ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(7)

11月14日(月)曇り、夕方から雨が降り出す

39章までのあらすじ(全48章)
 10歳の時に義理の伯父である従男爵サー・トーマス・バートラムの屋敷=マンスフィールド・パークに引き取られたファニーは、18歳の美しい娘に成長した。彼女は子どものころから自分を庇護してくれたバートラム家の次男エドマンドに思いを寄せている。エドマンドは牧師を目指すしっかりとした青年であるが、マンスフィールド・パークの教区牧師の夫人の異父妹である都会的な美人のメアリー・クロフォードに惹かれ、結婚を申し込もうとする。メアリーはエドマンドが気に入ってはいるが、彼が牧師よりももっと高収入の職に就くことを望んでいる。他方、メアリーの兄のヘンリーは、以前ファニーの従姉であるマライアとジュリアの心をもてあそんだことがあるプレイボーイであるが、今度はファニーに興味を持ち、次第にその興味が愛情に変わって、結婚を申し込むまでになった。しかし、ファニーは性格や境遇の違いを理由に、ヘンリーのプロポーズを受け入れない。ファニーの兄のウィリアムは海軍の見習士官であったが、ヘンリーの尽力で少尉に昇進する。ファニーとヘンリーの結婚を望むサー・トーマスは、ウィリアムの昇進を機会に、2か月ほどファニーをポーツマスの実家に戻すことにする。ファニーはウィリアムとポーツマスに向かうが、そこで目にした実家の状態はマンスフィールドの上品さ、礼儀正しさ、規則正しさ、調和、平和と静けさとはまったく逆であった。

第40章
 ファニーはメアリ・クロフォードからの手紙を受け取り、ヘンリーがノーフォークに出かけていること、ロンドンによる従姉のマライア(ラッシュワース夫人)とジュリアの様子を知らされる。2人はヘンリーがファニーと結婚しようとしていることをほのめかされて、冷静さを失ったようだという。ファニーはエドマンドがまだロンドンに来ていないことを知る。(37章でエドマンドがロンドンに出かけ、そこでメアリーに求婚するつもりでいることを、ファニーは察知している。) ポーツマスの実家に戻ってきて孤独であったファニーであるが、妹のスーザンが自分の家の状態を何とかして改善しようと思っていることに気付き、彼女の気持ちに寄り添おうとするようになった。スーザンが妹の形見として使っていたナイフを末娘のベッツィ―が使おうとしていつも喧嘩していたのを、ベッツィ―にナイフを買ってやって解決する。ファニーはスーザンに読書の喜びを教え、いろいろとおしゃべりをすることで、彼女をいい方向に導こうとする。

第41章
 ファニーがポーツマスの実家に戻ってから4週間ほどたったが、エドマンドからは何の連絡もない。その一方、彼女の実家にヘンリー・クロフォードが訪ねてくる。彼はメアリーの手紙にあったように、自分の土地のあるノーフォークに行っていたのだが、ロンドンを経由してポーツマスにやってきた。メアリーとは短い時間しか会っておらず、エドマンドはロンドンに来ているらしいが、まだ会っていないという。そして散歩に出かけようというので、ファニーとスーザンは彼と一緒に外出する。散歩の途中で彼らはスーザンの父に出会うが、父親は意外に礼儀正しく振舞い、一行は海軍工廠に出かけることになる。海軍工廠でヘンリーは、自分の小作人が土地管理人のおかげで苦境に陥っているのを助けた話をする。ファニーはヘンリーにこれまでとは違って、多少の行為を抱くようになったが、彼の求愛を受け入れるつもりにはなれない。

第42章
 翌日、日曜日なのでファニーの一家が教会に行こうとしていると、またヘンリーがやってきて、一緒に教会に出かけることになった。ファニーの母は礼拝後は、城壁の上の散歩道を歩く習慣であったので、一行は散歩道を歩くことになり、ヘンリーはファニーとスーザンに同行することになった。ヘンリーはファニーの体力が衰えていることに気付き、そろそろマンスフィールドに帰ったほうがよいのではないかと思う。そしてノーフォークで一緒に暮らすことへの期待をにじませながら、わかれる。ファニーはヘンリーが彼女のために自分を変えようとしていることに気付いているが、だからこそ離れていってほしいとも思う。

