風の波紋

3月23日(水)晴れ後曇り

 渋谷ユーロスペースで『風の波紋』を見る。

 『阿賀に生きる』で撮影監督を務めた小林茂が、同じく新潟県内ではあるが、今度は山里に住む人々の生活を季節の移り変わりの中で見つめたドキュメンタリー映画である。

 越後妻有(えちごつまり)の村に都会から移り住んで、茅葺き屋根の古民家を修復し、打ち捨てられていた田んぼも再び耕しながら、生活している木暮さん夫婦や、草木染職人の松本さんの一家の暮らしぶりを追う。基からこの土地に住んでいる人たちももちろん登場する。一方で山菜やキノコなど、野山の豊かな恵みの恩恵を受け、他方で冬の積雪のような厳しい自然に直面する。映画は5年間の歳月をかけて、集落の人々の生活に密着しながら製作されたという。手作り感と、熟成された味わいが感じられる映画を作ろうとしたようである。歌や演劇的なパフォーマンスを挟んで、5年間の出来事を拾い上げているので、やや雑然とした印象はあるが、現実というのは雑然としたものである。

 私は北信越で20年近く生活した経験があるから、何度か豪雪を経験しているし、自分たちの住む地方都市よりもはるかにすごい豪雪を経験する地域があることも聞いている。とはいうものの、映画の中で何度となく描かれる積雪には圧倒される。4メートルを超える積雪で、屋根に重く降り積もった雪を取り除くのは並大抵の作業ではない。それでも、休み休み、ゆっくりとしかし確実に作業を進めていく。いやになるほど降り積もった雪であるが、そのうち全部がとけてしまう。そして、また冬が来て大雪が積もる。
 映画の初めの方で山羊の子が生まれる場面があるが、その後育っていったそのうちの1頭が屠殺されて料理としてふるまわれる場面もある。その山羊の子が飼い主になついていたことが笑いながら語られる。
 時間は何事もないように過ぎていくように見えて、やはり何事かはあるのである。

 映画の後半で、都会から移り住んで20年間民宿を経営しているという人の、もともとこの土地に住んで生活してきた人にはかなわないという感想が述べられる。集落から去っていって、墓参りにだけ訪れるという人の声も聞かれる。映画はいろいろな人たちの姿を描きだす。地震で倒壊しかけた木暮さんの家が多くの人たちの協力で建てなおされる。その祝賀のための集まりの様子が面白い。民謡を歌う人がいるかと思うと、木暮さんは、昔の「歌声喫茶」でよく歌われた「仕事の歌」を歌う。上手な人もいるし、下手な人もいるが、盛大に拍手が送られる。
 家屋の修復にせよ、雪掘りにせよ、料理にせよ、田植えや稲刈りにせよ、名人クラスがいるかと思うと、全くの素人もいる。それぞれがお互いを大事にして、協力し合って生活しようとする。特に子どもがかわいがられる。都会の生活、企業の中の生活だと、見落とされたり、大事にされなかったりする個性が、ここでは生き生きと発揮されているように思える。

 とはいうものの、過疎の現実がある。映画に登場する人たちのほぼ全員が、山里で暮らす人がなくならないことを願っている。それと、自分がそこで暮らそうという決心とが必ずしも結びつかないのが問題であり、映画を通しての問いかけとなっている。

 昨日はこの映画を見てから研究会に出席、さらに二次会で夜遅くまで過ごしたので、更新が遅れてしまった。悪しからず、ご了承ください。
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