雨が降る

6月7日(火)曇り、昼過ぎから雨が降りだした。

 梅雨の季節に入った。NHK「ラジオ英会話」のテキストにColin Joyceという人が”Japanglopilia"というエッセーを連載していて、その昨年12月号に掲載されていた”The Japanese Myths"という文章の中に私が考えているのと同じようなことが書かれていた。
  Japan has four seasons. Almost every foreigner who goes to Japan gets told this and they don't know how to respond. I initially thought it must be the start of a joke, but no punchline came. (My own delusion was that all countries have four seasons; it never occurred to me that some places have little variation throughout the year.) But many Japaneses apparently think Japan is the only place with four seasons, when in fact it is very common. I wouldn't even say that when I lived in Japan I found the seasons to be clearly defined. In Tokyo there is not as much green space as other places I have lived so I didn't see the changes in nature. It's hot in summer but otherwise the temperature is fairly even. So: Like many other countries, Japan has four seasons.
(日本には四季がある。日本に出かけるほとんどすべての外国人がこう言われ、彼らはどう答えていいかわからない。私ははじめ、これはてっきり冗談のはじまりにちがいないと考えたのだが、オチもなにも続かなかった。(私自身の勘違いはすべての国には四季があるということで;どこかの場所が1年を通じてほとんど変化しないというようなことは私には起こらなかった。) しかし多くの日本人は明らかに日本は四季を持つ唯一の場所だと考えている。実際には、四季があるというのはきわめてありふれたことなのである。わたしは日本に住んでいたときに、季節にはっきりとした区別があることが分かったとさえいうつもりはない。東京には私が住んでいたほかの場所に比べて緑の空間が多くないこともあって、私は自然の変化というのが分からなかった。夏は暑かったが、ほかの点では気温はかなり平均していた。それで:他の多くの国々と同様、日本には四季がある。)

   Japan has four seasons. I know that I wrote this above but I find it strange for another reason: Japan has a rainy season (tsuyu). Japanese people laugh at me when I mention this, saying that it’s just "part of summer".I would say that the weather is significantly (even dramatically) different from the period that comes after, and it lasts for several weeks so it's a season of sorts. So: Japan has four main seasons.
(日本には四季がある。と、私は上の方で書いたが、もう一つの理由でそれが奇妙なことだと思う:日本には梅雨という季節がある。日本の人々は私がこう言うと笑って、「それは夏の一部」にすぎませんよという。わたしはこの時期の天候がそれ以前の時期、それ以後の時期とは相当に(いや劇的といっていいほどに)違うこと、この季節が数週間続くので、それは季節といってよいのだと言いたい。それで:日本には4つの主要な季節がある。)

 Joyceさんは前半で、日本以外の多くの場所でも四季はある(そのありようは違うかもしれないが、例えば、英語でもspring, summer, autumn or fall, winterという)、後半では、日本では春と夏のあいだに「梅雨」という独立した季節とみなしていいような時期があるではないかと述べて、「日本にだけ四季がある」という大方の日本人の認識に再考の余地があることを指摘している。どうも外国人の意見を引き合いに出して、自分の意見を述べるのは気が引けるのだが、これらの点については私も同感である。

 さて、「雨が降る」という言い方にも、言語によって多様性がある。6月2日に放送されたNHK「ラジオ英会話」の”Grammar for Better Conversation"(もっと話したくなる英会話文法)は”it”の多様性について取り上げていて興味深かった。「性別が分からないとき」、「相手が誰だか認識できないとき」、「ものの原因を表す」、「漠然としたit」、「時間、距離を表す」、「意味が希薄なのにドラマチックな効果が出せる」というそれぞれの用例が紹介されたのだが、とくに面白かったのは、
「漠然としたitは天候を表す際にも使われます。例えば、雨が降っていることを知らせるのに、Rain is raining. やRain is pouring. といえば、歌や詩のような印象があります。そこでここでも、
It's raining / pouring. (降っています/どしゃぶりです)
のように、漠然としたitが使われます」という説明であった。

 英語で「雨が降る」は”rain"だが、形式的に主語のitをつけて”It rains."というと習った時に、先生がどのような教え方をしたのかは記憶にない。私は比較的優秀な生徒であったから、そのまま覚えてしまったのだろうと思うが、ほかの言語を勉強しはじめると、「雨が降る」というのにはいろいろな言い方があることを知った。以前にも書いたが、大学時代にロシア語を教えていただいた小野理子先生はもともと中国語中国文学を専攻された方で、中国語では「下雨」という言い方をするが、これは「天下雨」の「天」が省略された言い方だといわれた。この説明が正しいかどうかは知らない。ただ、日常生活のレベルでは、なぜ雨が降るのかいちいち考えていても仕方がないことも確かで、したがって、大事なこと以外は省略されるというのはありそうなことである。

 英語の3人称の代名詞はhe, she, itの3つであるが、フランス語はil, elleの2つであり、「雨が降る」という場合に”il pleut"という言い方をする。有名なヴェルレーヌの詩を引き合いに出すと、
 Il pleure dans mon coeur
 Comme il pleut sur la ville.
 Quelle est cette langueur
 Qui pénètre mon coeur?
 (町に雨が降るように
 私の心にも雨が降る。
 私の心に沁み込んでくる
 この物憂さは何だろう?)
ということになる――などと、いい調子になっていたら、最初の行でpleureと接続法現在が使われていることに気付いて、なるほど、この詩をいろいろな人がいろいろに訳しているのは、そういうことであったかと改めて得心した次第である。もっと正確な訳をするとどうなるのか、考えのある方がいらっしゃったら、教えていただきたい。

 フランス語と同じく、スペイン語やイタリア語も中性という性はなく、男性と女性のみである。これらの言語のもとになっているラテン語には中性があるのに、そこから派生した諸言語にはないというのはどういうことであろうか。その一方で、これらの言語に共通して「雨が降る」という動詞は非人称動詞(3人称以外の人称形を持たない動詞)である。
 この点をめぐり、松平千秋・国原吉之助『新ラテン文法』に、「これらの動詞は本来他動詞で、主語に超人的な行為者が考えられていた。Jupiter tonat. 「ユピテルが雷をならす」。事実Jove fulgente 「ユピテルが稲妻を光らせているとき」という表現がその起源を暗示している」(188ページ)という記述を見つけた。
 ラテン語(とイタリア語)の場合、動詞の形で主語が分かる場合には主語を省略していいので、「雨が降る」は”pluit"だけでよい。イタリア語の場合には”piove"ということになる。

 そういえば、昔、場末の映画館で映画を見ていると、何度も上映されてプリントが痛んでいるせいか、画面に何本も白い縦の筋が現われることがあって、それを「雨が降る」と言っていた。これを外国語でいう場合には、相応の説明をつけて翻訳すべきであろう。

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こんにちは。

もし、「西洋の四季の感じ方と日本のそれは違う」という話なのであれば、もう少し丁寧に事例を出して解説しないといけないでしょうが、私もあまり明確にこうだと説明出来る気がしないですね。

むしろ、ここで問題になっているのは「海外では冬から夏への、あるいはその逆の移り変わりが急激」などというかなり乱暴なステレオタイプが流布してしまっていて、それが海外の方とのコミュニケーションの時に露になってしまうという例かなと感じました。そういう点では、まずは自分たちの感じ方として日本の四季はどうか、というところを、殊更に海外との違いを意識しないで語り切る方が良いのかも知れませんね。

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