ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』

9月13日(火)雨

 ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』(中野康司訳、ちくま文庫)を読み終える。ジェイン・オースティン(Jane Austen, 1775-1817)はその生涯を通じて6冊の長編小説を書いた:
 『分別と多感』(Sense and Sensibility, 1811)
 『高慢と偏見』(Pride and Prejudice, 1813)
 『マンスフィールド・パーク』(Mansfield Park, 1814)
 『エマ』(Emma, 1816)
 『ノーサンガー・アビー』(Northanger Abbey, 1817)
 『説得』(Persuation, 1818)
『マンスフィールド・パーク』を読んだことで、その6冊全部を読んだことになる。翻訳者である中野さんは個人でこの6冊を翻訳するという仕事を10年間でやり遂げたのだが、最初に翻訳したのが『高慢と偏見』で、最後になったのがこの『マンスフィールド・パーク』であったとあとがきに記されている。私が一番最初に読んだのが、『高慢と偏見』で、『マンスフィールド・パーク』を読むのが一番最後になったから、その点は一致している。たしかに、オースティンの作品を読むのであれば、『高慢と偏見』から始めるのが、最も適切であり、『分別と多感』、『エマ』あるいは『説得』を読んで、オースティンの作品に愛着を感じるようになったら、残る2作品を読むというのがいいような気がする。

 オースティンの6編の小説はすべて、地方(それもイングランドの南部か中部)の田園地帯の地主か牧師の家庭の娘の結婚話が題材となっており、その相手も地主か牧師か軍人であり(オースティンは牧師の娘であり、彼女の兄弟たちも牧師や軍人になった)、田園生活の日常が皮肉とユーモアを交えながら描かれ、ゆったりとした調子で物語が進行していくかと思うと、突如急展開したりする。しかも、それぞれの作品のヒロインたちの性格が見事に描き分けられているということに示されるような人間観察の見事さが特徴的である。 結婚話と書いたが、それに財産の相続の問題が絡むことが多いことも彼女の小説の性格を考えるうえで重要なことではないかと思っている。

 「訳者あとがき」によると「オースティンの小説はあらすじだけ聞くとあまり面白くなさそうなのに、読みだすと面白くて途中でやめられないとよく言われる」(735ページ)そうであるが、私もこの本を読みながら、物語が進めば進むほど先が知りたくなって、とうとう午前3時ごろまで読み耽ったりして、ブログ更新のペースを狂わせたりした。とにかく、長い小説なので、あらすじをまとめていくことから始めたい(あ、すでにオースティンの小説を読みたいと思われている方は、私の以下の文章は読まずに、本屋に行って、オースティンの本を探して、読み始めてください)。

 ケンブリッジシャーのウォード家には美人の3人姉妹がいたが、そのうちの次女マライアがノーサンプトンシャーのマンスフィールド・パークという邸宅の当主である准男爵サー・トマス・バートラムと結婚するという玉の輿に乗る。彼女の姉は、サー・トマスの友人である貧乏な牧師と結婚したが、サー・トマスの援助もあり、幸福な結婚生活を送ることができた。ところが三女のフランシスは教育も財産もなく、ろくな親戚もいないプライス海軍中尉と結婚し、姉2人とは絶縁してしまう。しかし、子だくさんで収入が少ないという家庭の状態に困り果て、姉たちに援助を乞う。サー・トマスはノリス夫人の助言もあって、プライス家から女の子を1人引き取って養育することを決心する。そうしてプライス家の長女である10歳のフランシス(ファニー)がバートラム家に引き取られる。このファニーが物語の主人公である。

 ファニーは病弱なうえに内気で、新しい環境になじむことができない。伯母は穏やかな性格の持ち主だが、ものぐさで子どもたちには無関心である。伯父は(実は優しい心の持ち主であることが分かるが)いかめしい態度を持つ厳格な家長で、子どもの教育に熱心だが、実は見落としている部分がある。バートラム家には長男のトム、次男のエドマンド、長女のマライア、次女のジュリアの4人の子どもがいたが、その中でエドマンドがファニーの境遇に同情し、彼女のためにいろいろと配慮したことで、彼女も次第にこの家になじむようになる。

 そして年月が経って、ファニーはだんだん元気になり、美しく成長していった。バートラム家の兄妹たちの中で、トムはのんきな性格で金遣いが荒く、父親にとって心配の種であったが、エドマンドはオックスフォード大学に進学し、牧師を目指し、マライアとジュリアは美貌に加えて才芸を身に着けた魅力的な女性になっていた。

 ファニーが15歳の時に、伯母の夫であるノリス牧師がなくなった。ノリス牧師はマンスフィールド教区の牧師であり、この教区の聖職禄は地主であるバートラム家が持っていたのだが、トムの浪費癖のために借金が増えて、聖職禄を他人に売却せざるを得なくなる。バートラム家は別にもう1つの聖職禄を持っていたから、エドマンドはその教区の牧師になればよいのだが、彼の収入は減ることになる。サー・トマスはこのことでトムに訓戒を与えるが、トムが気に留めた様子はない。

 ノリス牧師に代わって新たな教区牧師として45歳のグラント博士が15歳若い妻とともに到着した。夫婦ともに友好的・社交的な人柄で教区民たちから歓迎されたが、博士には食道楽という欠点があった。
 それから1年もたたないうちにサー・トマスがバートラム家の財政を立て直すためにアンティグア島に所有するサトウキビ園に自ら赴くことに決め、悪友たちと切り離すためにトムも同行させることにした。
 留守中、バートラム家ではエドマンドが父親の代わりを立派に務め、マライアとジュリアは社交界で活躍する。ものぐさなバートラム夫人に代わって、ノリス夫人が2人の付き添い役を務め、家にとどまっているバートラム夫人の相手はファニーが務めるようになった。父親よりも早く、アンティグアからトムが帰国する。

 バートラム家の姪たちを偏愛する世話好きなノリス夫人はこの地方で一番の大地主であるが、それ以外にはあまりとりえのないラッシュワースがマライアを見初めたことに気付き、2人の結婚のために奔走する。
 ファニーが18歳になって間もなく、村の社交界に2人の新顔が登場する。グラント夫人の異父弟妹であるヘンリー・クロフォードとメアリー・クロフォードである。グラント夫人はヘンリーをジュリアと、メアリーをトムと結婚させようと考えている。ヘンリーは美男子ではないが魅力的な人物で、なかなかのプレイボーイであるらしい。メアリーは才気に富んだ美人である。
 バートラム家の4人兄弟と、クロフォード兄弟はすぐに親しくなる。ただ、メアリーにとって、兄妹とともに、バートラム家で生活しているファニーが気にかかる存在らしい。
 トムが邸を離れた後、ラッシュワースがマンスフィールド・パークで開かれたディナー・パーティーに出席し、みんなでラッシュワースの屋敷であるサザトン・コートを訪問することが決まる。メアリーがハープを演奏することを知ったエドマンド(とファニー)は彼女の演奏を聞きたがる。エドマンドはそれ以外のことでもメアリーに惹かれているようだが、彼女がときどき礼儀に外れるようなことを言うのが気に入らない様子である。

 サザトン・コートをノリス夫人、バートラム家の3人、ファニー、クロフォード兄妹が訪問する。マライアが婚約者であるラッシュワースをほったらかしにして、ヘンリーと散歩したり、エドマンドとメアリーが親しげに話し合ったり、この訪問中に垣間見られる彼らの人間関係は波乱含みである。(つづく)
 
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