第43章
 2日後、ファニーはメアリーからの手紙を受け取り、ヘンリーがロンドンに戻って、ポーツマスでの出来事をメアリーに話したことを知る。メアリーは手紙の中で、マライアが初めてロンドンで開いたパーティーが成功したこと、エドマンドにあったことも知らせ、さらに追伸で、ファニーがエヴァリンガム(ノーフォークにあるヘンリーの領地)を訪問するように勧め、さらにその前に自分の家でパーティーがあるので、ヘンリーの出発はその分遅れると書いていた。ファニーは手紙の文面から、エドマンドとメアリーの間にまだ決定的なことが起きていないことを読み取った。そしてエドマンドからの手紙が届くことを期待したりして、落ち着かない気分になった。ヘンリーの出現と、メアリーの手紙でマンスフィールド・パークのことが身近に感じられ、スーザンと話しながら、この妹もマンスフィールド・パークに連れていけないかと思うようになった。

第44章
 ファニーのもとに待ち望んでいたエドマンドからの手紙が届く。彼はロンドンからではなく、マンスフィールド・パークから手紙を発信していた。彼は結局、メアリーに求婚しないままロンドンから戻ってきたのであった。牧師としての彼の収入で上流階級の社交生活を送ることはできないのだが、メアリーは自分と仲の良い女性たちの影響で裕福な生活への思いを捨てることができないようである。ヘンリーはファニーへの思いを変えておらず、マライア(ラッシュワース夫人)と会った際には彼女はヘンリーに冷たい態度をとっていた。マライアはラッシュワース氏とうまくやっているようであるが、ラッシュワース家をそれほど訪問しているわけではない。ファニーがいないので、マンスフィールドは生気が失われている。
 ファニーはマンスフィールド・パークへの帰心を募らせる。エドマンドの手紙を受け取った数日後、彼女は伯母であるバートラム夫人から手紙を受け取った。エドマンドの兄(バートラム家の長男)であるトムが、ニューマーケットで落馬し、けがの手当てもせずに大酒を飲んだために高熱を発し、そのまま動くことができずに、重病を自覚してマンスフィールド・パークに連絡してきた。そこでエドマンドが迎えに出かけ、夫人が手紙を書いている最中に2人は戻ってきた。無理に急いで帰宅したため、その後トムは生死の境をさまよったらしい。夫人からの手紙を読みながら、「ファニーはトムに対して特別な愛情を持っているわけではないが、生まれつき心がやさしいので、絶対にトムが助かってほしいと、心から祈らずにはいられなかった。これまでトムが、(どう見ても)人の役には立たない自分勝手な人生を送ってきたことを思うと、ファニーは純粋な道徳心ゆえに、ますますトムの身を心配せずにはいられなかった。」(658ページ)

 トムはどうなるのか、エドマンドはメアリーに求婚し、その求婚は受け入れられるのか、マライアはヘンリーに冷たい態度をとり続けるのか、そしてファニーはヘンリーの求婚を受け入れるのか、それとも…というところで、この物語の紹介を終えることにする。
 この物語の背景をなしているのは「摂政時代」(the Regency)と呼ばれる時代の雰囲気への批判である。GeorgeⅢ世の治世の末期に国王が病気になり、後にGeorgeⅣ世となる王太子が摂政を務めた時代(1811-20)、謹厳実直で知られた父王とは違って、希代の放蕩者として知られた摂政のおかげで、英国社会の空気は一変、不道徳で享楽的なものとなった。穏やかな皮肉とユーモアを愛するオースティンが、道徳的な女性をヒロインとする(『高慢と偏見』ほどの玉の輿に乗るわけではないが)シンデレラ的な物語を描いたのは、このような時代の空気に対する批判の気持ちからであったと翻訳者である中野康司さんは解説している。ここではロンドンという都市の悪と、マンスフィールド・パークのような農村の「善」が対照的に描かれている。オースティンとは別の時代に生きている我々は、都市と農村の問題をもっと別の角度から見直すことが必要であるし、この小説に対して自分たちなりの新しい意味付けを行うことができるはずである。

 なお、摂政で思い出したが、ロンドンのリージェンツ・パーク、リージェント・ストリートなど「リージェント」がつくものは、たいていジョージⅣ世の計画によってつくられたものであると鈴木博之『ロンドン――地主と都市デザイン』(ちくま新書)に記されている。この本によると、もともとリージェント・ストリートを境として、ロンドンはウェスト・エンドとイースト・エンドに分れていたというが、現在では、もっと東のほうでもウェスト・エンドであると自称している。 
 
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