五味文彦『中世社会のはじまり シリーズ日本中世史①』(2)

1月25日(月)晴れ

 昨日は、この書物の内容を概観したので、今日はこの書物の中で注目すべき個所、また気になった個所について抜き出して取り上げてみたい。全体について触れていくつもりだったのだが、時間の関係で前半の第1章から第3章までを対象とした。

 この書物の特徴の1つは東アジアという国際的な枠組みの中で、日本の歴史変動を理解していこうとしていることである。第1章「中世社会が開かれる」にはこんな指摘がある。
「…960年に宋王朝が建てられると、これと前後してその周縁で新たな国家や王朝が建設されていった。
 朝鮮半島では高麗が、中国の北辺では西夏・遼・金などの諸国が、中国の南部でもベトナムに大越、雲南に大理が建国された。これらの国々のうち西夏・遼・金の三国では西夏文字・契丹文字・女真文字などの独自の文字を用いるなど、国のあり方に応じて中国文化の影響を受けつつも「国風文化」への取り組みがあった。
 日本の文化が「国風化」の傾向を示したのはそれと同じ動きであった。」(14ページ)
 「中世」になっても、例えば中国の貨幣が流通していたように、外国との交流は途絶えたわけではなかったし、「唐物」は珍重されていたが、その一方で「国風化」の動きも止まらなかったという。ここで、先日取り上げた西田龍雄『アジア古代文字の解読』の中で考察された文字が「国風化」を目指す動きの一例として登場しているのも興味深い。

 もう1つの特徴は、昨日も述べたが、中央だけでなく地方の動き、中央と地方の関係に焦点を当てようとしていることである。第2章「地域権力と家の形成」では、受領による地方支配のあり方が、代理人である目代の派遣等によって変化し、「受領が任国に下る必要はなくなり、任初に国内の神社への参拝(神拝)を行って国内支配の遂行を祈ったり、任の終わりに感謝したりするためだけに下ることになった。国内の有力な神社を一宮・二宮以下の格式を与えて組織し、国内諸社の神を国府近くの神社に勧請して惣社として祀り、これらを参拝して京に帰っていった。それとともに律令国家によって保護されてきた式内社や国分寺・国分尼寺は衰退してゆく。
 受領が下らなくなったことから、在庁官人は国衙の機構を利用して郡や郷・保・名などに所領をもち、勢力を国府近傍に広げた。国司の二等官である介を名乗りとした三浦介や北条介など地名に「介」をつけた苗字…を名乗る武士たちが国衙に権益を有し勢力を広げていった。」(48ページ) これらの見地から興味深いのは上野の国で、一宮から十宮まであって、これはほかの国には見られないことである。上野は常陸、下総とともに親王任国なので、そのこととどう関係するのかというのが気になっている。三浦介は歴史的に見れば、三浦義明がそのように名乗り、伝説のなかでは千葉介とともに玉藻前を退治することになる。北条介というのは実は初めて見かけた。武蔵国分寺が新田義貞の鎌倉攻めの際に(なぜか『太平記』には出てこないが)焼失したというように、国分寺は規模が大きかったために戦乱の被害を受けやすかったということも衰退の理由ではないかという気がしている。

 第3章「地域社会の成長」では平泉の毛越寺をめぐる考察が注目される。「この時期に奥州藤原氏の勢力が陸奥・出羽から出て、関東から北陸に及んでいたことを考えるならば、「毛」とは毛の国こと上野・下野国を、「越」とは越の国こと越後・越中・越前国などの国々を意味していたと考えられる。下野に広がる藤原氏は秀郷流の同族、越後から北陸道にかけては奥州藤原氏と京を結ぶルートであった。
 毛越寺の鎮守が「惣社・金峰山、東西に崇め奉る也」とあるのも注目される。惣社は各地の有力な神を勧請した神社のことで、諸国の惣社の場合は国の鎮守としてその国内の神を勧請していた。京にある仁和寺や法成寺の鎮守も惣社であった(『長秋記』、『吉記』)。毛越寺の惣社には、陸奥・出羽国のみならず、毛の国と越の国に所在する有力神社の神も勧請されていたのであろう。もう一つの鎮守の金峰山は、蔵王権現への信仰が修験とともに北陸道から奥州・出羽に広まっており、その弥勒信仰との関わりもあって勧請されたものと見られる。」(101-102ページ) 平泉の奥州藤原氏の勢力がかなり広い地方に浸透していること、そのことが彼らの建立した寺社の性格に反映されていることが興味深い。神仏が集合した日本独自の宗教の展開の中でも、さらに地方色があったことも見逃すことができないことであろう。

 以上みてきた限りで、一方で国際的に視野を広げ、他方で地方の動きに目を配り、文化・宗教の動きから、時代の人々の心の動きを探ろうとしているなどの点に、著者の意図を見ることができる。 
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