マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』

12月24日(木)曇り後晴れ

 マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』(新潮文庫)はなかなか面白い本である。このブログでは、原則として読み終えた書物を取り上げているのだが、(ほかに書くことが見つからないという事情もあり)、まだ半分も読んでいないこの本を取り上げることにした。内容を紹介するよりも、読んでいて気付いたことをいくつか書き留めるというやり方をとるのは、これらのことによるものである。

 第1章「果てしない素数の奇妙な出来事」では素数と完全数について述べた個所が気になった。来年は平成28年であるが、28は現在47個しか発見されていない完全数の中で2番目に小さいものである。完全数というのはある数の約数の和(ただし、その数自体は除く)が、その数と一致するような数をいう。一番小さい完全数は6で、その約数である1,2,3を足すと6になる。28の場合の約数は1,2,4,7、14で合計すると28になる。
 「おもしろいことに、これらの完全数の後には素数が潜んでいる。さらに細かくいうと、ひとつひとつの完全数がメルセンヌ素数と呼ばれる特殊な素数・・・に対応しているのだ。・・・偶数の完全数はすべて2ⁿ‐¹×(2ⁿ-1)の形をしている。しかも、この形をした数が完全数になっていれば、2ⁿ-1は必ず素数になり、その逆も成り立つ。しかし、奇数の完全数が存在するかどうかはまだわかっていない。」(54ページ)

 そこで、実際に自分で計算してみた。
 n=2とすると、2ⁿ‐¹×(2ⁿ-1)=2×3=6
 n=3とすると、4×7=28
となって、ともに完全数であるが、
 n=4の場合は 8×15=120
となって、15は素数ではないから、完全数ではない(はずである)。しかし
 n=5の場合は 16×31=496
となって、31は素数であるから、496は完全数のはずである。そしてそして
 n=6の場合は 32×63=2016
となって、これは西暦で来年のことであるが、残念ながら63は素数ではないから、完全数ではない(実際に調べてみたが、約数の和が2016を上回ってしまう)。
 n=7の場合は 64×127=8128
となり、127は素数であるから、8128は完全数にはなる(はずである)。そろそろいやになってきたから、これでやめるが、本の中に出てくる例に即して、自分でもいろいろと計算してみると、ますます面白くなることがお分かりいただけると思う。

 第2章「とらえどころのない形の物語」を読んでいたら、17世紀の天文学者・数学者であったヨハンネス・ケプラーが雪の結晶に腕が6本あるわけを数学的に解明しようとしたという話が出てきた。「ケプラーは、球形の雨粒が雲の中で凍って、ザクロの種のようにぎゅう詰めになると考えた。これはなかなかよい着想だったが、けっきょくはまちがいであることが判明した。雪の結晶に腕が6本あるのは、実は水の分子構造のせいだった。しかしそれがわかったのは、1912年にX線結晶学が登場した後のことだった」(ソートイ、134ページ)。

 雪の結晶に腕が6本あることをめぐるケプラーの考えは間違っていたが、その過程で彼が考えた空間を球で埋めるには、球が6角形を形作るように敷き詰めて層を作るのがもっとも効率的な方法だという彼の予想はケプラー予想と呼ばれ、その後長く数学者たちの頭を悩ませることになった。この予想が正しいことが証明されたのは、20世紀も終わりに近づいてからのことであったという。

 この逸話で魅力的なのは、雪の結晶の謎を解くのに、ケプラーがザクロという自然にある果物をヒントとして使っているところである。頭の中だけで考えずに、自分の身の回りにある自然現象を手掛かりとして利用しようとしたというのは、楽しい発想の仕方だと思う。

 数学にかかわる興味深い話題が、サッカーの選手の背番号といった例を持ち出しながら、とっつきやすく語られている(必ずしもわかりやすいとは言えないが、難しいなりに食いついてやろうという意欲を掻き立てるのである)。そういうわけで、数学は苦手だという人でも楽しく読める本ではないかと思う。なお、2016年1月1日付で刊行される(はずの)本を、まだ2015年なのに、もう読んでいる。これもミステリーである。
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