ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(4)

10月9日(日)午前中雨、午後になって降りやみ、次第に晴れ間が広がる。

これまでのあらすじ
 親が愚かな結婚をしたために、貧乏人の子沢山の家で育ったファニー・プライスは10歳の時に母の姉の夫である准男爵サー・トマス・バートラムの屋敷であるマンスフィールド・パークに引き取られる。体が弱く、内気なファニーは母のもう一人の姉であるノリス夫人のいじめや、従姉たちのからかいに会いながら、バートラム家の次男であるエドマンドの助けもあって、次第に道徳心堅固で感受性豊かな女性へと成長する。物語はファニーが18歳になったころから本格的に展開し始める。
 バートラム家の長男のトムは賭博の悪習に染まって一家の財政を悪化させ、そのためサー・トーマスはアンティグア島にある自分の農園に出かけて屋敷を留守にする。その間、新たに教区牧師となったグラント博士の義理の弟妹であるヘンリーとメアリーのクロフォード兄妹が教区に現れ、さらにトムの悪友で貴族の次男であるということ以外に取り柄がない(なんでこれが取り柄なのだ!!)イエーツ氏が加わって、芝居を上演しようという話が持ち上がる。エドマンドは反対だったが、不承不承参加させられ、ファニーも反対だが、いろいろと手伝いをさせられる。この間、バートラム家の長女マライアは婚約者がいるのに、ヘンリーとの恋愛遊戯にふけり、次女のジュリアは姉とヘンリーを争って敗れたために芝居から身を引くが、イェーツが自分に好意を寄せていることには無関心ではない。牧師を目指すエドマンドはメアリーに魅力を感じるが、メアリーはエドマンドの才気が気に入っても、彼が牧師になろうとしていることが気に入らない。
 サー・トマスが帰国して芝居の話は取りやめとなり、マンスフィールド・パークには以前の秩序が戻る。マライアの婚約者であるラッシュワース氏は大金持ちの大地主であるが、どちらかというと愚鈍で、感受性の強いマライアとは性格が合わない。それでも、ヘンリーが自分に偽りの愛で接したことに失望したマライアはラッシュワースと結婚する。結婚した2人は新婚生活を送るために保養地として知られるブライトンに向かい、(当時の一般的な風習として)ジュリアが同行する。(マライアもジュリアもサー・トマスの厳しい目を逃れて「自由」な生活を送りたかっただけで、このことが物語の後の方になって様々な波紋を起こすようになる。)

第22章
 「マライアとジュリアが旅行でいなくなったため、ファニーの存在が重要性を増すこととなった。いまはバートラム家の客間で唯ひとりの若い女性となり、家族の中で一番興味深い年齢の若い女性として、今までは三番目という控えめな位置にいたが、突然唯一の存在となったのである。それゆえ、今まで以上にみんなの視線と、思考と、配慮の対象にならないわけにはいかなかった。誰かが用を言いつけるとき以外でも、「ファニーはどこにいるの?」という言葉がたびたび聞かれるようになった。」(308ページ) 第22章はこのように書き出されている。マライアの結婚をきっかけとして、彼女とジュリアがマンスフィールド・パークを離れたことから、2人の陰に隠れていたファニーが屋敷の中で唯ひとりの結婚適齢期の女性として注目を浴びるようになる。

 マンスフィールド・パークだけでなく、牧師館でもファニーは貴重な存在となった。教区牧師であるグラント博士の義理の妹であるミス・クロフォード(メアリー)は持ち前の好奇心から(彼女が思いを寄せているエドマンドのことを詳しく聞き出したいという気持ちも手伝って)ファニーと親しく付き合おうとする。ファニーはメアリーの遠慮のない態度に当惑することがしばしばあった。2人は牧師館の散歩道を歩きながら、会話を交わすが田園生活になじんだファニーと、都会の生活にこだわりを持つメアリーの話はかみ合わない(2人がともに思いを寄せているエドマンドに送ってほしい生活のありようも違うわけである)。
 そこへ、グラント夫人とエドマンドが姿を現す。エドマンドにマンスフィールド・パークの家督を継いでほしいメアリーと、今のままでいいと思っているファニーの間で、エドマンドの呼び方をめぐりささやかな言い争いがある。金銭的な豊かさを重視するメアリーは、エドマンドが牧師になろうとしていることに反対で、別の職業に就くことを勧める。牧師館を去り際に、ファニーはグラント夫人から翌日のディナーに招待される。

