ももいろそらを

4月13日(土)晴れ後曇り

 シネマ・ジャックで小林啓一監督の『ももいろそらを』を見る。予期していた以上に面白かった。意外と言えば意外であるが、いい方の意外である。

 東京近郊(らしい)、女子高生の川島いづみは大金の入った財布を拾う。交番に届けようとするが、警官は不在である。財布の中身から突き止めた持ち主の家に出かけるが、表札の人物に記憶があり、躊躇してしまう。彼女は毎日新聞記事を採点する習慣があり、表札の人物は天下りをした高級官僚であったのである。そこから彼女の屈折した行動が始まる。

 寝坊して学校をずる休みして、釣り堀に出かけると顔見知りの印刷屋のおやじに出逢い、財布を拾ったことを打ち明ける。自分の店の経営に行き詰っているというおやじに30万円あった財布の中身のうち20万円を貸す。いづみは友達の蓮実と薫に事情を話すと、2人は財布を落とした佐藤コウキ少年(彼女たちよりも1年学年が上)への興味があって家に返しに出かけようということになる。20万円を抜き取って貸しているいづみは阻止しようとするが、佐藤に夢中になっている蓮実は聞こうとしない。そして財布を返した彼女たちは中身の1割として3万円を渡される。中身が10万円と思っている蓮実と薫は多すぎると思って受け取ろうとしないが、いづみがさっさと受け取ってしまう。

 いづみのアルバイト先に佐藤がやってきて問い詰める。佐藤は父親のへそくりから30万を抜き取って入院中の自分の友達を励ます新聞の編集のために高級カメラを買おうとしていたのである。居直ったいづみに、佐藤は自分の新聞の編集を手伝うように提案する。佐藤はいづみの裏をかいて蓮実を新聞の編集長にする。いづみがカメラをもって取材し、書いた記事をチャットのアルバイトでパソコン操作に慣れている薫が入力する。佐藤は原稿を没にするが、データが欲しいという。

 佐藤を天下り役人の息子と言い切り、世の中の出来事に批判的な見方をするいづみ。ちょっと古風な義理人情を振りかざすところがあるが、本心はどうなのだろうか。背が高く、地元の一流高校に通う佐藤にあこがれる恋愛体質の蓮実。可憐な見かけながら根はしっかりしていて、家族の事情を胸に畳んでアルバイトに励む薫。3人は仲が良いようで対立したり、反目したりする。3人に言わない秘密を抱えているらしい佐藤は3人を適当に利用しているようにも見える。新聞の編集という経験を通じて彼らは少しずつ変わりはじめているのかもしれない。

 善いこと、人のためになることをすることに何かためらいや、恥ずかしさを感じることも青年期の特徴のひとつかであろう。いづみも、佐藤も何となく自分がしようとすることにまっすぐに向き合えないところがある。物語の展開は現実離れがしているのだが、青年の心理に対する迫り方にはリアリティーを感じる。おそらくはそのことに関連して、登場人物に焦点を当てて、背景となる風景や建物をぼかす白黒の画面と、登場人物、特にいづみの衝動的とも受け取れるような行動が強い印象を残す。そうした映像の構成と演出はジャン=リュック・ゴダールの映画と、その中でのアンナ・カリーナの演技を思い出させるほどである。
 
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