ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(5)

10月26日(水)晴れ

 10歳の時に母親の姉の夫であるサー・トマスの邸宅マンスフィールド・パークに引き取られたファニー・プライスは、もう1人の伯母であるノリス夫人のいじめをはじめとする環境の変化に戸惑い、苦労を重ねながらも、18歳の美しい娘に成長する。従姉であるマライアが結婚し、もう1人の従姉妹であるジュリアも新婚の姉について家を出たので、彼女はマンスフィールド・パークで唯ひとりの若い女性となり、その存在が重要なものとなった。
 マンスフィールド教区の牧師であるグラント博士の妻には2人の異父弟妹がいて、兄のヘンリー・クロフォードも妹のメアリー・クロフォード裕福な資産家であるが、ロンドンの快楽志向と堕落を体現する人物である。ファニーは彼女を子どものころからかばってくれた従兄のエドマンドを慕っているが、エドマンドはメアリーに心を奪われている。メアリーもエドマンドの才能と性格に引かれてはいるが、彼が牧師になろうとしていることが気に入らない。一方、久しぶりにマンスフィールドを訪れたヘンリーはファニーに魅力を感じて、彼女との結婚を考えるようになる。
 ファニーの兄であるウィリアムは海軍の見習い将校であるが、マンスフィールド・パークを訪れて歓迎され、ファニーが踊るところを見たいという彼の願いをサー・トーマスが覚えていて、マンスフィールド・パークで舞踏会が開かれることになる。ファニーは喜ぶ一方で、衣装や装身具のことで頭を悩ませる。兄の贈り物である琥珀の十字架を首にかけるための鎖がないのである。悩んでいると、メアリーがヘンリーからもらったというネックレスをプレゼントしてくれる。しかし、その真意がどこにあるのかわからないファニーにとっては、心配が減ったというよりも、種類が変わったということになった。(以上第26章まで)

第27章
 ファニーが自分の部屋に戻ると、エドマンドがやってきて金の鎖を買い求めたといってプレゼントしてくれる。それはファニーがほしいと思っていたようなシンプルなものであった。エドマンドは、これまでの成り行きを聞いて、メアリーからもらったネックレスも舞踏会で身につけるように言う。舞踏会の開かれる木曜日がやってきて、ファニーは十字架とネックレスの両方を身につけて客間に向かう。

第28章
 舞踏会に参加する人々が集まり始め、ファニーはヘンリー・クロフォードから最初の2回のダンスを申し込まれる。2人が結ばれることをひそかに期待しているサー・トマスはこのことを知って喜ぶ。ファニーとヘンリー・クロフォードは舞踏会で戦闘尾に立って踊ることになる。控えめなファニーは断ろうとするが、サー・トマスは許さない。
 「いよいよ舞踏会が始まった。ファニーは、少なくとも最初のダンスは、幸せを感じるというよりも、ずっしりと重い名誉だけを感じながら踊った。パートナーのクロフォード氏はすこぶる上機嫌で、ファニーにもその上機嫌を与えようとしたが、ファニーは恐ろしさが大きすぎて、とてもダンスを楽しむどころではなく、もうみんなから見られていないと思うまでは落ち着かなかった。しかし、若くて、美しくて、上品なファニーは、そのぎこちなさもかえって魅力になって、彼女を褒めない者はいなかった。」(418ページ)
 とはいうものの、ファニーとヘンリー、メアリーとエドマンドの間はどうもぎくしゃくしたままである。
 ウィリアムはポーツマスに戻らざるを得ず、ロンドンに用事ができたヘンリーと一緒に翌朝早く出発することになった。サー・トマスは出発前の朝食にヘンリーを招く。

第29章
 翌朝、ウィリアムとヘンリーは出発し、聖職叙任式に出席するためにエドマンドもマンスフィールド・パークを去った。最初、別れを悲しんだファニーであるが、次第に落ち着きを取り戻す。サー・トマスとバートラム夫人は次女のジュリアがマライアと一緒にロンドンに出かける許可を求めてきたことで、寂しく思う一方で、ファニーを家に引き取ってよかった口にする。
 一方、メアリー・クロフォードはエドマンドが聖職叙任式を済ませてもなかなか帰宅しないことにいら立ち、ファニーにエドマンドの様子を聞こうとする。が、ファニーも詳しい事情は知らないのである。

第30章
 牧師館にヘンリーが戻ってきて、ファニーに結婚を申し込むつもりだとメアリーに告げる。メアリーは驚きながらもその決心を喜び、2人はファニーの美点について話し合う。

第31章
 翌朝、マンスフィールド・パークを訪問したヘンリーは、ファニーに彼が叔父であるクロフォード提督にウィリアムを紹介し、提督から働きかけてウィリアムを少尉に昇任させることに成功したという手紙を見せる。続いて、彼はファニーに結婚のプロポーズをするが、ファニーは必死で断る。いったん、帰宅したヘンリーは、その日のマンスフィールド・パークのディナーに招待されていたので、メアリーからファニーにあてた手紙を持参して、ファニーに渡す。メアリーは自分もヘンリーとファニーとの結婚に賛成であると手紙に書き記していた。「ミス・クロフォードは、結婚に関してはあんなに気位が高くて、非常に世俗的な考え方をしているのに、自分の兄と私のような女との結婚を、本気で推し進めるとは考えない。いずれにしても、私とクロフォード氏との結婚ほど不自然なものはない」(467ページ)とファニーはいぶかしく思う。ファニーは震える手で、メアリーへの返信を認め、ヘンリーとの結婚の意志がないことを伝えようとする。

第32章
 翌日、ヘンリーはまたマンスフィールド・パークを訪問する。ファニーは、彼女の部屋を訪れたサー・トマスからヘンリーが彼女に求婚したのに、なぜその申し出をためらっているのかと質問される。ファニーは2人は性格も違うし、結婚してもお互いを幸せにできないだろうと自分の考えを述べるが、サー・トマスは納得しない。しかし、彼はファニーの言葉をヘンリーに伝える一方で、この求婚の件は内密にしておくことを約束する。彼はヘンリーの求婚が性急すぎて、ファニーが戸惑っているのだと思い、まだ2人の結婚の可能性は残っていると考えている。

第33章
 サー・トマスはファニーを呼んで、再び結婚の申し出を受諾するようにと説得を試みるが、ファニーの意志を変えることはできない。ヘンリーがかつて従姉のマライアとジュリアの心をもてあそんだ経緯を知っているファニーは、彼と結婚するつもりはないのだが、そのことは従姉たちの名誉のために口に出せない。結婚申し込みの話を知ったノリス夫人は不機嫌そうに黙り込み、バートラム夫人は勝手にはしゃぎまわる。

 全部で48章からなるこの小説の結末、誰が誰と結婚するか、あるいはしないかというところまで全部の物語を紹介するつもりはないので、たぶん、この紹介記事はあと1回で終わるはずである。バートラム家の4人兄妹のうち、3人(トム、マライア、ジュリア)が目下のところ、物語から姿を消しており(29章からはエドマンドも姿を消す)、その一方で、クロフォード兄妹の存在が大きくなってきている。そのことで、事態はいよいよファニーを中心に動き始めていることが分かる。第33章の終わりに出てくる、ファニーの2人の伯母の対照的で、それぞれに的外れな態度も面白く描かれている。以前にも紹介したが、訳者である中野康司さんがあとがきで書いているように「オースティンの小説は、あらすじだけ聞くとあまり面白くなさそうなのに、読みだすと面白くて途中でやめられない」(735ページ)といわれてきた。こうして、紹介しながら、その言葉を思い出すのである。
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