天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)

11月20日(日)晴れ、温暖

 七森さんのブログ『あちこち神社』には熱田神宮探訪の記録が掲載されていて、興味深く読んでいたが、その最後に日割御子(ひさきみこ)神社が紹介され、その祭神が天忍穂耳尊であると記されていたので、七森さんにこの神様を祀っている神社にはほかにどのようなところがあるのかと質問のコメントを出したところ、丁寧な回答を頂いた:

天忍穂耳尊(正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命)が御祭神の神社といいますと
京都宇治の許波多神社や福岡県の英彦山神宮、
静岡県の伊豆山神宮や長野の戸隠神社日之御子社などが有名だと思います。

別名の五男神、五男三女神ですと境内社としてお祀りしている神社が多いですね。

私がお参りした神社で印象深いのは滋賀県の太郎坊宮です。
ご参考になれば幸いです。

 とにかく、七森さんの回答でこの神様をおまつりする神社が相当数あることを知った。天忍穂耳尊は、天照大神の長子で、高天原から葦原中国に下った瓊瓊杵尊の父親という神様である。いわばつなぎの役割の神様で、高天原に留まったままなので、それほどこの神をおまつりする神社は多くないと思ったのだが、そうでもないようである。自分でも少し調べてみたところ、英彦山神宮や太郎坊宮は山岳信仰との関係が深いようで、太陽の神の子=日子である天忍穂耳尊が山岳信仰とどのように結びつくのかということなど、さらに調べてみたいことは多い。が、まず天忍穂耳尊について調べてみよう。

 この神様がどのような方であるかは『古事記』と『日本書紀』では多少違った描き方がされているのだが、とりあえず、手元ですぐ見つかったのが『古事記』だけなので、『古事記』に従って書くことにする:
 イザナミノミコトを訪ねて黄泉の国に出かけたのちに、イザナキノミコトは九州に戻ってきてみそぎをする。すると、様々な神々が生まれ、最後に左の目を洗ったときに天照大神、右の眼を洗ったときに月読命、鼻を洗ったときにスサノヲノミコトが生まれる。イザナキノミコトは大変喜んで、「私は子を次々に生んで、最後に三柱の貴い子を得た」とおっしゃり、天照大神は高天原を、月読命には夜の世界を、スサノヲノミコトには海原を治めるように命じられた。
 天照大神と月読命はそれぞれ委任を受けた世界を治め始めたが、スサノヲノミコトはそのままイザナキノミコトのもとに留まって泣き叫んでいた。「その泣く状(さま)は、青山は枯山如(な)す泣き枯らし、河海は悉に泣き乾しき。」(『古事記(上)』、講談社学術文庫版、75ページ、そのはげしく泣く有様は、青々とした山が、枯れ木の山のようになるまで泣き枯らし、川や海の水は、すっかり泣き乾してしまうほどであった。) そのために災いを起こす悪神が騒ぎ出した。
 そこでイザナキノミコトがどういうわけでお前は泣きわめいているのかと尋ねられると、スサノヲは自分は亡き母のいる根の堅州国に行きたいと思って泣いているのだと答える。(スサノオは、イザナキとイザナミの間から生まれたのではなくて、イザナキがみそぎをした際に生まれたのだから、母をしたって泣き叫んでいるのは、理屈に合わない。) それでイザナキはひどく怒って、お前はこの国に住んではならないと仰せられ、ただちにスサノヲの命を追放してしまわれた。この後、イザナキは近江の多賀に鎮座された。

 そこでスサノヲノ命は天照大神に事情を説明してから、根の国に出かけようといって、天に上っていったが、その際に山や川がことごとく鳴動し、国土がすべて振動した。その様子を見て天照大神は、弟が私の国を奪おうとしてやってきたに違いないと仰せられ、武装して待ち受け、どういうわけで上ってきたのかと問いただす。スサノヲは、自分が母のところに行きたいと思って泣きわめていて、父親の怒りに触れて、これから母のところに行こうと思うが、その事情を説明にやってきたのだという。

 天照大神は弟神にどうやって自分の潔白を証明するつもりかと尋ねる。これに対してスサノヲは「それぞれ誓約(うけひ)」をして子どもを産みましょう」という。そこで天照大神は弟が見に帯びていた剣を3つに折って、水で清めた後、噛んで砕き、息を吐きだすと3柱の女神が現れた。タギリヒメの命(別名オキツシマヒメノ命)、イチキシマヒメノ命(別名サヨリビメノ命)、タキツヒメノ命である。(この三柱の女神は宗像神社の神々である。)
 スサノヲノ命は天照大神が髪と手に着けていた勾玉の玉の緒を受け取って、同じようにかみ砕いて、息を吹き出すと、マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホノミミノ命、アメノホヒノ命、アマツヒコネノ命、イクツヒコネノ命、クマノクスビノ命の五柱の男神が生まれた。
 アマテラスは、この後で生まれた5柱の男神は、私の持ち物から生まれたので、私の子である。先に生まれた3柱の女神はあなたの持ち物から生まれたので、あなたの子ですと区別された。

 こうして「うけひ」の結果、スサノヲが嘘をついていたわけではないことが分かる。(勝ち負けの判定の解釈をめぐっては諸説あるようである。) とにかく、この「うけひ」で最初に生まれた(『日本書紀』の中には2番目とする説も記載されているようである)神様がアメノオシホノミミノ命である。

 これからいろいろな出来事が起きるのだが、スサノヲノ命は葦原中国に下ってヤマタノオロチを退治したのち、根の国に去ってゆく。その後を、スサノヲの子孫で出雲を拠点とする大国主命が少彦名の命と協力して国作りに励む。しかし、葦原中国はもともと天照大神の子孫が治めるべきであるということで、高天原と出雲との交渉が始まる。そこで再びアメノオシホノミミノ命たちの出番がありそうな形勢となる。さて、どうなるかというのはまたの機会に。

 なお、『古事記』ではイザナキは近江の多賀大社に鎮座されることになっているが、『日本書紀』では淡路島に鎮座されることになっているそうで、両者が同じ内容を伝えていないことに注目してほしい。イザナキは淡路島を中心として活動した海人たちの信じた神であるという説が有力であることはすでに述べた。スサノヲについてもある地方、集団の信じていた神であることに違いなく、日本の古代神話は、そういう様々な集団の神話が組み合わされて作り上げられているようである。だとすると、天忍穂耳命はどういう存在であるのか…と言うことを考えてみたいと思っているのである。 
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