ダンテ・アリギエリ『神曲 煉獄篇』(33-1)

8月17日(水)晴れたり曇ったり

 地球の南半球にそびえる煉獄山の頂にある地上楽園に到達したダンテは、天上から降臨してきたベアトリーチェに会う。賢明・中庸・剛毅・正義の4つの枢要徳と慈愛・希望・信仰の3つの対神徳を表している7人の貴婦人たちに囲まれたベアトリーチェは、彼女とともに天から降りてきた戦車(教会を象徴する)をめぐっておきる出来事をしっかり記憶して、地上の人々に伝えるように言い渡す。ダンテは、彼の時代のキリスト教会の世俗化・腐敗堕落と、そのために生じた教皇のアヴィニョン捕囚に代表される教会の政治的な危機を示す幻影を見た。

「神よ、異国の民が来たりて」、貴婦人達は
今は三人の組、次は四人の組と、交代しながら麗しい
「詩篇」の朗誦をはじめた、しかも涙を流しながら。

ベアトリーチェはため息をついて悲しみながら、
悲痛な表情で彼女たちの歌を聴いていた、
十字架の下で泣き崩れたマリアと変わらぬ姿で。
(486ページ) 「神よ、異国の民があなたの嗣業を襲い/あなたの聖なる神殿を汚し/エルサレムをがれきの山としました」(「詩篇」78.1)と原さんは487ページの傍注に記しているが、これまでも何度か書いてきたように、ダンテがこの作品を書く際に使っているのはウルガタ版(正ヒエロニムスによるラテン語訳)であって、「新共同訳」では79.1になる。ここでは教会の腐敗ととくにフランス王によるアヴィニョン捕囚が非難されている。
 教会は地上におけるキリストの神秘的な肉体とされ、それが迫害を受けているために、「ベアトリーチェは…十字架の下で泣き崩れたマリアと」とキリスト受難を暗示する表現がされているのである。

 ベアトリーチェは7人の貴婦人たちに先に行くように指示し、彼女とともに残ることになったのはダンテと、地上楽園で彼が最初に会った貴婦人、そして煉獄で罪を清めて天国へと向かうスタティウスの4人だけとなった。

こうして彼女は歩いて行った。私が思うには
地面に十歩目を置く前だったが、
その時にその眼差しが私の目を貫いた。

そして涼やかな表情で「もっと急ぎなさい。
――私に言った――そう、あなたに話しかけた時に、
はっきりと私の話を聞ける場所にいられるように」。

そうすべきであったので、彼女に並ぶと、
私におっしゃった。「同胞(はらから)よ、なぜあなたは勇気を出して
私と一緒に歩いている今、私にたずねようとしないのか」。
(487-488ページ) ベアトリーチェはダンテに「同胞よ」と呼びかけることで、2人が今や対等の関係で話してもよいことを示す。

 しかし、ダンテはなかなか自分の疑問を口に出すことができない。ベアトリーチェは、ペテロが立ち上げた教会は変り果て、もはやかつての姿ではないといいながら、神の復讐は必ず成し遂げられるであろうということを謎めいた言葉で口にする。そして彼女の謎めいた言葉を
あなたは記憶に記しなさい。そして私が話しているそのままに、
死へと絶え間なく向かう生命を生きる
生者たちにこれらの言葉を告げなさい。
(490-491ページ) そしてとくに善悪の知恵の木についてありのままを伝えるようにという。知恵の木は神のみに属するものであった(=神の正義は他の存在から何らの干渉も受けてはならない)のに、
最初の魂はこれをかじってしまったために、
五千年以上にわたり、罰に服しながらただ願い続けて、
食べたことへの罰を引き受けられた方を待ち望みました。
(492ページ) この木の普通の木と違う異様な姿をしっかりと記憶すべきであるという。そして、ベアトリーチェの預言を地上の人々に伝えよという。

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR