アガサ・クリスティ『七つのダイヤル』(5)

3月30日(土)曇り、肌寒い。

 このところ、腰痛に苦しめられていたのが、本日は少しよくなった。本日は、終日屋内で過ごす。

 さて、『七つのダイヤル』について。前回は、バンドルが女同士で話していると、ジミーがやってきて彼女を連れだすところまで書いた。

 ジミーとバンドル、それにビルの3人がこれからどうするかを相談する。エベルハルトのもっている重要書類を誰かが狙っているらしい。この書類に関する責任者である航空相は翌日出発する予定なので、何か事件が起きるとするとこの夜しか考えられない。そこでジミーとビルが交代で監視を続けることにする。まずジミーがその任に当たり、寝ずの番を続ける。彼はこの仕事に備えて拳銃を用意している。何かが起きかけている。そして2時。

 一方監視役から外されたものの大人しく引き下がったバンドルは、そうしたのは見せかけだけで、夜屋敷の壁に絡まっている蔦を伝って庭に下りるが、バトル警視に見つかって部屋に戻るように言われる。そして2時。バンドルはビルの部屋に出かけたつもりで間違えて、ラッキー伯爵夫人の部屋に入るが、彼女は部屋にいない。格闘している声が聞こえ、2発の銃声が響く。

 アベイに出かけないことになっていたロレインは、夜中に起きだして、屋敷に近づく。屋敷から投げ出された書類を拾い、格闘する声が聞こえたので慌てて逃げ出し、バトル警視と出会う。

 銃声を聞いた人々が駆け付けると、読書室の敷居の上にジミー・セシガーが右手を撃たれて横たわっていた。

 少しあとでわかるがラッキー伯爵夫人はジミーが格闘して打たれた現場のすぐ近くにいて気を失っていた。物語はこの後、思いがけない展開となるが、それは読んでのお楽しみとしておこう。

 登場人物が多く、しかもその登場人物間の愛憎・好悪の感情が入り混じる賑やかな展開が最後まで続く。この点では『チムニーズ荘の秘密』と共通するが、登場人物の立ち位置の違い、評価の違いを検討していくと作者の巧妙な仕掛けに気づいていく、一種の遠近法的な構成がとられている。特にケイタラム侯爵とバンドルという父親と娘、クート夫妻がそれぞれの登場人物について下す評価の違いに注目する必要がある。作者はジミーやバンドルの目に近いところで話を進めて行くが、それはそれとして、サー・オズワルドとその秘書のポンゴの役割を無視しないで読み進むことが重要である。

 一連の殺人は、またエベルハルトの書類は、さらにセヴン・ダイヤルズはそれぞれどのように関連し合っているのか。ジミーは誰と格闘していたのか。

 その一方でジミー、ビル、ポンゴ、オルークの男性陣と(コダーズまで割り込んでくる)、バンドル、ロレイン、ラッキー伯爵夫人の女性陣の恋愛模様も要注意である。

 物語の展開はさておいても、登場人物の性格描写が行き届いているのが特徴的である。エゴイストだが貴族的な趣味の持ち主であるケイタラム侯爵を初めとする主要登場人物については、これまでも書いてきたとおりだが、何かというと「調子がいい」というソックスという娘や、ジミーの従僕のスティーヴンズなど端役にまで神経の行き届いた描き方がされていて、読んでいて楽しい部分が少なくない。

 バトル警視はこの後、『ひらいたトランプ』(Cards on the Table, 1936)でエルキュール・ポアロ、アリアドニ・オリヴァ、レイス大佐とともに事件の解明にあたり、『殺人は容易だ』(Murder Is Easy, 1939)の最後の方で登場した後、『ゼロ時間へ』(Towards Zero, 1944)で名推理を見せる。バンドルが登場する作品はこれで終わりだが、彼女に似た性格の持ち主はその後もクリスティ作品に登場し続ける。
 
 
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