ヴァン・ルーン『人間の歴史の物語』(1)

3月25日(月)曇り、時々小雨

 体調、というよりもいろいろなことについての判断が悪くなっている。医者に診てもらったが、診てもらい方が適切ではないような気もする。

 最近、ヴァン・ルーンの『人間の歴史の物語』(Hendrik Willem Van Loon, Story of Mankind)を英語の勉強を兼ねて読んでいる。昨年は読まなかったが、1~2年に1度ずつのペースで読み返している。この本は以前、岩波少年文庫に入っていて、中学校に入るか入らないかくらいの時から何度も読んだ。その後、大学院に入ってしばらくのことだと思うが、大阪梅田の紀伊国屋書店でポケット・ブックスというペーパー・バックスに入っている改訂版を見つけて、何度か読み返してきた。今でも手元にあるこの本はもうボロボロになっているが、私の愛読書の1つである。

 この書物は、子ども向けの世界史の本として英語世界を中心に広く読まれてきた。同じく英語で書かれた世界史の書物としてこれも長らく読まれてきたH.G.ウェルズの世界史とともにリベラルで、ある歴史観を押し付けるというよりも、歴史への興味を植え付け、読者が自分の頭で歴史について考えるように促そうとしている書物である。個別的な学習プランであるドルトン・プランを考案したアメリカの教育家パーカーストが子どもたちの自習の手引きとしてこの書物を挙げたことはまことに当を得たことだと思われる。

 ルーンはオランダ生まれで、アメリカにわたってアメリカの大学で学位を得て、後にアメリカの市民権を得たが、毎年、英語の勉強のためにサッカリーの『ヘンリー・エズモンド』という歴史小説を1度は読んだという(この小説、サッカリーの作品の中では『虚栄の市』に続く名声をもっているようであるが、日本では久しく翻訳が出ていない。誰か訳してください)。

 ヴァン・ルーンの書いたものの特徴は彼自身が挿絵も担当していることである(これはサッカリーと同じである。ただし、絵の勉強をしたサッカリーに比べて、彼の絵はあまりうまくない。ジェイムズ・サーバーよりも「丁寧に=上手いというわけではない」描いているという程度である)。しかし、この絵が書物全体にやわらぎを与えている。私もできるだけ絵をノートに模写しながら読み進めている。

 書物のまえがきは彼が少年時代に、ロッテルダムの聖ローレンス教会の塔に上った経験について書きしるしたものである。塔の上から町を眺めることによって、彼は町の中でその様子を見ているのと違ったものの見方を得るようになる。ロッテルダムはオランダ独立の立役者の1人である沈黙公ウィルレム1世が住んだ町であり、遠くに見えるデルフトはグローティウスの故郷である(ついでに言えば、フェルメールもこの町の人である)。またゴウダ(チーズで有名)はエラスムスが成長した町である。彼は塔からの眺めによってオランダの、世界の歴史を学んでいったことを懐かしげに回想する。

 History is the mighty Tower of Experience, which Time has built amidst the endless fields of bygone is the mighty Tower of Experience, which Time has built amidst the endless fields of bygone ages.(歴史は時が過ぎ去った年月という果てもしれない野原の中に建てた巨大な経験の塔である)と彼は書く。この古くからの建造物の頂上に登って全体を眺め渡すことによって利益を得ることは容易なことではないが、若者には可能であり、やりがいのある作業であると読者を励ますことで、彼はこのまえがきを終えようとする。Here I give you the key that will open the door. 私は君に塔の扉を開く鍵をあげる。塔に登って広い世界を眺め、そこから学ぶのは君自身の仕事なのだという。

 本文の最初のページに、彼は巨大な岩と小さな鳥を描き、次のような物語を添える。はるか北方の土地に巨大な岩があり、1000年に1度、その岩で小鳥がくちばしを研ぐ。そうしてこの岩がすり減ってなくなった時、永遠のただの1日が終わるのであるという。これは永遠なもの、人間をしのぐ力のあるものに対して、人間は謙虚であるべきだという自戒であろう。

 それから彼はその歴史を、We live under the shadow of a gigantic question mark. (我々は巨大な疑問符の影の下に生きている)と書きはじめる。「我々は、何者なのか? われわれはどこから来たのか?われわれはどこへ行こうとしているのか?」 それらの問いに答えることは難しいが、人間はたゆみない勇気を持ってこれらの問いに答え、ある程度の正確さをもって答えを推測できるようになってきたとして、地球と生物、人類の誕生についての記述を展開する。さらに先史時代の人類についても記述する。これらについては現在ではさらに詳しく研究されているので紹介しないことにする(というよりも読み飛ばしたのである)。次回は、エジプトの文明についてルーンがどのように書いているかを取り上げてみたい。
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