ダンテ・アリギエリ『神曲 煉獄篇』(14)

9月24日(木)曇り後雨

「あれは誰だ、死が飛翔を与える前だというのに
我らの山の周囲をめぐり、
意のままに目を開け、閉じるのは」。

「誰かは分からんさ。けれど1人でないということはわかる。
近くに入るおまえがあの者にたずねてみろよ。
話してもらえるよう、くれぐれも丁重に彼を迎えろよ」。
(204ページ)

 ダンテがウェルギリウスとともに、嫉妬の罪が贖われている煉獄の第2環道を進んでいると、このような会話を交わす声が聞こえてきた。第2環道の魂たちは、両瞼を鉄の糸で縫い合わされ、目を開けて外の世界を見ることができないのだが、2人の動きは気配でわかったのである。どの都市出身かという問いに対して、ダンテは都市名を直接明かさず、ある川沿いとあいまいに答えた。魂の1人はそれがアルノ河のことと理解して、フィレンツェを含むアルノ河流域の諸都市の住民たちがけだもののような振る舞いを続け、やがては悲惨な最期を迎えるであろうと予言する。アルノ川流域のトスカーナ地方だけでなく、その東北のロマーニャ地方もまたかつての輝かしい時代の精神を失っている。

そして貴婦人たちや騎士たち、苦難と歓喜のことを。
それは愛と宮廷の習いが我らに探求させたのだ。
そのような土地なのに人の心はかくも邪悪に変じてしまった。
(214ページ) そして2人の魂は、
「だが、トスカーナ人よ、もはや去れ。我は今、
話すよりむしろ涙を流していたい。
というのも我らの話はわが記憶を苦しめ乱すからだ」。
(216ページ)と語って、2人を前に進ませる。

 ダンテとウェルギリウスが2人きりになると、また、「空気を切り裂くときの稲妻」(同上)のような声が彼らの耳に響く。ウェルギリウスは、嫉妬の罪は魔王ルシフェルの仕掛けた罠で引き起こされるが、人は地上の事物にではなく、神の入る美しい空にあこがれるべきだと言い聞かせる。

 解説によると、この時代のイタリアの都市貴族たちは教皇庁と結びつき、皇帝と対立していたが、都市の職人層や都市の支配下にある農村の農民層は、重税を課す教皇庁の支配に対抗するために、武力をもつ皇帝党の領主たちと結びつきをもとうとしていた。ダンテが皇帝を支持したのは、このような都市市民層の意識を代表してのことで、昔の貴族たちがもっていた美徳が失われていることを嘆く詩句がみられても、それは単なる懐古趣味、保守主義ではないと考えるべきなのである。
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