日記(9月29日)

9月29日(火)晴れ

 8月に自動車の運転免許証を返納したが、運転経歴証明書をまだ受け取っていないので、警察署に受け取りに出かけ、その後、東京まで足を延ばして映画を見ようと、計画していた。実は昨日実行するつもりだったのだが、どうも体調が悪く、1日延期し、今日はというと寝坊して時間の余裕がなくなったので、とにかく警察に行って証明書だけもらおうということにした。

 横浜駅から京浜急行のエアポート急行で仲木戸駅に向かい、歩いて神奈川警察署。証明書を貰って、間もなくヒルを迎えるので、近くの順海楼という中華料理店で昼食をとる。神奈川警察署に用があるときは、たいてい、吉田飯店で食事をしていたのだが、今回は、この店の前で弁当を売っていたこともあり、なんとなく好奇心にかられて入ってみた。後から来た客の動きを見ていると、奥にも部屋があるようだが、見たところではカウンターだけで、中国人らしい若い女性が2人で料理を作っている。夜になるとまた違ってくるのかもしれないが、中国人の女性だけ営業しているというのは珍しいと思った。常連らしい客が料理について「好吃」と中国語を使ってほめていたが、私の感想としては、もう少し今後の努力を期待したいというところである。帰り際にまた来てくださいといわれたが、この方面に来る機会は少ないので、この店の魅力を見出すのはいつのことになるだろうか。

 仲木戸駅から京急新逗子行きのエアポート急行で横浜に戻る。知っている人は知っている(知らない人は知らないので損をする場合がある)のは、JRの東神奈川駅と京急の仲木戸駅はすぐ近くにあるということである。新幹線で新横浜まで来て、横浜線に乗り換え、横浜まで出てから京急に仲木戸まで乗るという人がいるが、これはあまりにももったいない。ついでに言えば、東神奈川駅と東急の東白楽駅までの距離もそれほど遠くない。駅名が違うけれども、近くにあるという例はよくあるので、知らない土地に出かける場合には事前に地図などでよく調べておくとよい。
 最近は高齢者優待のパスを貰ったので市営地下鉄を利用して、京急を利用することはあまりないのだが、京急は地上を走る区間が長いので、それが魅力である。また東急に比べると京急の車両にはボックス・シートが多く、とくにエアポート急行の座席が気に入っている。今回は、短い区間しか乗らなかったのだが、行き帰りとも、ボックス・シートの座席に座ることができた。特に帰りに乗車した際は、このまま金沢文庫あたりまでずっと乗っていって、それから引き返そうかと思うくらい、乗り心地が気に入ったのである。

 野地秩嘉『ヨーロッパ美食紀行』((小学館文庫)を読み終える。題名から受ける印象と、内容をじっくり読んでからの感想が違う本は少なくないが、これもその1冊。確かにヨーロッパの各地(オーストラリアのメルボルンのギリシア料理店、イタリア料理店の話が含まれているが、これもヨーロッパの延長と考えられる)で食べたり飲んだりしての印象がつづられているのだが、むしり飲み食いにかかわる人間模様の方に著者の関心が向かっているように思われる。
 旅の中で著者が出会った人々や、言い伝え、出来事の中で印象に残るものを抜き出してみると:
 スロヴェニアのコルチュラ島の人々は、一般にヴェネツィアの出身だと思われているマルコ・ポーロがこの島で生まれたと信じており、彼の子孫を称する人物もいるし、生家と伝えられる家なども残されているという。
 シチリア島は古代から多くの民族が訪れ、さまざまな文化を残していったが、人々は「シチリアは神のものだ。私たちシチリア人は神から島を借りているだけだ」(149ページ)と考えている。
 ペリーが日本に来航して浦賀奉行を接待したときに使われたのはマデイラワインであった。
 「私たちにとってのカンパリはおしゃれな飲料かもしれないが、イタリア移民にとっては労働の疲れを癒し、故郷を思い出させる酒だった。強いだけの酒、甘いだけの酒ではなく、ビターな味のカンパリが彼らの生活を陰から支えていたのである」(204ページ)。
 パリを愛し、この都市を知り尽くしていた写真家のロベール・ドアノーの逸話。彼がどんな店で食事をすることを好んだかを語る部分も興味深いが、晩年にセバスチャン・サルガドの写真を見て、自分にはあんな写真は撮れないと述べたという話が特に印象に残る。

 最後に、「『実物は小さい』と言われてしまう絵画、銅像はいくつもある」(253ページ)と著者は書いているが、むかし、私の同僚が、東京に出てきて渋谷のハチ公の銅像が小さいのでびっくりしたと話していたのを思い出してしまった。でも、巨大なハチ公の銅像というのも想像できない。反対に、思っていたよりも大きいのでびっくりしたのが、ルーヴル美術館にある「サモトラケの二ケ」の像だという。この彫刻を背後から見ると新たな発見があると著者はいう。そういえば、私も荻原守衛の「女」を東京国立近代美術館で見た際に、後ろからも見て、前から見るのとは別の印象を受けたことを思い出す。

 「君は船に乗った。後悔した。着陸した。上陸し給え」(264ページ)
著者が最近、よく読んでいるローマの皇帝マルクス・アウレリウスの『自省録』の中の言葉だそうである。彼はこの本を、彼にとっては外国語であるギリシア語で書いたと記憶するが、私も、ギリシア語で読むのは無理だとしても、外国語への翻訳で読み直してみたい(何度か読んだことはある)。外国語で本を読むことも一種の旅行だと思うからである。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

Author:tangmianlaoren
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR