バター

7月27日(水)曇り NHK「ラジオ英会話」は月末の”Special Week"に入り、O.Henryの短編小説”Witches' Loaves" (魔女のパン)をラジオドラマにしたものを放送している。今日放送されたのは、第3回で、あと1回で物語は完結する。これまでの話の展開を要約すると:
 小さなベーカリーを経営しているミス・マーサは自分の店に週2・3度やってくる、質素だが清潔な服装をした、強いドイツ語なまりで話す中年の男性が気になり始める。
He always bought two loaves of stale bread.Fresh bread was five cents a loaf. Stale ones were two for five. Never did he call for anything but stale bread. (彼はいつも古いパンを2本買った。出来立てのパンは1本5セント。古いパンは2本5セントだった。彼が古いパン以外を注文することは決してなかった。)
 ある時、彼の指に赤茶色の汚れを見つけたミス・マーサは彼が貧乏な芸術家であるに違いないと思うようになる。そして、毎日古パンで飢えを満たしているに違いない彼を助けようと考え始める。ある日、客がいつものように来店し、古いパンを注文した時に、店の表を消防車が走り抜け、客がそれに気を取られているうちに、彼女は突然の思い付きを実行に移す。
On the bottom shelf behind the counter was a pound of fresh butter that the dairy man had left ten minutes before. With a bread knife Miss Martha made a deep slash in each of the stale loaves, inserted a generous quantitiy of butter, and pressed the loaves tight again.
(カウンターの影の最下段の棚には、その10分前位に牛乳配達業者が老いて言った新鮮なバターが1ポンドあった。ミス・マーサはブレッドナイフで古いパンの両方に深い切り目を作り、バターをたっぷりと塗り込み、パンを再びピタリと閉じ合わせた。)
 そして、そのパンを客に渡す…。

 物語はあと1回で完結するが、どんな結末が待っているかは番組を聴いてください。パンにはバターがつきものだということについて、私たち(少なくとも私)は欧米人ほど敏感ではないようである。中津燎子さんの『なんで英語やるの?』に、東北に地方都市に民間の社交親善団体の企画した日米交換留学生制度でやってきた女子学生の話が出てくる。
 例によって、ひと騒ぎがあった後、女子学生は宮古市の有力者から招待を受けて、しばらくその家に滞在することになる。そこでの彼女の感想は「まいにちがスリル満点よ!」(106ページ)ということであった。
 「第一に朝の食事にバタが先に出てくるか、トーストが先に出てくるか、と考えることから私の一日は開始するんだから」
 「トーストとバタ? 一緒に出てこないの?」
 「お手伝いさん決して一緒に持って来ないのよ。きっと自分でトーストなんか食べないからなのね、バタをずっと後でもって来るの。でもトーストが冷えちゃうと、バタがつかないもの」
 「言えばいいのに・・・」
 「めんどくさいから二つ折りにして、バタサンドを作って口の中に入れるのよ。案外おいしいわ。(以下略)」(中津、106ページ)

 今から200年以上のイングランドの地方の地主の生活を描いたオースティンの『ノーサンガー・アビー』の、題名になっている邸宅の主人であるティルニー将軍は「バターが溶けているのに怒らない将軍を見るのも初めてだった」(オースティン、326ページ)と描かれていて、これだといつも、食事の際にバターが溶けていると機嫌が悪いらしい。食事の際のバターをめぐっては個人の好みの問題も手伝って、簡単に結論は降せそうもない。

 わかっているのは、元に戻って、バターはなくてもパンは食べられるが、やはりあった方がいいということである。アンデルセンの『絵のない絵本』に登場する小さな女の子に説明してもらおうか。彼女は4歳になるかならないくらいの年齢なのだが、ほかの兄弟同様にVaterunser (主の祈り)を唱えることができる。今夜も彼女は小さなベッドの、きれいな白いシーツの上に横になって、両手を組んで祈りを唱えた。
„Aber was ist das?" fragte die Mutter mitten im Gebet. „Als du sagtest: gib uns unser täglich Brot, da sagtest noch etwas anderes. Was war das? Du sollst es mir sagen!" Die Kleine schwieg und sah die Mutter verlegen an. „Was hast du noch weiter gesagt, als gib uns unser täglich Brot?" ”Sei nicht bös, liebe Mutti!" antwortete die Kleine; ich betete: und auch vidl Butter drauf."
(「おや、それなあに?」とお母さんが、お祈りの最中に、たずねました。「あんたは、われらに日々の糧を与え給え、とお祈りした時、まだ何か付け足して言いましたね。何なの? それをわたしに言ってちょうだい!」 小さい女の子は黙って、困ったようにお母さんの顔を見守っていました。「われらに日々の糧を与え給えの他に何を言ったの?」 「おかあちゃま、怒らないでね!」 小さな女の子は答えました。「あたいこうお祈りしたの。バタもたくさんつけてって。」)(原文はデンマーク語であるが、永野藤生編集の独和対訳本(大学書林)を使用。)

 パンとバターの関係は多様だが、パンにバターが加わる方がいいことに変わりはないようである。
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