安丸良夫『現代日本思想論――歴史意識とイデオロギー』

3月18日(月)晴れ後曇り(今のところ、これからさらに悪くなるという予報である)。強風

 昨年の12月23日に購入した安丸良夫『現代日本思想論――歴史意識とイデオロギー』を本日やっと読み終える。著者は日本思想史の研究家であるが、同時代の社会の動きと思想状況にも関心を払い、その時々の状況についての論文を書き続けてきた。この書物は、様々な機会に書かれた現代の日本の思想状況にかかわる論文を集めたものである。

 「思想論」という題名を掲げているが、著者は「思想」と合わせて「精神史」という言葉も使っており、私の個人的な思いからはこの視角の方が好きである。つまり特定の思想家の著書の主張を検討するというよりも、市井の人々がどのように感じ、行動したかを煮詰めることによって得られたその時代の考え方の姿の方に興味がある。著者が第1章「現代日本の思想状況」を「『会社』主義の構想力」から始めているのは、その点から大いに評価できる。この章では1970年代から90年代にかけてのさまざまな日本社会における精神的な動きの様相が取り上げられているが、様々な問題に直面して「どの解答からも何か思想の要石を欠いているという印象を受ける」(58ページ)と指摘する。第2章「戦後思想史の中の『民衆』と『大衆』」、第3章「天皇制批判の展開――講座派・丸山真男・戦後歴史学」は対象の重大さに対して、考察が簡単すぎ、なくもがな。別の機会にさらなる考察を望みたいところである。

 第4章「表象と意味の歴史学」は歴史学の方法論を取り上げる。この章についてはさらに読み返して自分なりの考えをまとめて行くことが大事だと思っている。第5章「丸山思想史学と思惟様式論」はこの書物中最も力の入っている部分。著者は「わたしにとって思想史研究とは、人々の経験に到るための一つの手だてである。・・・思想史研究は、人間の経験をその人間にとっての『意味の相互連関』の中でとらえるところに、固有の存在意義を見出すものである」(219ページ)と論じているが、丸山と彼の時代・社会へのかかわりだけでなく、著者自身と丸山のかかわりが問いなおされているところが特徴的に思える。だから、「丸山におけるマンハイム→マルクス的なものを、丸山の自己規定を越えて取り戻すことで、多元的に構成されたいっそうダイナミックな思想史像を構想してゆくことができるだろう」(221ページ)というこの章の結びが限りなく温かく感じられる。

 第6章「20世紀日本をどうとらえるか」では「通俗道徳」への言及がわたしの興味と重なって興味を惹いた。さらに「あとがき」における2003年3月のイラク開戦当時の著者の行動をめぐる記録も、デモに行くつもりでタイ旅行の準備に追われて、結局いけなかった当時の自分の経験と重ね合わせて読んでいた。

 日本思想史家の著書ではあるが、欧米の学者の言説にも目が配られていてその視野の広さには感心させられる。ただ、この書物が書かれてから10年がたっているので、時代の変化によって訂正(あるいは補記)の必要を認めないわけにはいかない個所もみられる。折を見て、また読み直してみようと思う。 
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