東海林さだお『サンマの丸かじり』

12月5日(月)晴れ

 東海林さだお『サンマの丸かじり』(文春文庫)を読む。『週刊朝日』2012年7月20日号から2013年4月12日号まで連載された「あれも食いたいこれも食いたい」の各エッセーを単行本にまとめたもので、単行本は2013年10月に朝日新聞出版から刊行された。礼によって文庫本化に際して新たに書き加えられたのは、「解説」だけなのだが、その「解説」を東海林さんにとっては盟友ともいうべき椎名誠さんが書いているので、読み落とせない――買い落とせない1冊である。

 西荻窪に仕事場を持つ東海林さんは、年を取るにつれて次第次第に出不精になっている様子ではあるが、依然として世界のさまざまな(どちらかというとチマチマとした)動きに常に関心を寄せ続け、その好奇心は衰えることを知らない。『丸かじり』シリーズ第36冊目にあたるらしいこの本では、キャベツの人物月旦を行うかと思えば、ソーメンをストローで食べるという実験をする。読書のお供には豆がいいと提案し、月見そばを退けて月見うどんを推奨し、西荻窪にできたパイナップルラーメンの店を訪れ、コンビニで買ったカレー稲荷に驚き(誰だって驚く)、焼き芋を「取り寄せ」する。さらに仕事場から歩いて25分ほどかかる回転ずしの店に出かけて「開店1周年 88円デー」という寿司食べ放題(に近い)日に、ラーメンを食べる。

 和食のグローバル化によって蕎麦をズルズルとすすることが傍流へと追いやられるのではないかと心配し、「イチジクをいじめるな」と物事を軽々に判断してはいけないと果物の例を挙げて主張し、「柿剥けば」どんな心理になるかと考察し、テレビの料理番組の先生を品定めしながらも、「ひっくりかえせッ、豚肉」と細かい観察を怠らない。友人から贈られてきたイカ徳利を楽しみ、「三階建て駅弁」を楽しく悩む。うらやましいほどに多彩な日常生活の過ごし方である。

 解説で椎名さんも書いているが、「東海林さんは驚くべき博識家で世相にも明るく、なによりもすばらしいのは子供みたいに「なぜ?」というのと「不思議」というのをいっぱい持っていることである」(227ページ)。こういう東海林さんの特徴を褒めているのが椎名さんのいいところであって、世の中には、いい年をしてそんなことをがたがた騒ぐのかと冷笑的な態度をとる人もいるはずである。もちろん、「なぜ?」をやたら連発するのはうるさくてかなわないが、子どもの「なぜ?」を押し殺し続けていることが、「理科嫌い」の原因であるのかもしれないのである。

 そういう子どものような疑問や発想が、次第次第に成熟して、慎重な判断に結実する。「がっかりして食べ始め、食べ続けていくうちに少しずつ納得していく、というのがみつ豆の正しい食べ方、ということなのではないでしょうか。」(63ページ) 食べ物についてのエッセーなのだが、何となく人生全般にも同じことが言えるように思われてくる…というところが東海林さんの凄いところではなかろうか。 
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