第23章
 ファニーが牧師館でのディナーに招待されたことをめぐり、マンスフィールド・パークではひと騒ぎが起きるが、エドマンドとサー・トマスの配慮で、馬車に乗って牧師館に出かけることになる。到着してみると、メアリーの兄であるヘンリー・クロフォードがやってきていることがわかる。エドマンドは彼に会えたことを喜ぶが、ファニーはそんな気持ちになれない。ヘンリーは少し前にマンスフィールドで起きた芝居の上演をめぐる騒ぎや、マライアとの恋愛遊戯についてまるで反省の気持ちを持たない様子で、ファニーは怒りを感じる。エドマンドはグラント博士から聖職禄をめぐる話を聞かされ、ヘンリーはエドマンドが「湯水のように使えるほどの収入が手に入る」(341ページ)というが、もともとエドマンドが牧師になることに反対のメアリーはその話を喜ばず、エドマンドが得る聖職禄の額にも不満である。(聖職禄に限らず、登場人物の保有する財産が具体的な数字を挙げて記されている例が、オースティンの小説ではきわめて多い。)

第24章
 ヘンリーは牧師館での滞在を伸ばすことを決心しただけでなく、ファニーが自分に恋するように仕向けるつもりだとメアリーに打ち明ける。メアリーは兄の目論見にあきれて、反対するが、ヘンリーが気持ちを変えないので、意見を言い続けるのをやめる。ファニーはヘンリーの過去のふるまいを忘れてはいないし、よい思いを抱いてはいないけれども、相手が礼儀正しく振舞っている以上、相応の礼儀正しさでふるまわないわけにはいかなかった。(ファニーはエドマンドを慕い続けてきたので、ヘンリーに心を動かそうとはしなかったのである。)
 そこへ、ファニーの兄である海軍の見習い将校のウィリアムが、それまで長い間イギリスを離れて航海に出ていたのだが、帰国するという知らせが届く。この知らせを受けたサー・トマスはウィリアムをマンスフィールド・パークに招待する。
 マンスフィールド・パークに到着したウィリアムは7年ぶりに再会した妹と思い出話にふけった。マンスフィールド・パークの人々も海の幽社として経験を重ねた、まだ若いウィリアムを歓迎し、ヘンリーは彼をキツネ狩りに誘い、狩りを楽しんだウィリアムから感謝される。

第25章
 バートラム家とグラント家の交際が復活して、グラント家のディナーにバートラム家の一同が招待される。その席で、サー・トマスはヘンリーがファニーに思いを寄せているらしいと気づく。一方、ウィリアムは、ファニーが踊るところを見たいという気持ちを打ち明ける。

第26章
 ウィリアムの願いに心を動かされたサー・トマスはファニーのためにマンスフィールド・パークで舞踏会を開くことを決める。ファニーは舞踏会に何を着ていくか、兄であるウィリアムからプレゼントされた琥珀の十字架をどのように首にかけるかなど、いろいろな心配を抱えている。他方、エドマンドは間近に迫った聖職叙任式と、メアリーへの求婚をめぐり頭を悩ませている。アクセサリーのことで迷ったファニーは牧師館に相談に出かけ、途中で出会ったメアリーからネックレスをプレゼントされる。

 ヘンリーがファニーに思いを寄せる(はじめのうちはふりをしているだけなのが、だんだん本気になる)ことで、話がさらに入り組んでくる。エドマンドはメアリーを愛しており、メアリーもエドモンドに関心がないわけではないのだが、牧師の妻になるという気持ちが彼女には全くない。自分の姉であるグラント夫人が牧師の妻で、それなりに豊かな生活を送っているのに、それがあこがれの対象にならないのである。グラント夫人は頭も気立てもよい女性に描かれているが、美人ではないので、他の登場人物から軽んじられているところがある。彼女の前に教区牧師夫人であったノリス夫人が美人だけれども、意地悪で、ケチで、しかも牧師館を管理するということになるとまるで無能であったのと対照的な描かれ方になっているので、この辺りは注意を要するところである。ファニーがグラント夫人の庭造りの趣味の良さを褒めるのと、メアリーがそのあたりのことにまるで無関心だという対照は単に両者の性格だけでなく、物語のその後の展開の伏線にもなっているように思われる。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR