とも白髪

4月21日(金)曇り

とも白髪

バスの停留所で
時々出会う
白髪頭の
おばあさんを見かけた

今日は旦那さんと一緒で
お孫さんの顔を見に出かけるのか
ただの買い物か
おばあさんは穏やかな顔で
旦那さんは少し厳しい顔で
二人とも
白髪頭に風を受けて
並んでバスを待っている
黙ってバスを待っている

とも白髪というけれど
夫婦そろって
こんなに見事に白髪になることは
あまりなさそうだ

幸福を
無表情で包み込んで
とも白髪の夫婦が
二人でバスを待っている

付記 このブログを始めて以来、読者の皆様から頂いた拍手の数が23,000を超えました。お礼申し上げるとともに、今後もよろしくご愛読いただくことをお願いします。
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向こうの方に

4月7日(金)曇りのち晴れ

向こうの方に

幼稚園の近くを
電車が通っていた
電車に乗って
上の学校に通いたいと思っていた

小学校の校庭から
海の向こうの半島が見えた
その半島の向こうに
何があるかを知りたいと思いはじめた

それから電車で学校に通うようになって
幼いころの謎のさらに向こうを知り始め
それどころか
町が海を埋め立て埋め立て
だんだん広がって
海が遠くなる様子を見ていた

その一方で遠くの世界も近くの世界も
変わっていくのを見ていた
海が遠くなるにつれて
平べったい町が
だんだん背丈を伸ばしているのも見た

向こうだと思っていた世界が
どんどん自分の手の届く世界になった
だが町が広がり 変化し
自分の世界も広がり 自分自身も変化していく中で
知らない世界 手の届かない世界も
どんどん増えていった

変わりながら広がっていく
外の世界に対する
憧れに引きずられながら
謎解きを続けている
楽しくもあり 幻滅も伴う
謎解きを続けている

引き出しの隅に

3月13日(月)小雨が降り続いている

引き出しの隅に

引き出しの隅に
雪国で暮らしていたころに買った
セーターを見つけた
機械編みのインディゴ色のセーターだ

店の人は フランスの海軍の水兵が着ているセーターだといった
水兵たちは素肌の上からこのセーターを着ているという
アラン・ドロンがそうやってこのセーターを着ている
映画がありましたねえといった

アラン・ドロンが気になって買ったわけではない
アラン・ドロンと似ても似つかぬ日本人なので
セーターを水兵のようには着なかった
それでも着ていると、話のタネにはなった
雪国での冬をこのセーターを着て過ごしていた

雪国から離れて
乾いた空気の都会に住むようになり
この冬も このセーターを着ずに過ごした
それでも
引き出しの片隅のセーターを見ては
このセーターを着て過ごした日々のことを思い出す

グラフトン・ストリート

1月23日(月)晴れ、寒冷

グラフトン・ストリート

今日、グラフトン・ストリートでばったり彼女と出会う。人ごみのせいで出会ってしまったのだ。二人とも立ち止る。彼女は、なぜ来てくれないのかと尋ね、ぼくについていろんな噂を聞いたと言う。詩を書いているかと訊かれる。誰についての? とぼくは言った。これで彼女はますますあわて、ぼくは気の毒なことをしたと思った。(ジョイス『若い芸術家の肖像』)

京都の河原町通は、
グラフトン・ストリートに比べて
ずっと広くて長いのだけれど、
ジョイスの小説を読んでいると、
河原町通を上っていた時に
詩を書いている仲間で
恋愛以前の「彼女」に出会ったことを
なぜか思い出す
彼女の白い顔と
長い髪と
いたずらっぽい目を 

彼女が通っていた看護学校の
学園祭に来いといわれ、
女性が大勢いるという言葉尻をとらえて、
人類の半数は女性だと切り返したら、
その中で私という女性は一人しかいないと
言われた

完敗であった
負けを認めるのが嫌で
恋愛以前を
恋愛に切り替えようという
意思表示を見落としてしまったのかもしれない

それから、お互いに年をとったはずで
思い出も同じように年をとってしまった
彼女が詩を書き続けているかどうかは知らない
書き続けていても、私のところに
届かなければ意味はないと、勝手に決めつけている
その逆に こちらの書いている詩が
彼女の心に届かなければ
またもや完敗ということになる…

長い橋

1月11日(水)晴れ

長い橋――元好問の五言律詩による

そのままにしておけば
遠くへと逃げ去ってしまう
過去を
歴史という橋で
つなぎ留めたいと

あちらこちらに残された
史料を尋ねて
私は旅を続ける
集まった史料の重さで
痩せ馬は苦しそうに歩む

霧雨に覆われた
村に通りかかる
鳥の声だけが聞こえて
人の姿はまったく見えない

どんよりと垂れこめた雲が
時々切れて
日の光が差し込むと
野原の広がりが見える
向こうに見えてきた
低い山の
さらに向こうに向かって
ガンの群れが飛んでゆく

霧雨は冷たく
吹き付ける風はさらに冷たい
私はまだ遠くへと
旅を続けなければならない
疲れた心を励ましながら
景気づけに飲んでみた
酒のぬくもりはとうに消えてしまった

都会の賑わい
東西南北の方向
何もかも忘れて
前を見つめると
幻のように
長い橋が続いているのが見える

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