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陶淵明「『山海経』を読む」戯訳

5月15日(水)曇りのち晴れ

 我が家の書架から竹内実・萩野脩二『閑適のうた 中華愛誦詩選』(中公新書)を引っ張り出してきて、その中の陶淵明「『山海経』を読む」13首中の第1首を戯訳してみた。孟夏は太陰暦の4月であるが、現在の暦に直すと、5月の今頃になるはずで、季節のうたとしてふさわしいと思い、取り上げてみた。詩の中に登場する『山海経(せんがいきょう)』は空想の地理書であり、中国古代の神話・伝説が盛り込まれていて、中国周辺部の記事には奇怪なものが多い(平凡社ライブラリに収められているので、日本語で読むことができる)。本のなかでも触れられているが、陶淵明が読んだ本には郭璞(かくはく)という人が描いた絵もついていたようである。また詩の中には、『周王の伝』という書名も見られ、これは一般に『穆天子伝』と呼ばれる周の穆王に仮託した空想旅行記である。どうも陶淵明は、今でいうとSF小説やマンガのようなものを読むのが好きだったらしい。そう考えると、彼に親しみがわいてくる。

  讀山海経
孟夏草木長 遶屋樹扶疏
衆鳥欣有托 吾亦愛吾廬
既耕亦已種 時還讀我書
窮巷隔深轍 頗廻故人車
歡言酌春酒 摘我園中蔬
微雨從東來 好風與之倶
汎覽周王傳 流觀山海圖
俯仰終宇宙 不樂復何如

孟夏草木長(の)び 屋を遶(めぐ)りて樹扶(しげ)りに疏(しげ)る
衆鳥托あるを欣(よろこ)び 吾もまた吾廬を愛す
既に耕し已(すで)に種まく 時に還(また)わが書を読む
窮巷深轍を隔(とおざ)くるも 頗(なかなか)に故人の車は廻(たず)ねしむ
歓言し春酒を酌み わが園中の蔬摘む
微雨東より来たり こうふうこれに倶(ともな)う
周王の伝汎(あまねく)覧(み) 山海の図流観す
俯仰に宇宙を終(きわ)む 楽しまずして また何如(いかん)ぞや

初夏の草木は元気よく 我が家を囲み生い茂る
小鳥喜び巣をつくる そんな我が家が大好きだ
終わった終った農作業 本棚の本さあ読むぞ
就職促す便りなく 旧友だけが訪れる
一緒に春の酒を飲み 畑の野菜を口にする
東から降る小ぬか雨 付き添う風の心地よさ
空想旅行記読みふけり SFマンガに目を通す
宇宙の果てまで旅行して こんな楽しいことはない

 本日は、研究会のため、夜外出するので、皆様のブログを訪問できません。あしからずご了承ください。
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「春暁」――たわむれに訳す

4月17日(水)曇り

 春眠不覚暁
 処処聞啼鳥
 夜来風雨声
 花落知多少

 春眠暁を覚えず
 処処啼鳥を聞く
 夜来風雨の声
 花落つること知る多少

 ついつい寝過ごす 春の朝
 枕元にも 鳥の声
 昨夜の夜は 荒れ模様
 花はどれだけ 散ったやら

 本日は病院で診察を受けた。これまで見てもらっていた医師が転勤になり、他の医師に引き継がれることになっていたのだが、その先生が出張中で、若い医師が代理で診てくれたのだが、これがひどく丁寧で時間がかかった。その後、採血をした。栄養相談は込み合っているとのことで、今回はなしで済ませた。

 東京に出たついでに、神保町シアターで映画(「恋する女優 芦川いづみ デビュー65周年記念スペシャル」)を見た。14:15からの『真白き富士の嶺』(太宰治の「葉桜と魔笛」を原作として、芦川いづみと吉永小百合が姉妹を演じた作品である)を見たかったのだが、開映時間に間に合いそうもなかったので、その後の『白い夏』を見た。(『真白き富士の嶺』のチケットは完売だったそうだ。誰の考えることも同じらしい。) 『白い夏』上映に先立って、芦川いづみさんからのメッセージが放送された。『白い夏』は平凡な映画だが、昭和30年代初めの房総半島の漁村の風物が描き出されていること、主人公を取り巻く2人の女性を演じている芦川いづみと中原早苗がともに、若くて、魅力的だったのが印象に残る。

