アガサ・クリスティ『七つのダイヤル』(4)

3月24日(日)晴れ後曇り

 ニッパツ三ツ沢球技場でJ2第5節横浜FC対ファジアーノ岡山の試合を観戦する。横浜が何度も得点機を作りながら生かせぬまま、後半のロスタイムに1点を失って敗れる。第3節、ガンバと引き分けたあたりまでは期待が持てたのだが、前節に続く連敗で見通しが暗くなった。

 さて、『七つのダイヤル』について。金曜日の午後からワイヴァ―ン・アベイで外務次官のジョージ・ロマックス(コダーズ)が開くパーティにバンドルが出かける。快楽の追求に明け暮れていた貴族の令嬢であるバンドルが政治や社会の問題に関心を寄せるようになったと聞いたロマックスはバンドルを温かく迎える。既に述べたように彼女には別の思惑があり、セヴン・ダイヤルズの秘密を探るために、政治に関心がある金もちの若者という資格でこのパーティにジミー・セシガーが参加するように工作していたのであるが、それだけでなく自分も出かけることにしたのである。ジミーは今回の企てについて、ビルに話したという。バンドルは、ビルの人間をよく知っているので、あまり賛成しない。美人にうつつを抜かしてへまを演じるのを恐れている(と言いながら、バンドルはビルを自分のものにしたい気持ちがあって、それにはっきりとは気づいていないのである)。

 パーティには航空相のサー・スタンレイ・ディグビイとその秘書のオルーク(彼も美人には弱いタイプの男性として描かれている)、ケイタラム侯爵のチムニーズ荘を借りていたサー・オズワルドとクート夫人(バンドルが2人に会うのは実は初めてである)、サー・オズワルドの秘書のベイトマン(既に登場している、ジミーと同じ学校を卒業したまじめ人間)、ハンガリーの社会運動家だというラッキー伯爵夫人が出席している。バンドルは伯爵夫人についてこんな美しい女性を見たことがないと思う。

 サー・オズワルドとクート夫人はケイタラム侯爵がバンドルに語った通りの人物であり、バンドルは父親の描写力に感嘆する。サー・オズワルドと話しているうちに、バンドルはわけのわからない怒りを感じてしまう。「結局、ケイタラム卿とサー・オズワルドをくらべてみて、そのどちらが敗北者になるかはあきらかだった。サー・オズワルドは、彼に接する者すべての影を薄くする強い個性の持主だった。ケイタラム卿が行ったように、人間の姿をした蒸気ローラーだった。しかし、サー・オズワルドがいろいろの点で、愚かな人間であることもたしかだった。その専門的な知識と恐ろしい迫力は別とすれば、おそらく、非常に鞭であろう。ケイタラム卿が味わうことのできた、そして味わったことのある、もろもろの微妙な人生の味は、サー・オズワルドにとっては、神秘な謎にひとしいのだ」(中村訳、175-6ページ)。

 英国の近・現代史は貴族が資本家に圧倒される過程であるが、その一方で貴族が資本家を吸収して生き延びようとする過程でもある。しかし、その中で確実に変わっていく価値観や趣味もある。クリスティは荒唐無稽な物語を、現実のこの変化の中で展開させることによって効果を上げようとしている。

 出席を予定していたドイツの発明家であるエベルハルト氏は到着したが、頭痛のために寝ているとオルーク氏が伝えに来る。オルーク氏はバンドルの傍を動こうとしない(彼は若い女性が好みのようである)。着替えを済ませたバンドルは従僕の変装をしたバトル警視を見つけて驚く。なぜ彼はたやすく見破られるような変装をしているのか。それは何かを企んでいる連中に警戒感を与えるためだと彼は答える。

 バンドルはさらに国会議員のマカッタ夫人は子どもがおたふく風邪になったため出席できなくなったと知らされる。バンドルがエベルハルト、さらにオルークと一緒に話していると、ビルがやってくる。ビルとともにベイトマン(ポンゴ)も伯爵夫人に夢中になった様子である。ジミーはそれを可笑しそうに眺めるが、バンドルには笑いごととは思えない。

 アベイの暖房は不十分なので、晩餐の後、バンドルとクート夫人、伯爵夫人は僅かな暖をとるために集まる。クート夫人はマカッタ夫人の子どもがおたふく風邪にかかったのが奇妙だと言い、伯爵夫人はおたふく風邪が何であるかを知らない様子である。それが奇妙だというクート夫人に対し、伯爵夫人はハンガリーのスラムの子どもたちの状況についての説明をする。クート夫人はすっかり心を動かされる(が、バンドルがこの説明をどう思ったかは書かれていない)。クート夫人はチムニーズ荘を借りていたころに、使用人に[精神的に]いじめられていたのだが、バンドルが彼らを苦も無く動かしているという話を聞いてこれにも感心する。バンドルが使用人たちに超然とした態度をとるのは貴族としての生まれつきであるが、それをどのように受け止めるかは読者個人個人の自由な解釈に委ねられるべきであろう。

 そこへ、ジミーがやってきてバンドルを連れ出す。アベイではここから大きく事態が動きはじめる。

 物語を最後まで追いかけるつもりはないが、これでいいというところまでなかなか到達しない。クリスティによる人物描写や語り口の面白さを少しでも感じていただければありがたいと思う。もう少し我慢してください。
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