日記抄(2月12日~18日)

2月18日(木)晴れたり曇ったり

 J・Jこと植草甚一さん(1908‐79)は71歳で亡くなられたのだが、私もあと半年足らずで71歳になる。『植草甚一スタイル』(コロナ・ブックス)という本を読むと、J・Jは糖尿病、胃潰瘍、心筋梗塞というかなりの病気持であったが、そのいくつかが私と重なっているし、J・Jよりも私のほうが太っているから、気をつけなければいけないぞと思っているところである。
 J・Jの生涯の映画ベスト・テンは『愚かなる妻』(シュトロハイム)、『蠱惑の街』(グルーネ)、『吸血鬼』(ドライヤー)、『三十九夜』(ヒッチコック)、『大いなる幻影』(ルノワール)、『自由を我等に』(クレール)、『歴史は女で作られる』(オフュルス)、『戦火のかなた』(ロッセリーニ)、『地下鉄のザジ』(ルイ・マル)、『カサノバ』(フェリーニ)だそうで、このうち半分の5本を私も見ている。親子以上に年は離れているのだが、植草さんの趣味の少なくとも一部は、確実に継承しているつもりである。(そしてさらに誰かに継承してもらいたいからこのブログを書いているわけである。)

 2月11日から、横浜駅西口のJOINUSの地下街ではバレンタインのプレゼントのためのブースというかストールというかお菓子屋さんの出店が並んで、商戦を展開していたが、例年に比べて売れ行きは芳しくないように思われた。むかし、大学をやめて、別の職場に勤務するようになったら、バレンタイン・デーにもらうチョコレートが激減し、そのことをある大学の先生に言ったら、そんなに貰うんですかというような感想が帰ってきたのを思い出す。実はその人は、セクハラ事件の渦中にあったようである。

 2月8日付の当ブログで紹介した潮木守一『アメリカの大学』にジェームズ・ラッセル・ローウェルというハーバード大学の近代語の教授だった人物が登場する。彼が1870年の国勢調査の時に、自分の職業を他の同僚のように「大学教授」とは書かずに、「詩人」と書いたという話を潮木さんは紹介している(250-1ページ)が、実は彼はアメリカ文学史の中で、ロマン主義を代表する詩人という評価を得ているので、これはある意味当然のことであったようである。ローウェル家はニューイングランドの名門の1つで、ジェームズ・ラッセルの高踏的な態度もこのことと結びついているのであろう。以前、当ブログで紹介した、明治時代の日本を訪れ能登への旅行記を残したパーシヴァル・ローウェルの父親と、ジェームズ・ラッセルは従兄弟にあたる。

2月12日
 100年前にアインシュタインがその存在について予言しながら、観測が難しくて存在を確認できなかった重力波をアメリカの研究チームがついに突き止めたと発表した。もう40年ほど昔になるが、初めて務めた学校の学生の1人が、なぜかアインシュタインの本を愛読していて、その中のライプニッツについて書いた個所が分からないといって質問にきたことがある。そんなことは聞かれたってわからない。彼は卒業後、その県の県庁の職員になり、私が県庁のある市の道を歩いていたら、偶然出会ったことがある。ちょっと時間を取って、今、何をしている?と世間話をしてもよかったなと今になって思う。今や古参の職員(たぶん、技官)になっているはずだが、どんな暮らしをしているのだろうか、ちょっと気になる。

2月13日
 英国の日刊紙『インディペンデント』の廃刊が決まったそうである。私は、主に『ガーディアン』を読んでいたので、『インディペンデント』を手にとることは少なかったが、それでも何度か手にした記憶がある。英国の高級日刊紙は、『インディペンデント』が中立、『タイムズ』と『テレグラフ』が保守党より、『ガーディアン』が労働党より、『フィナンシャル・タイムズ』は経済に特化ということで、この新聞を愛読する人も少なくなかったはずであるが…廃刊は寂しい。

 NHKラジオ「攻略!英語リスニング」は”Steinbeck"を取り上げた。彼の作品は読んではいないが、映画化された『怒りの葡萄』(ジョン・フォード)と『エデンの東』(エリア・カザン)は見ている。アメリカのフォーク・ソングの草分け的な存在であったウディ・ガスリーが映画になった『怒りの葡萄』を見に行く金もない人のためにと、「トム・ジョードの歌」という、この映画のあらすじを歌にして広めたという話があり、そのことに触れてもよかったかもしれない。

 Eテレで再放送されていた『アイ・カーリー』が最終回になった。シアトルのハイスクールに通う少女カーリーは、親友のサムとともにウェブ番組『アイ・カーリー』を始める。カーリーのアパートの向かい側に住んでいる同級生のフレディが技術担当ということで番組作成に加わる。放送がかなり進んでから、3人の同級生であるギビーが加わる。彼らのほかに、カーリーの年の離れた兄のスペンサーが番組に出演したりしている。さて、カーリーの父親は軍人で、海外に駐在していて、ほとんど帰ってこないのだが、久しぶりに帰ってきて、結局、カーリーは父親とともにイタリアのフィレンツェの近くで暮らすことになる。
 来週からは、サムと、「ビクトリアズ」の登場人物の1人であったキャットが主人公となる『サム&キャット』の再放送になるというのだが、『アイ・カーリー』の出演者たちが、実際にも仲良しであることが分かるような雰囲気にあふれていたのに対し、『サム&キャット』は主演者2人の間の関係が険悪だったそうで、それが番組にも反映しているように思われる。『カーリー』では、スペンサーがスパゲティ・タコスを作ったりすると、みんなで喜んで食べる場面がよくあったが、『サム&キャット』ではキャットが一生懸命作った料理を他の登場人物が見向きもしないという場面がみられた。こういうドラマは、雰囲気が暖かい方がいい。

