遠藤慶太『六国史――日本書紀に始まる古代の正史』

2月26日(金)晴れ

 遠藤慶太『六国史――日本書紀に始まる古代の正史』(中公新書)を読み終える。

 六国史とは、『日本書紀』、『続日本紀』、『日本後紀』、『続日本後紀』、『日本文徳天皇実録』、『日本三代実録』という6部にわたる奈良時代から平安時代の中期にかけて国家の事業としてまとめられた歴史書をいう。
 この書物は六国史の成立事情、その内容と特色、史料としての重要性、後世における受容などを概観したものであり、「成立時期の古さ、体系的な情報量、いずれをとっても六国史は古代史を語る上での根本史料である」(ⅲページ)ことが繰り返し強調されている。この本の中でも紹介されているが、六国史については坂本太郎の同名の概説書があり、両方を合わせて読むことが、これらの歴史書を理解するうえで重要であるように思われる(私もそうしようと思ったのだが、持っているはずの坂本の著書が見当たらないので、見つけ出して、読み直してみようと思っている)。

 書物は全体として以下のような構成を取っている:
序章  六国史とは何か
第1章 日本最初の歴史書――『日本書紀』
 1 全30巻の構成と記述――神代から第41代持統天皇まで
 2 伝承と記録のあいだ
 3 素材――公文書から外国文献まで
第2章 天皇の歴史への執着――『続日本紀』『日本後紀』
 1 奈良時代史への入り口――『続日本紀』
 2 英主、桓武天皇の苦悩――特異な成立
 3 太上天皇への史臣評――『日本後紀』
第3章 成熟する平安の宮廷――『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』
 1 秘薬を飲む天皇の世――『続日本後紀』
 2 摂関政治への傾斜――『日本文徳天皇実録』
 3 国史の到達点――『日本三代実録』
第4章 国史を継ぐもの――中世、近世、近代の中で
 1 六国史後――「私撰国史」、日記による代替
 2 卜部氏――いかに書き伝えられてきたか
 3 出版文化による隆盛――江戸期から太平洋戦争まで

 ここで取り上げた目次に記された文字を見ただけで、著者がかなり多彩な内容を盛り込んでいることが分かるはずである。一方で考古学者によって発掘された資料、他方で文学作品にも目を配りながら、六国史を執筆した人々と、そこで取り上げられた人々の動きを追っている。書く人と、書かれる人が、かなりの程度、重なっていることも見落としてはならない。

 序章には、六国史一覧の表が掲げられているので、ここでも念のために紹介しておこう:

 書名         巻数         成立年
日本書紀       30巻・系図1巻   養老4年(720)
続日本紀       40巻         延暦16年(797)
日本後紀       40巻(現存10巻)  承和7年(840)
続日本後紀      20巻         貞観11年(869)
日本文徳天皇実録 10巻         元慶3年(879)
日本三代実録    50巻         延喜元年(901)

 なお、最後の2書は、『文徳実録』『三代実録』と呼ばれることが多いが、著者は日本を省かず、六国史が全体として日本という国号を書名に含んでいることをことさらに強調している。そのあたりに著者の考え方の特徴を認めてもよさそうである。
 また、この序章で、著者は六国史が『史記』、『漢書』といった中国の歴史書に比べてつまらない、「官報を綴じ込んだようなもの、毎日毎日書いたものが何時の間にか集まったもの」(4ページ)という内藤湖南(1866‐1934)に対し、むしろそのように多量の政府文書を利用し得たことが、六国史の史料としての価値を高めていると反駁する。私としては内藤の説の方に賛成で、『史記』には歴史的な人物や事件についての司馬遷の論評が加えられているという著者も認めている点に加えて、それらの論評が司馬遷自身が各地を旅して歩いて見聞したことによって裏書されているという点を見逃すべきではないと思うのである。

 六国史は史書の型式として、天皇の治政ごとの編年体という形がとられているのが特徴で、この点は紀伝体をとる中国の正史とは異なるが、帝王の言動を記録して、後世の鑑――判断の基準とするという編纂の目的は共通していることが指摘されている。書名として『紀』と『実録』という2つの群に分かれるが、両者の間の明確な違いはないという。その他、六国史を理解するうえで重要な事柄を記して、序章は終わっている。全体として『六国史』の史料的な価値を重視し、その意義を強調する姿勢が顕著であることがこれまで述べてきたことからも明らかであろう。第2章以下の詳しい内容については、また、機会を見つけて紹介していくことにしたい。
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