ダンテ・アリギエリ『神曲 煉獄篇』(29-2)

5月29日(日)晴れ

 ローマ時代の詩人ウェルギリウスの霊に導かれて、煉獄山の7つの環道を登り切って、地上楽園に到達したダンテは、神をたたえる歌を歌う美しい貴婦人に出会う。彼女の説明によると、地上楽園は原初の人間がそこで暮らし、罪を犯したために追放された場所であるという。人間がその能力だけで到達できる限界がこの地上楽園であり、それは天国の先駆けにすぎない。ダンテの前に、強い光が出現し、神の世界が彼に開かれることを予示する。
 その後、ついに空から神的な何かが降りてきて、神を賛美する「ホサナ」の声とともに、精霊からの7つの贈り物(賢明、知性、忠告、剛毅、学問、慈愛、神への畏れ)を示す7つの燭台の光をダンテは見た。

私は驚きでいっぱいになって
善良なるウェルギリウスを振り返ると、
彼も私に劣らぬ驚愕の視線で答えた。
(431ページ) 善良ではあっても、異教徒であるウェルギリウスには手の届かない世界が出現している。「そして彼の驚愕の中には、弟子との別れを予感し、また、真理を知ることのできない悲しみが隠されているはずだ」(609ページ)と翻訳者である原さんは解説で補っている。

 貴婦人はダンテに、先頭の光だけでなく、その後に続くものに注意を向けるように促す。光の後を行列して歩く人々の姿をダンテは見る。彼らは純白の衣服を身に着けていた。行列は、ダンテがその流れに沿って歩いて来た小川の向う側を歩んでいたのだが、
水が左側の脇で燃え上がっていた。
それを私が覗き込めば、さながら鏡のように、
私の左半身の姿を反射していた。
(432ページ) 水に映し出されているダンテの左半身は、彼の罪の最後の痕跡である。

 ダンテは行列をもっとよく見ようとする。
・・・
二十四人の長老が二人ずつ組になり、
頭に白百合の花冠を載せて近づいてきた。
(434ページ) 24人の長老とは、新約聖書「ヨハネの黙示録」4.4に「また、玉座の周りに24の座があって、それらの座の上には白い衣を着て、頭に金の冠をかぶった24人の長老が座っていた」(新共同訳)とあるのに基づいている。24という数字は旧約聖書全24巻を指している。彼らはキリストを身ごもったマリアをたたえる歌を歌いながら進んでいく。

 さらに、その後から
空では星座が聖座を追ってくるように、
彼らに続いて四頭の霊獣がやって来た。
それぞれが緑の冠を被っていた。
(同上) 4頭の霊獣は新約聖書の4福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)を表す。霊獣たちの姿は旧約聖書の『エゼキエル書』と新約聖書の『ヨハネの黙示録』に描かれた通りであった。

 こうしてダンテの前に神の世界が姿を現し始める。聖書の世界が具体的なイメージによって表現されていることが注目される。この描写はまだまだ続き、その描写の中でダンテの世界観、キリスト教観が語られてゆくことになる。
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