2月14日
 バレンタイン・デーである。昨年は行きつけの店の女性従業員が、おなじみの男性客全員に配っているというチョコレートを1個もらったが、今年はその店が閉店したので、貰ったチョコレートは0に終わった。

 神保町シアターで『青年の椅子』と『喧嘩太郎』を見たことについては、この日付のブログでも書いたが、近くを歩いていた年配の女性が、野球の監督の娘さんと結婚した歌手がいるでしょう…?というような話をしていて、どうやら吹石一恵さんと福山雅治さんの話をしているらしいのだが、一恵さんの父親の吹石徳一さんは、監督ではなくて(現在は実業団の日本新薬の)コーチである。近鉄バファローズの控えの内野手であったが、1988年10月19日の連勝すれば、近鉄がリーグ優勝というロッテとのダブルヘッダーの第2試合で、一時勝ち越しとなるホームランを打ったのが、一番記憶に残っている。この試合のラジオでの中継を最後の方だけ聞いた(したがって吹石選手の本塁打の場面は聞いていない)ことを思い出す。

2月15日
 NHKラジオ「まいにちフランス語」の中の会話:
Cette région est çélèbre pour ses fromages. (この地域はチーズで有名です。)
Ah bon ! Quels fromages ? (ああ、そうですか! どんなチーズですか。)
Le pont-l'évêque, le livarot et le camembert. (ポンレヴェック、リヴァロそれとカマンベールです。)
Je connais le camembert mais je ne connais pas les autres. (カマンベールは知っていますが、他のは知りません。)
私もご同様である。

2月16日
 昨日に続いて、「まいにちフランス語」の話題を取り上げる。パートナーのジャン=フランソワ・グラヅィアニさんが紹介した、フランスの大統領であったシャルル・ド・ゴールの言葉:
≪Comment voulez-vous gouverner un pays qui possède 365 sortes de fromages ? ≫ (チーズが365種類もある国をどうやって統治できるというのかね)
 これは、フランスの地方や村が、またフランス人がそれぞれ誇りをもって、ときには頑固に自分の個性を育てているということであるという。

2月17日
 NHK「ラジオ英会話」に
They are cool as cucumbers. (彼らは冷静沈着で全く慌てない。)という表現が出てきたが、文字通り訳すと、「彼らは胡瓜のように冷静である」ということになる。なぜ、こういう言い方をするのかはよくわからない。

 NHK「実践ビジネス英語」の”Quote...Unquote"のコーナーでは:
All happy families resemble one another, each unhappy family is unhappy in its own way (from Anna Karenina)
      ―― Leo Tolstoy
(Russian writer, philosopher and political thinker, 1828 - 1910)
幸福な家庭は皆、互いに似ているが、不幸な家庭はそれぞれ異なる形で不幸である。
という言葉が取り上げられた。これは『アンナ・カレーニナ』の書きだしの部分であることをご存知の方も少なくないと思う。それにしても、この英訳は誰の手になるものであろうか?

 レーヴィット『ヘーゲルからニーチェへ(下)』(岩波文庫)、吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書)を買う。『ヘーゲルからニーチェへ(下)』のルソーについて書かれた部分は、シティズンシップとその教育について考える際に重要な示唆を与えるものではないかと思った。

2月18日
 昨日、レーヴィット『ヘーゲルからニーチェへ(下)』のルソーについて書いてある部分を読んで、やはりこの本はそもそものはじめからしっかり読まないといけないと思い、『上』のゲーテとヘーゲルについて書かれた部分から読みはじめた。ナポレオンがイエナとヴァイマールを通過した1806年に、ヘーゲルは『精神現象学』を完成させ、ゲーテは『ファウスト』の第1部を書き上げたという。「ドイツ語がそのもっとも豊かな広がりと最も充実した深さを獲得したのが、この2つの作品である」(25ページ)とレーヴィットは評価する。2人は色彩についての興味を共有していたが、彼らの議論は当時の学会から認められず、後継者も育たなかったとレーヴィットは言う。大学時代の同僚だったデザインの先生が、デザインの方で色彩について考えるときには、ゲーテが出発点になるといっていたような記憶がある。

 2月21日(日)に神保町シアターで上映される『あした晴れるか』(13:15~)と『日本列島』(15:30~)を見に行くつもりなので、同じ時間帯で見に出かけるという方がいらっしゃればコメントをください。
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こんにちは。
アイ・カーリー最終回、キャストが芝居でなく別れを惜しんでいるのが伝わってきました。
サム&キャットが終わったら、また再放送してくれないかなと淡い期待を抱いています。
素敵な映画のお誘いですね。
in the middle of nowhere とティボルトに言われてしまいそうな(ラジオ英会話で覚えたので使ってみました)田舎住まいの私は観に行ける方が羨ましいです。
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