというのが、実はこの作品の犯人探しのヒントになる。それから『殺人は容易だ』というこの書物の題も、ヒントとなるはずである。
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