ヴァン・ルーン『人間の歴史の物語』(3)

4月15日(月)晴れ

 エジプトに続いて、ルーンはメソポタミアの物語を語る。ユーフラテスとチグリスの2つの川にはさまれた肥沃な土地であるメソポタミアには多くの民族が侵入し、それらの民族の強豪と闘争の中で重要な文明が形成されていったことが説かれている。メソポタミアが古代世界の「るつぼ」(Melting Pot)であったことが強調されている。この時代のアメリカでは、アメリカが民族のるつぼであると盛んに言われていたことを思い出す。ルーンはメソポタミアと彼の同時代のアメリカ社会との類似性を感じていたのであろうか。

 エジプトについての章と同じように、彼は楔形文字の解読の過程や楔形文字の構造について語られているが、これらについては日本人によって書かれた書物を読んだ方が分かりやすいはずである。楔形文字では同じ文字がいろいろに読めるだけでなく意味をもつということなのだが、漢字とその音読み(それも呉音、漢音、場合によっては現代中国語風に読むこともある)と訓読みを使い慣れ、さらに仮名を交えて表記している日本人には不思議でもなんでもないので、説明の仕方が違っていいのである。

 さて、ルーンはThe story of Mesopotamia is one of endless warfare and conquest. (メソポタミアの物語はいつまでも繰り返される戦争と征服の物語である)としてシュメール人から始まって、アッカド人、アモリ人、ヒッタイト人による破壊、アッシリア人、カルデア人(新バビロニア)、ペルシア人、アレクサンドロス大王とギリシア人、ローマ人とこの地を支配した人々の歴史を記していく。注目すべき指摘は2つ、バビロンの支配者であったハンムラビ王について、

who gave his people a set of laws which made the Babylonian state the best administered empire of the ancient world(彼はその人民にバビロニア国家を古代世界でもっともよく治められた帝国とした法典を与えた)としてその法典の意義を強調していること、またカルデア(新バビロニア)のバビロンの王で旧約聖書では否定的に描かれている部分もあるネブカドネザルについて、彼が科学を振興したことを取り上げて

Nebuchadnezzar ... encouraged the study of science, and our modern knowledge of astronomy and mathematics is all based upon certain first principles which were discovered by the Chaldeans. (ネブカドネザルは科学の研究を奨励し、我々の天文学や数学についての現代の知識はすべてカルデア人によって発見された一定の第一原理に基づいているのである。)とこの時代の科学研究が現代の我々の科学研究につながることを示唆している(古代の知識の体系を「科学」と言い切ってしまうことの当否も含めて、過大評価ではないかと思う)。

 当時の考古学の水準(例えばヒッタイト人についての研究はこの後に大きく発展することになった)を反映して不十分、不正確な個所も少なくないし、まだまだ旧約聖書に引きずられているところもあるのだが、法律や科学が人々の暮らしによい影響をもつことを強調する啓蒙主義的、合理的な姿勢が全体の基調となっていることは以上、紹介してきたところから明らかであろう。

 
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