日記抄(12月28日~12月31日)

12月31日(木)晴

 昨日に引き続いて12月28日から本日までの間に経験したこと、考えたことを書き記す――前に、昨日の当ブログで書き洩らしたことを1件書き留めておく:
12月26日
 マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』(新潮文庫)を読み終える。12月24日付の当ブログでこの書物の第1章「果てしない素数の奇妙な出来事」、第2章「とらえどころのない形の物語」の面白さの一端を紹介したが、第3章「連勝の秘訣」は確率について、第4章「解けない暗号事件」は数学の応用としての暗号について、第5章「未来を予測するために」は、未来予測の問題とカオスと呼ばれる数学現象について述べている。
 これらの章の中で、一番強く記憶に残っているのは、第二次世界大戦中、英国のBBCはラジオニュースの放送の際に、必ずベートーヴェンの交響曲第5番(「運命」)の冒頭の部分を流したという話である。この交響曲の出だしの部分は、モールス信号で・・・-というのと対応し、これはアルファベットのVを表すものであり、V for victoryというわけである。もちろん、電信が発明される以前の人物であったベートーヴェンは、そんなことまで考えて作曲したわけではなかった。

12月28日
 コリン・ホルト・ソーヤー『殺しはノンカロリー』(創元推理文庫)を読み終える。チビのアンジェラ・ベンボウと巨大な体躯のキャレドイア・ウィンゲイトの老女2人組が、内陸部で美容のためのダイエット・スパ<タイムアウト・イン>を経営するドロシー・マグロ―の頼みに応じて、高級老人ホーム<海の上のカムデン>から足を運び、<タイムアウト・イン>で起きた従業員の死亡事件の捜査を始める。
 物語の終わりの方で、こんな個所がある。登場人物の1人について、アンジェラは「ヘロデ王の前に進み出るサロメを演じたときのリタ・ヘイワースにそっくりだと思った。/・・・『チャールズ・ラフトンがヘロデ王でサロメを見る眼つきの淫らだったこと!』」(293-294ページ) ここで言及されている映画は『情炎の女サロメ』(Salome, 1953)で、リタ・ヘイワース(Rita Hayworth, 1918-1987)がサロメを、チャールズ・ロートン(Charles Laughton, 1899-1962)がヘロデ王を演じた。ロートンは1932年にアカデミー主演男優賞を取り、クリスティの舞台劇『アリバイ』で史上初めてエルキュール・ポアロを演じた名優であり、「ラフトン」というのはちょっと困った表記の仕方である。翻訳者には雑学が必要だと改めて思った次第である。

12月29日
 田中啓文『鍋奉行犯科帳 道頓堀の大ダコ』(集英社文庫)を読み終える。4話からなり、巨漢で大食いの大坂西町奉行大邉久右衛門のもと、若い同心の村越勇太郎が走り回り、町を騒がす不思議な事件を解決?していく。食い倒れ時代小説第2弾。時代考証のしっかりした、現実味のある話というよりも、奇想天外な話の運びに特徴があり、その意味で第4話「長崎の敵を大阪で討つ」の荒唐無稽に徹した面白さが印象に残った。(「江戸の敵を長崎で討つ」ということわざで長崎は遠い場所の譬えとして使われているが、この作品では長崎に別の意味をもたせているようである。) 架空の人物ばかりの中で、実在した町人学者の山片蟠桃が登場するというのがアクセントになっている。1年のうちに120冊本を読もうと思って、読みやすそうな推理小説ばかり読んでいる(これが今年になって118冊目)。

12月30日
 蔵書の整理をしていたら、小林標『ラテン語の世界』(中公新書)が出てきた。この本の終わりの方(277-278ページ)に京都大学で長く非常勤講師としてラテン語を教えられていた水野有庸(ありつね)先生のことが語られている。実は私も水野先生の授業に出席していたのだが、先生が熱心に教えられるあまり、毎回毎回、授業がいつまでたっても終わらないので、都合がつかなくなってやめてしまった。途中でやめたことを今でも残念に思っている。
 
12月31日
 全国高校サッカー選手権の1回戦を見ようと、ニッパツ三ツ沢球技場に出かけたら、長蛇の列ができていて、30分ほど並んだが、切符売り場まであと50メートルくらいのところまでたどり着いたところで、切符が完売になり、観戦できなかった。仕方がないので、家に帰って、年末ジャンボ宝くじの抽選会をテレビで見たが、これまたはずればかりであった。

 望月麻衣『京都寺町三条のホームズ③ 浮世に秘めた思い』(双葉文庫)を読み終える。京都寺町三条にある骨とう品店「蔵」の店主の孫で「ホームズ」の異名をもつ家頭清貴がその周辺で起きた様々な事件の謎を解く様子を、この店でアルバイトをしている女子高生の真城葵の目を通して描くコージー・ミステリ。謎解きよりも、京都の名所とか、骨董についての雑学的な知識があちこちで披露されていているのが特徴である。以前に書いたことがあるが、わたしは京都の通りのなかでは寺町通が好きで、それも丸太町から三条までの間が特に気に入っている。作者が書いているように三条と四条の間では寺町通よりも新京極のほうがにぎやかで親しみやすい。第3章に<新京極八社寺詣り>の場面があるが、一度出かけてみたいものである。

 今柊二さんの「かながわ定食紀行」で取り上げられたことを大いに宣伝している、近くのそばやで年越しの意味を込めて、天ざるを食べる。なかなかよかった。
不機嫌をなだめる年越しそばの味
今さんは私の住まいの近くの商店街にも出没しているらしく、11月に廃業した私のなじみの古本屋のことも、定食紀行に出てきていた。古本屋についても、もっと宣伝してくれていればよかったのにと思う。

 田中啓文『鍋奉行犯科帳 お奉行様のフカ退治』(集英社文庫)を読み終える。大坂の町には次々と怪事件が起こるが、西町奉行大邉久右衛門と、その配下の与力・同心、とくに若い同心の村越勇太郎の活躍で解決を見る。第1話「ニシンを磨け」に登場する和泉の「暴れ旦那」食(めし)佐太郎は、上方落語の切ネタである「莨の火」の主人公でもある。篇中に、明らかにこの噺を踏まえたエピソードがある。「莨の火」は八代目林家正蔵(彦六)が大阪の名人・二代目桂三木助から聞き覚えて、東京に移植したという。そういえば、八代目の演じる「莨の火」を聞いた記憶がある。読んだ本の中身はともかく、これで1年で120冊の本を読むという目標をどうやら達成した。 

 1年間、当ブログに目を通していただいた皆様、ありがとうございました。来年もまた、よろしくお付き合いのほどをお願いいたします。新しい年における皆様のご健康と、ご多幸をお祈りいたします。 
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

明けましておめでとうございます!


  新しい年が幸せな一年でありますように~

   *゚゚・*+。そ~れ!
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚

Re: No title

年始のご挨拶をありがとうございました。返事が遅れてしまい、済みません。

今年はますます厳しい年になりそうですが、なんとか持ちこたえていこうと思います。お互いに頑張りましょう。ご健康とご活躍をお祈りします。
プロフィール

tangmianlaoren

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR