シュガーマン 奇跡に愛された男

3月22日(金)晴れ

 墓参りに出かける。その後で渋谷に出て『横道世之介』を見に行くつもりだったのが、時間がなくなったので、角川シネマ有楽町で『シュガーマン 奇跡に愛された男』を見る。予期していた以上に感動的な映画であった。

 デトロイトの場末のバーで歌っているところを有力な音楽プロデューサーに見出されたシクスト・ロドリゲスは、1970年代の初めに2枚のアルバムを発表したが、商業的に失敗し、音楽シーンから姿を消した。しかし彼の音楽は南アフリカで、アパルトヘイト(アパータイトと聞こえる)体制の抑圧に苦しみ、反抗の足がかりを見つけようとしていた若者たちに表現手段を与えるものと受け取られ、多くの支持者を得た。

 世界から孤立していた南アフリカでは海外の音楽シーンについて、ロドリゲスについての情報を得ることはできず、彼の存在は謎のままであった。彼はコンサート会場で自殺したというような噂さえ飛び交っていた。南アフリカで、この謎のミュージシャンについての探索が始まり、驚くべき事実が明らかになる。

 大物プロデューサーたちが期待したにもかかわらず、ロドリゲスの音楽がアメリカでヒットしなかったのは、歌詞に表現された内容が著しく反体制的であったことと、ロドリゲスという名前が明らかにヒスパニックス系であったことで主流の白人文化から排斥されたことによるものであると説明される。しかし南アフリカでその音楽を支持したのが主として白人であったことに謎も残るのではないか。

 1990年代に行われた探索の結果、次第に明らかになる、その後のロドリゲスの姿。彼は自分の音楽が認められなくても、自分の考えを変えようとはしなかった。その生き方は音楽以上に感動的であるとさえいえる。建設関係の職場で働きながら、職場と地域の生活向上のために努力し続けている。彼の生活はつつましいものであるが、常に前向きである。容貌も性格も違っている彼の3人の娘たちが、父親を尊敬している様子が窺われるのが印象的である。

 ロドリゲスの歌の歌詞は、中西部の下積みの労働者たちの生活経験と実感を反映したものであり、彼の思想の表現であった。そのありのままの言葉と音楽のスタイルがなぜか新しい表現を求めていた南アフリカの若者たちによって発見され、支持されたのである。アメリカ合衆国中西部と南アフリカのケープ・タウン。デトロイトの労働者の生活と、南アフリカのコンサート。対照的な映像を編集しながら、この映画はすぐれたミュージシャンというよりも、尊敬すべき一人の人間の姿を描き出しているのである。


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