 疲れて、考え事をしたくないので、ノートをひっくり返して、孟浩然の「春暁」の訳詩を見つけたので、投稿することにした。ほかにも多くの人が、この詩の翻訳を試みているが、この訳では作者が一向に寝床から出ようとしていない様子であるのが、どこか私の性格を反映しているのではないかと思う。 

初夢

1月7日(月)晴れ

初夢

峠の頂にたどりついて
遥かに白くかすむ雪の山を見る――
緑を通り越して黒く広がる森を見下ろして
高く悠々と飛ぶ――

狭い裏通りを必死で駆け抜けて
追手から逃げ切ろうとする――
むかし乗り降りしていた
駅で降り、駅前の雑踏から離れて
懐かしい道を歩む
そして見覚えのある顔、顔、顔に出会う――

どれもこれも、私の初夢ではなかった
夢を見たことだけは記憶にあるが
どんな夢だったかは忘れてしまった――
旧約聖書のネブカドネザル王が
占い師たちに解かせようとしたような
御大層な夢ではなかったことだけは確かだ

すっきりと目を覚まし
一日を始めることができたことを
よしとしよう
ぐずぐずと夢にこだわり続けなかったことを
よしとしよう

 「日記抄(1月1日~7日)」の中に含めるつもりだったが、長くなったので独立させた。


夜行最終急行列車

12月20日(木)晴れ

夜行最終急行列車

まだ最終電車には 間に合うはずだと
酔いをさましながら 駅の階段を 上がっていくと
背後に 先を急ぐ
どよめきと足音とが聞こえた
 
ホームには夜行寝台急行が止まっていて
これが西の国に旅立つ
最終列車だという
このホームは上り線で、
列車は東に向かうはずだと、心の中でつぶやく

ぼくの背を押して階段を駆け上り、
ぼくを押しのけてホームを走っていった
人々は、争って 寝台急行に乗り込んだ
ひとり分の寝台を、二人、三人が争っているのが見えた。

そしてゆっくりと、ゆっくりと、
まだ飛び乗ってくる乗客を待ち受けるかのように
急行列車は駅から離れていった。
窓の中に見える顔の苛立ち、怒り狂った顔が
次第に輪郭を失い、ぼんやりと見えるようになっていった。

列車は闇の中に消えた。
ホームも闇の中に消えた。
駅も闇の中に消えて、
ぼくはわけもわからず立ち尽くした。

あくる日、どうやって帰ったのかはわからないけれど、
ぼくはアパートで目をさまし、
最寄り駅で電車に乗って、
またその駅で降りた。
闇の中に消えたはずの駅は
ちゃんと建っていて乗客を送り迎えしていた。
夜行最終急行列車のことなど、だれも噂してはいなかった。

あの頃

11月10日(土)晴れのち曇りのち雨

あの頃

私鉄の駅と
国鉄の駅とを
(まだあの頃は国鉄だった)
つなぐ
狭い通路の
そのまた先の
階段を
毎朝
昇っていた
会社勤めを
始めたばかりだった
昇ってゆく流れと
下ってゆく流れ
人の流れは
あわただしく
活気に満ちていた

向こう側を
急いで歩いている
人たちの中に
ときどき
見覚えのある顔を見かけた
大学時代に
一緒にデモ行進をしたり
アルバイトで
一緒に荷物を運んだりした
そんな見覚えのある顔を
見かけた

みんな急ぎ足だった
私も急ぎ足だった
一緒に過ごした時と
経験とが
思い出したくない過去であったかのように
お互いに見知らぬ同士のような
顔をして通り過ぎた

そんな時代もあっという間に
過ぎてしまった
何年
十何年
何十年という
年月が過ぎた
急ぎ足で歩いていたころのことは
むかし話で
今は痛む足を引きずり
ゆっくりと歩く
過去
そのまた過去
そのそのまた過去のことを
様々に思い出しながら
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